アトリエを整理していたら

20年前に作ったネックレスが出てきた。

 

「インレイ」という技法で

種類の違う金属を貼り合わせて

一枚の板にしたもので作ったビーズのペンダント。

 

丸みがあって、

どこか幼さの残る当時の私の作品。

 

「自分の個性」ってなんだろう、と

答えを探し求めていたころ。

 

 

私が「自分の世界観」というものを

なんとなく意識し始めたのは

まだ学生の頃だった。

 

カリフォルニアで、彫金を学んでいた。

 

カレッジには幅広い年齢層の人々が通っていて

彫金スタジオを使うために

何年間も通い続けている人もいた。

 

私はそんなおじいちゃんたちが好きだった。

 

自宅を含め、

自分で作れるものは何でも作る、ダンディなアル。

ジュエリースタジオには
彼が作った道具もたくさんあった。

 

すらりとした長身

銀色の髪と口髭はいつもきちんと整えられていた。

 

物静かでいつも黙々と作業をしていたけれど、

なにかを訪ねると、

どんなことでも分かりやすく、

論理的に、丁寧に、的確に答えてくれた。

 

日本のアートが好きだというアルの作品は

シンプルで美しく、精密で完璧だった。

 

彼が卓越した技術と美意識で創り出す

美しいジュエリーやナイフは大人気で

とても高価だったけれど、飛ぶように売れた。

 

 

いつも陽気で、

ネイティブアメリカンのジュエリーが大好きで

研究熱心だったボブ。

 

赤鼻で、大柄で、身振り手振りが大きくて

フレンドリーであたたかい人だった。

 

ネイティブアメリカンの歴史を語り、

ジュエリーに使われているシンボルの意味を語り、

彼らと同じ技法で創り出す

自分自身の作品を心から愛していた。

 

大きな指で創り出す作品たちは

技術的にはけして上手くはなかったけれど

ハンドメイドならではのあたたかさと

ダイナミックなエネルギーに満ちていた。

 

彼の作品には根強いファンがついていた。

 

 

 

ヒロという名の、

痩せて、小柄で風変わりな日本人のおじさん。

 

謎の多い人物で、

スタジオにひょっこりと顔を出しては

独特な英語で

教授と何やら話をして

いつのまにかいなくなっていた。

 

彼の作品も、独特だった。

カラフルなカラーストーンと

ゴールドとシルバーのコンビ使いで

躍動的な人形のジュエリー。

 

モチーフは一貫して〈Doll~人形~〉だったけれど

すべて一点もので、同じデザインのものは作らない。

 

ファニーで個性的で

言葉では表現しきれない

不思議な魅力の作品たちは

たくさんのジュエリーが並んでいる中でも

ひときわ目立っていたし、

「ヒロの作品が欲しい」という人が

あとを絶たなかった。

 

 

カリフォルニアでアートを学ぶ人たちは

個性的な人が多かったし、

作品もそれぞれ個性豊かだったけれど

彼らの作品は、際立っていた。

 

当時の私は

彼らから見たら

はるばるアメリカまでやってきて

熱心にジュエリーメイキングを習う

とても手先が器用で

わりとなんでもうまくこなす

小さな日本人の女の子だった。

 

"You are so talented!"
(君には才能がある!)

 

彼らはそう言ってくれたけれど

私はこう思っていた。

 

自分はただ、

手先が器用で要領がいいだけなのだと。

 

長くなったので続きは次回。

 

 

 

 

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