​ いよいよ来年から新NISA制度がスタートする()。​

 

 

 新NISAは、今年までのNISA(以下、単にNISAと言う)と大きく異なり、日本人の保守的な資産形成姿勢を大きく変えるのではないか、と期待されている。ただ、新NISAを始めるためには、証券口座が必要だから、まだ口座を持っていない人は、ネット証券会社などで口座を開く必要がある(むろん店頭で売買する普通の証券会社でも可能だが)。なお現在、証券口座を持ち、NISAを利用している人は、来年から自動的に新NISAに移行するので、手続きは不要だ。
 

枠が3倍化、年間360万円の枠

 新NISAがNISAと違う点は多岐にわたる。

​ まず投資枠が一挙に3倍化される。NISAは年120万円までだったのが、積立投資枠で120万円、成長投資枠で240万円になる。併用も可能だ。その場合は年間360万円になる()。​

 

 次にこれが5年間にわたって、つまりトータルで1800万円まで利用できる。しかも保有期間は無期限になった。NISAの場合は5年で、それが終わるとロールオーバーするか売却しなければならなかった。

 第3に、これが最も大きい思うのは、投資枠内で買った株や投信を売却しても、翌年にその空いた枠が復活し、新たに購入できる。NISAの場合は、売却すれば空いた枠を埋めるための再投資ができなかった。
 

売却益や配当に税金がかからない​

 では、そもそもなぜ新NISAが有利なのか。現在のNISAもそうだが、ここで売却した株、投信の利益に税金がかからない。また配当金にも、税金はかからない。

 株・投信などの利益・配当は源泉分離課税なので、通常は地方税も含めて20%超の税金が差し引かれる。これが無くなるのは、投資にとって大きなメリットだ。

 ただそれはさておき、冒頭の日本人の保守的資産形成姿勢は、高齢層は代えようもないけれども若い層には大きな意味を持つ。

 それでなくとも普通預金で0.001%(メガバンク、地銀など)、定期で0.002%という物価高の今日、目減りする一方の預貯金に、なお大量の残高が積み上がったままの現在が、これで変わる可能性が高い。

 ただ現代日本の国民の金融資産の矛盾は、高齢層は保守的だが多額の現預金を持つ一方、比較的投資に積極的な若年層は、生活に追われて預貯金が少ない、ということだ。
 

高齢層に偏る金融資産だが​

 だからいきなり若者が来年から360万円の枠の新NISAを使い切れるかとなると、まず難しいだろう。しかし、国民の金融資産2000兆円超の60%は高齢層が保有するが、おそらくその大半は預貯金だということだ。なぜなら2000兆円のうちの54%は預貯金だから、ほぼ分布が重なり合うからだ。

 保守的なのは、高齢層に限らない。主に大企業に勤める勤め人が月々積み立てる確定拠出年金の5割前後は、ノーリスクだが資産形成もできない預貯金だという。大切な老後資金を、投資で目減りさせたくないという思いなのだろう。

 しかし今まではそれでもよかったかもしれないが、今後の恒常的に続く物価高の時代、それでは老後資金は目減りする一方だ。

 さて、先ほどの2000兆円超の金融資産である。

 本当は、この巨額の金融資産のうち、10%でも投資に誘導できれば、株式市場に大きなインパクトになる。現在の東証プライム上場企業の時価総額は700兆円を超えているが、これに10%の200兆円がオンされただけで、劇的な地殻変動となるのは自明だ。
 

長期的にはほぼ確実に資産は2倍、3倍になる

​ 日本人の保守的な資産形成姿勢は、おそらく1989年をピークにバブル崩壊で大きく株価と不動産価格が下がった痛手が尾を引いているのだろう(写真)。

 

 あの直前にめいっぱい株式に投資した人なら、3分の1世紀たってもまだ元値を回復できていない。

 それでも、バブル崩壊後の、例えば今世紀最初の2001年に投資を始めた人なら、リーマンショックや東日本大震災を挟んでも、よほどのボロ株を掴まない限りは、全員がプラスになっているはずだ。なぜなら2001年年初の日経平均株価は1万3867円で、今はそれよりも約2万円も高いからだ。当時、日経平均株価に連動する指数で1000万円投資した人なら、現在は3300万円近くになっている計算だからだ。

 もし余裕のある人が、毎月10万円、20万円の計30万円を、それぞれ積立投資枠と成長投資枠にめいっぱいに投資すれば、20年後にはそれに近いパーフォーマンスが見込めるだろう。

 まさに投資の時代がやって来た。

 

昨年の今日の日記:休載​