呆れた要人の警護態勢である。


ライシたちの乗っていたヘリは1960年代製​

​​ イスラム原理主義国家イランの保守強硬派大統領のライシ(下の写真の上)らが乗ったヘリコプターが19日、同国北西部の東アゼルバイジャン州で墜落し(下の写真の中央=霧深い山中を捜索する救助隊)、ライシの他、同乗していた外相のアブドラヒアンなど搭乗者8人全員が死亡したが、このヘリは1960年代に作られたアメリカ製のヘリだった(下の写真の下)。

 

 

 

 

 

 半世紀以上前に作られたオンボロヘリに要人が乗る、などちょっと考えられない。​​

 イランの報道担当者は、メディアに部品供給などを絞ったために起こった事故、とアメリカを八つ当たり的に非難していたが、そんなヘリを、しかも敵対国アメリカ製のヘリを乗り回している方がどうかしている。
 

イスラム革命でアメリカからの部品が途絶​

 かつてパーレビ王政時代のイランは、アメリカの友好国だった。軍の戦闘機や武器など、アメリカから供給されていた。ライシの乗ったヘリも、この時代のアメリカから供給されたものだ。

 ところが1979年にイスラム聖職者主導のイスラム革命が起こり、その後、パーレビ時代の反発からイスラム国家イランは反米に転換する。

 アメリカも、テヘラン米大使館での人質事件などで反イランとなり、国交も断絶、イランの核兵器開発疑惑もあり、イランの唯一とも言える輸出商品の原油輸出を規制する経済制裁を敷いている。


テロ国家ロシアにドローンやミサイルを売っているのに​

 経済制裁ではイスラム原理主義体制は変わらないが、西側の先端製品が入らず、しかも今も年率40%という悪性インフレに見舞われている。通貨もリアルも、ライシの大統領就任後に半値以下に落ち込んでいる。

 むろんアメリカは、航空機の部品となどを供給していない。それならイランは、友好国のテロ国家ロシアやスターリニスト中国からヘリコプターなどを輸入すればいいのに、それをしておらず、大統領までオンボロの敵対国産ヘリを使う。カネが無いわけではない。原油のほか、イランは自国産のドローンやミサイルをテロ国家ロシアに輸出しているのだ。

 ズボラも極まれりの感がある。

 

85歳のハメネイに後継者がいなくなった

​ さてライシ死後のイランがどうなるかと言えば、基本的には変わらない。イスラム原理主義国家イランの場合、大統領は国家の行政長に過ぎない。すべては最高指導者のハメネイ(写真)が内政と外交面の実権を握る。​

 

 

 ただし今年85歳と言われるハメネイは、後継者として同じ保守強硬派聖職者のライシを盛り立て、育成してきた。その後継者が突然、いなくなった。

 ハメネイにとって痛手だ。これから誰を大統領に育成していくか(もちろん前大統領のハタミ氏などのような宗教進歩派は埒外だろう)、自分の心身が健全なうちに成し遂げるのは容易ではないだろう。
 

多数の犠牲者を出し服装自由を求めたデモは鎮圧されたが​

 ライシの死によって、国内の反体制派が勢いづくが、もう1つのこれからの注目点だ。

 ライシは、21年に大統領に就任して以来、国内を締め付け、自由を圧殺してきた。22年に起こった女性のヘジャブ着用をめぐる大規模デモで厳しい武力弾圧を加え、犠牲者は550人にものぼると言われる。参加者に死刑も執行している。

 国内の人気は、全く無いと言っていい。3月に行われた翼賛総選挙の投票率は、41%と低迷した。有権者には、選びたい候補がいないのだから、棄権で体制にノーを突きつけるしかないのが現状だ。

 6月28日に行われる予定の新大統領を選ぶ選挙も、市民の自由を認めるリベラル派の立候補が認められなければ低調に終わるだろう。


昨年の今日の日記:「函館の旅(14):新島襄渡航碑、箱館戦争で野戦病院となった高龍寺と高松凌雲」