仁義なき戦いを見ながら書きましたので、一部センシティブな箇所があるとおもいますのでご了承下さい。

ぴょこたんへの原案小説です。

 

 

 

 

 

 

 

朝のラッシュアワーをさけて、6時台の地下鉄に乗るようにしている。

僕の名前はケイ。高校2年生だ。

冬の朝はとても暗い。この地下鉄は始発の地上駅からゆっくりと下り

終着駅でまた地上に上る。

その頃には東の空にオレンジ色の弱弱しいが

なぜかほっとする太陽がのぞかせるようになる。

 

今日も始発の電車から、学校のある終着駅に乗ろうとした。

ガラスに映る紫色の自分の姿、電車の車窓に合わせて動き出す。

(今日の髪型はちゃんと決まっているか?)

などと考えているうちに地下に潜りこむ

車窓が一気に暗くなると、紫色の淡い自分の姿が鮮明に映り込む。

(僕は美しい・・・。)

うっとりする位、美しいと思った。

 

すると電車は別の駅に到着する

「赤松ー、次は赤松―、降り口は左側です。」

すると、Y女子学院の生徒達が一斉に乗り込んできた。

(雑音だ・・・。)

美しい僕の後ろに、下品なインコたちがピーチク、ハーチク騒いでいる。

「ねーねー、令和スマッシュのアキラ君に似てない?」

ブス達の低俗な話が続く

(そんな俗人どもと、美しい僕を似ているなんて信じられない。)

僕は、すかさず、彼女らの言葉をシャットアウトするために

スマホの音楽ファイルからショパンの曲をかけることにした。

そして、なるべく、下品なインコ達を見ない様に電車に近づくことにした

自分の姿が前よりも近くに大きく見える

(これでいい)

自分の世界が広がる。

結局、下品なインコ達は次の次の駅の台の岡公園で降りて行った。

まあ、台の岡公園にY女学院があるわけだった。

 

試練は続く、北綾鳥駅から、いつものようにOLが乗ってきた

このOLは、僕と同じ車両、同じドア側に乗り込んで

次の次の灰島台駅で降りる臭い女だ。

この香水と化粧の配合は鼻が曲がって困る。

高校に着くと、同級生達にこの匂いを冷やかされる

僕にとっては不快な匂いだが、同級生からすると大人の女性の匂いだそうだ。

OLがカーブにさしかかったり、駅で止まるごとにわざとらしく僕に寄り掛かる

ファンデーションがジャケットに付くこともある。

極めて不愉快だ。

視線は、ガラスに近付ければ

騒音はショパンが打ち消してくれるが

この匂いに関しては、マスクや鼻栓をする訳にはいかない。

それは、僕の美しい姿が歪んでしまうからだ。

なので、この試練が、通学路での最大の苦痛とも言えるであろう。

「次は灰島台、降り口は左口です。」

彼女は停車する瞬間に全身全霊をかけて僕に寄り掛かる

時には不自然に腰をくねらせて胸を押し付ける。

だが、この胸は貧相で、僕にとっては、喜びと言うよりも

何もこんな中途半端なものを美しい僕に当て付けるのは嫌がらせにしかならない。

せめて、平均的なものを付けてくれないとときめかないし

顔面偏差値70を超える僕に対して平均的なものでも失礼に思うのは当然だと思った。

そんな感じで、最大の厄災が過ぎ去る。

 

次の狭川通りと綾島駅迄は、乗り降りるする人が多い区間だ。

同級生も綾島駅から乗り換えで乗ってくる。だが早い時間なので

友人たちは乗ってこず、体育会系の女子が乗り込んできた。

「やぁー文芸少年!」

とてもうざい体操部の女の先輩が乗ってきた。

一応先輩なので、ヘッドフォンを外し、会釈をした。

彼女の視線が背中越しから感じる。

僕の美しさは、背中も含めてなのは致し方ない。

先輩の挨拶はうざいのだが、校名のジャージと言う看板を背負っているので

この先輩の乗る時間だけが苦痛であった。

「次は愛橋、降り口は左側です。」

愛橋は大学があるエリアだが、この時間には大学生の乗り降りは無い。

ただ、遅くなると、北綾島からこの区間も女子大生達の視線を受けて

苦痛に感じるし、謎の腰をひねって胸を押し付けるような奴らも何人かいるので

僕が老人のように早起きする理由がここにもある。

 

永松駅は、南のターミナルで、この時間帯は、反対車両の女子の視線を受ける

彼女らは僕の事を「地下鉄の王子様」「地下鉄の美少年」などと呼び

勝手にBLものの同人誌を書いてそうでおぞましく思う。

僕は、自分が好きだが、自分以外の男性には興味がないし

自分に釣り合うレベルの美しい女性がいればそれに惹かれるのは当然な事であるが

高校や通勤(学)電車には、それに該当する女性は当然乗ってなく

一山なんぼのブスやはた迷惑な女しかいないのがとても残念に思う。

 

終点に着くと、徐々に地上に上がってくるので、自分の姿が

黒から、紫、橙、黄色と淡くなっていく

その時に心の中でつぶやくことにしている

(この世で一番美しくて、儚い僕、さよなら・・・。)

でも、また、下校時に会えるのでしばしのお別れなのである。

 

地下鉄は今日も走る、美しい自分と迷惑な人達を乗せて・・・。