手術室はとても広くて、色々な機械やら器具やらが置いてあり、その広い部屋の真ん中に手術台があった。
(手術室と検索したら出てきた画像で私の入院先とは一切関係ないが、このくらい広かった。
実際はもっと色々な器具や機械がたくさん置いてあった)
手術台はとても狭いとネットで見ていたが、思ったよりも幅があった。
飛行機のようなゴーーーーーという音がしていて、これから離陸(手術)なんだという思いが高まった。
そして早速手術台の上へ座るように言われた。
もうなるようにしかならない。
言われるままに台に乗り言われた方を向いて横になる。
「手術室、色々モニターとか機械が置いてあるからびっくりしますよね」
というようなことを言われた。
確かに。
おそらくリラックスしてもらうためというか「見た目ほど怖がらなくていいですよ」というようなことを伝えようとしてくれたのだと思われる。
「ですね、なんだか仰々しい感じですね」
と返した。
横になって上を仰ぐと、目の前にドラマでよく見る手術台のライト(あのバッ!ってつくやつ)があって、手術室に来たという実感が更に鮮明になった。
そこからはあれよあれよと準備が進んでいく。
ネットで見た通りだ。
私の緊張感などお構いなしにみんな手際がいい。
看護師さんのサポートのもと手術着に着替えて、
入れ替わり立ち替わり血圧を測られて、
何かを質問されたり、
いきなり例の執刀の先生が現れてお腹のマーキングのチェックと書き直しをしたり、
ここでも点滴のルートを取られたり、
酸素マスクをつけるための何か?を口の上に塗られたり・・・(臭かった)
色々なことが同時進行で慌ただしく行われていた。
普段診察室では白衣姿でまくし立てるように関西弁を話す執刀の先生が、手術着と手術キャップをつけているを見て、更に手術が始まる実感が強まる。
ギャップ萌え(死語)の手術バージョンみたいな感じだ(伝われ)
そして麻酔科の先生が来て横向きになって背中を丸めてくださいと言ってきた。
来た。硬膜外麻酔来た。
ネットで何度も見聞きした硬膜外麻酔。
自分なりに背中を丸めたが違っていたらしく、背中に触れられながら、
「ここに注射を刺すので、ここを広げるようにしてください」
と言われる。
頑張ってそうしてみると
「あ、いいです、今すごくいい姿勢です、そのままで」
と言われた。
指導者の立場の先生と指導を受ける若手の先生(多分)がいて、
私の背中に触れながら
「ここがこうだから、ここに入れるといい」とか何とか言っていた。
大学病院ならではだな。
どうぞどうぞ私を教材にして下さいという感じだ。
まずは皮膚の?麻酔を打たれる。
チクっとした後にズーンという重い感覚がきた。
麻酔が効いたのだなと思った。
よし、これで硬膜外麻酔は痛みなく入るだろう。
それから硬膜外麻酔の針が入ってきた。
入ってきているのはわかるけど痛くはない。よしよし、やっぱ麻酔はすげーや。
と思っていたら・・・
「ちょっと一回出します」
と。
え?何?
どうやらうまく刺さらなかった様子。
なかなか入らなかった点滴のルートと同じようだ。
痩せすぎでうまく刺せないみたいなことを言われた。
そんなことあるのか・・・
そして
「別の方法考えますね」
と言われた。
え、それ大丈夫なの?
別の方法を考えるって何??そんなのあるの??
硬膜外麻酔よりも弱い麻酔になったりするのか?
と少し不安になったが、手術の麻酔なんだからちゃんとしてくれるだろう、弱い麻酔とかないだろ!大丈夫大丈夫と一人で思い直す。
そして看護師さんから質問があった。
「これから行う手術の部位を、大体でいいので教えてください」
と聞かれた。
手術を前にテンパっていないか、冷静でいられているかを見ているのかななどと思った。
「大腸…?」と答える。
はい、ありがとうございますと質問タイムは終了。
そして手の甲に点滴のルート2つをとられる。
まあまあ痛いが一発で入った。
ここから麻酔が入るのだろうか。
その他細かいことはもう記憶にないが、そんなバタバタを経て・・・
麻酔科の先生が
「はい、じゃあ眠くなりますよ~」
とおっしゃった
いよいよだ、と思った。
これまでたくさんの手術レポを見て来た。
ここで麻酔が入って意識がなくなり、次に目を覚ましたら手術は終わっているのだ。
もう麻酔は入っているのだろうか。
次の瞬間には意識がなくなっていてもおかしくないんだ。
などと考える。
数秒経っても眠くはならない。まだ意識がある。
「これ、眠くなって次の瞬間は手術終わってるんですよね?」と聞いてみる。
「3回深呼吸したら眠くなると思いますよ」
とまた麻酔科の先生がおっしゃった。
おそるおそる深呼吸をしてみる。
深呼吸を3回・・・眠くならない。あれ?
と思った次の瞬間、頭がふらーっとしてきた。
鎮静剤で大腸内視鏡や胃カメラをやった時と同じようなあの感覚だ。
「眠くなってきました」と言った。
次の瞬間は目を閉じている自分。
視界が一面暗く茶色がかった暗闇。
それから数秒後、目を開けた瞬間、
「終わりましたよー」
という麻酔科の先生(多分)の声が聞こえた。
意識の切り替わりはハッキリしていた。
「眠くなってきました」と自分で発言したところでプツリと記憶が途切れている。
「手術中の数時間の記憶だけが綺麗に切り取られている」
「寝て起きたら手術が終わっていた」
という表現がよく使われるが、本当にそんな感じだった。
普通に朝起床する時の感覚とほぼ一緒である。
周りが慌ただしいことを除いて。
目が覚めたらそこは見慣れない部屋、周りがバタバタしていて、「終わりましたよー」の一声。
ああそうか、手術してたんだ、と思った。