昨年2023年、ニューヨーク株式市場を沸かせたのは、かつてのGAFAM(Google→アルファベット)、アップル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン、マイクロソフトに、新興2社テスラとエヌビディアを加えた7社だった。
 

7社で23年1年間に74%上昇​

​​ これら7社は、今では「マグニフィスント・セブン(Magnificent 7=壮麗なる7社;7社のロゴマーク)」と一括される。なおマグニフィスント・セブンとは、2016年に公開されたアメリカの西部劇映画のタイトルから採られた(写真=映画『マグニフィスント・セブン』)。​​

 

 

 

 マグニフィスント・セブン7社の時価総額は、23年に74%も増えた。アメリカの大型株の指標であるS&P500種の時価総額の伸び率は24%だったから、まさに7社は「壮麗なる」の形容詞が付けられたも当然だ。ちなみに7社を除くと、S&P493銘柄の伸び率は約1割増に過ぎなかった。
 

群を抜く好パーフォーマンスのエヌビディアは3.4倍増​

 つまりマグニフィスント・セブンだけに投資した投資家は、74%もの好パーフォーマンスを享受できたが、へそ曲がりでそれを除いた投資家はおおむね1割アップに甘んじ、それでも満遍なくS&P500種に投資した人は何とか24%を拾えたということだ。

 これこそ株式投資の目利き力を問われる成果だが、マグニフィスント・セブンも子細に見れば、パーフォーマンスに大きな差があった。

 抜きん出た成果を挙げたのは、生成AIの開発・運用に欠かせない画像処理半導体GPUを主力製品とするエヌビディアだ(写真=カリフォルニア州サンタクララのエヌビディア本社)。他に対抗馬がいないこともあり、エヌビディア社のGPUはIT各社の奪い合いとなり、価格も高騰し、おかげで株価は1年で3.4倍へと大飛躍した。

 

 

最も冴えなかったアップルでも48%上昇率​

​ 一昨年までのGAFAMのエースだったアップル(写真=カリフォルニア州クピチーノの本社)は、iPhoneの需要鈍化もあり、成長力が鈍り、マグニフィスント・セブン最下位の伸びに留まった。それでも48%の上昇率だったというから、いかにマグニフィスント・セブンの実力が大きいか、分かる。​

 

 

 昨年までGPUの独壇場だったエヌビディアは、今年はAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)など競合他社が出てくるから、独り勝ちというわけにはいかないというもっぱらの予測だが、それでも各種指標からすると、株価が3.4倍になってもなお割安という。

 それにしても、彗星のように現れ、ニューヨーク市場を席巻したエヌビディアのような企業が次々と出てくることが、アメリカ経済の強さなのだろう。
 

匹敵する銘柄の無い日本、このままではジャパン・パッシング​

 それに対して、わが日本はどうか。革新的な半導体関連装置などを造り、10年で時価総額250倍にもなったレーザーテック(本社:横浜市)という会社もあるが、この会社でも連結売上高は2023年6月期で1528億円と、世界首位のアップルの2.82兆ドル、エヌビディア(アメリカ4位)の1.19兆ドルの足下にも及ばないのだ。
 他はGAFAMのような革新力のある企業もないばかりか、エヌビディア、テスラのようなそれに仲間入りするような新興企業もない。

 新NISA制度が始まり、若者の投資が盛り上がっているというが、多くは「ジャパン・パッシング(Japan passing)」で、アメリカ株の投信に流れるとされる。それも、昨年のパーフォーマンスを見れば、仕方がないか。


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