核兵器のような最強力な「時限爆弾」がアフリカ中央部にある。

​​ それは、ルワンダとコンゴ民主共和国にまたがるキヴ湖だ(写真=穏やかな湖と衛星画像)。​​

 

 

 


湖岸に人口150万人の大都市抱えるキヴ湖​

 アフリカ大陸東部を南北に貫くアフリカ大地溝帯の西部にある淡水湖だ。面積約2700平方キロ、最大水深は475メートル、平均水深は220メートルもあり、最大水深で世界で18番目、平均水深で9番目に深い湖である。

​ 湖岸には人口約150万人のゴーマという大都市もあり(地図)、湖上では漁師たちが小舟を浮かべて漁をし、渓谷には緑も多い。一見すると豊かな淡水をたたえた美しい湖に見えるが、実は恐ろしい時限爆弾を抱えているのだ。​

 

 

 それは、キヴ湖の地質構造に由来する。湖の深くに膨大な量の二酸化炭素とメタンガスを飽和に近い状態で蓄積している。


他の2つの湖は過去50年間に湖水爆発を起こした​

 それがいかに危険かは、キヴ湖を含めて世界で3つしかないこの種の湖のうち2つ(カメルーンのニオス湖とマヌン湖)が過去50年の間に湖水爆発を起こし、致死的なガスの雲を噴き上げ、人間と家畜、野生動物を窒息死させた例を見れば分かる。

​ 特に1986年のニオス湖の湖水爆発では、2000人近くが窒息死し、4つの村が全滅した(写真=ニオス湖の湖水爆発で発生した有毒ガスで死んだ家畜)。​

 

 

 2つの湖に比べて、キヴ湖の規模ははるかに上回る。湖の全長はニオス湖の50倍、深さは2倍もある。この巨大湖の水深260メートルより下には、300立方キロメートル近くの二酸化炭素と60立方キロメートルのメタンが、有害な硫化水素とともに水に溶け込んだ状態で閉じ込められている。


湖底に近いガス濃度は60%強だが、日々、ガスは供給されている​

 大地溝帯沿いに位置するキヴ湖には、点在する温泉から二酸化炭素とメタンが絶えず湖底に供給されていて、このままでは過飽和となり、いつかは湖水爆発を起こしかねない。

 これが湖水爆発すれば、前記のゴーマの他に湖周辺に数百万人が暮らしているだけに、未曾有の大惨事になる。

 現在、キヴ湖のガスの濃度は飽和状態の60%強だが、100%になれば自然に爆発する、と地質学者は予言する。

 飽和状態に達する前でも、地震や大量の溶岩の流入によって湖の層が大きく乱された場合も、湖水爆発の可能性があるとしう。ちなみにキヴ湖から25キロメートルも離れていないところに活火山が2つもある。


湖水爆発起こせば1日20〜60億トンもの炭素を放出​

 もしキヴ湖で湖水爆発が起これば、どうなるだろうか。湖は1日に20〜60億トンもの炭素を大気中に放出するだろうとされる。ちなみに現在の世界の二酸化炭素排出量は年間約380億トンだ。噴出したガスは霧のような雲となり、数日から数週間にわたって湖の上空に垂れ込め、毒性が非常に強いので、雲に包まれた人々は1分もすれば死んでしまう。

 ルワンダ政府は、この脅威を和らげ、湖の有害なガスを有益な燃料に変えるため、民間企業に、湖からメタンガスを取り出し、電力源として利用するプロジェクトを許可している。

 実はこれにも、へたに湖底をかき回すとその刺激で湖水爆発を起こすというリスクが指摘されている。

 自然の作った「時限爆弾」の周りに住む数百万人が不安にかられているかどうか、分からない。今まで何も無かったから、これからも、という根拠のない楽観論にしがみつくしかしかたがないのだろうか。
 

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