​ おそらくイスラエルの対外情報機関モサドの実行したものだろう、7月31日、ガザを実効支配するイスラム原理主義テロリスト「ハマス」最高指導者のイスマイル・ハニヤ(写真)がイランの首都テヘランの宿泊施設を爆破され、死亡した。​

 


イラン、首都で賓客ハニヤを暗殺される​

 ハニヤは、選出されたばかりのイラン新大統領のペゼシュキアン氏の就任宣誓式に出席するため、常駐するカタールからテヘランを訪問していた。この攻撃については、アメリカのネットメディア「アクシオス」が、AIを使った高性能の爆破装置がハニヤの寝室に仕掛けられていたと報じた。イラン国内に潜伏するモサド工作員が起爆したという。

​ ハニヤは、前日にはイランの最高指導者ハメネイと会談したばかりだった(写真)。イランにとって、最重要な賓客を首都で守れず、面目は丸つぶれもいいところだ。​

 

 

 それにしても驚くべきモサドの情報能力だ。ハニヤをトップにいただくハマスも、ホスト国イランも、万全の警戒をしていたはずなのに、やすやすとハニヤ暗殺に成功したのだから。


ヒズボラの軍事部門幹部も相次ぎ殺害​

 ちなみにガザ戦争が始まって以来、イスラエルのモサドと軍によるテロリスト指導部の暗殺作戦は、成功に次ぐ成功を納めている。

​ ハニヤ暗殺の前日の7月30日には、レバノンを事実上支配するシーア派テロリスト集団「ヒズボラ」の司令官フアド・シュクル(写真)をベイルートで殺害している。​

 

 

 さらに遡ること17日前の同月13日に、ハマス軍事部門トップのムハンマド・デイフをガザ南部ハンユニスの空爆で殺害した。

 また7月3日には、ヒズボラの部隊指揮官ムハンマド・ナセルを殺害している。

 さらに7月20日には、イスラエルのテルアビブをドローンで攻撃したイエメンのイスラム原理主義テロリストフーシ派の拠点を空爆し、石油施設などを炎上させ、多数を死亡させた。


次はハマスのシンワールとヒズボラのナスララか​

 この攻撃の鮮やかさは、イスラエルに標的にされたら、誰しも生き延びられないことを示す。イスラム原理主義テロリスト幹部にとって、日々恐怖の毎日だろう。

 特に昨年10月にイスラエルを奇襲攻撃し、イスラエル市民約1200人を殺害し、約250人を拉致した首謀者のヤヒヤ・シンワール(ガザ地区の軍事部門最高指導者)と、ヒズボラの最高指導者のハサン・ナスララが今後の標的になり得る。

 それにしてもイスラエルの全面攻撃を日々受けているハマスは、ハニヤ死亡後の今後、どうなるのだろうか。


家族・親族も皆殺しに近いハニヤの悲惨​

 おそらくイスラエルによる集中的なガザ攻撃で、中堅幹部以上のほとんどは死亡している。ハニヤのようにカタールなどに逃れている幹部も、モサドに照準を合わされている。

 特にハニヤの場合、家族・親族も皆殺しに近い。4月10日、イスラエル軍は、ガザで作戦部隊に所属していたハニヤの息子3人を殺害したと発表し、孫4人も死亡が伝えられた。乗っていた車が、イスラエル軍の無人機に空爆された。

 さらに同年6月25日には、イスラエル軍によるガザ地区への空爆により、親族10人も死亡している。


標的の居所を把握している? イスラエルの軍とモサド​

 例えば今、イスラエルが休戦に入り、ガザから撤退しても、ハマス再建は容易でないだろう。

 これまでハマスは、創設者のアハマド・ヤシン(2004年3月暗殺)、その政治部門の後継者とされたアブドゥルアジズ・ランティシ(04年4月暗殺)と、最高指導者が次々とイスラエルに消し去れてきた。まさに暗殺の歴史である。

 そして今、ハニヤとデイフの相次ぐ殺害である。

 この意味で、イスラエルはほぼハマスの「首と手足を断ち切った」と言えるのかもしれない。ハマスよりもさらに強力なヒズボラも、最高指導者ナスララが標的にされている以上、容易には手出しをできないだろう。

 モサドは、テロリスト内部に内通者やスパイを潜入させているから、標的のシンワールやナスララの居所も把握していると思われるからだ。

 テロの芽を摘むことは必要だ。しかしもう中東でこれ以上の流血を見たくはない。


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