​ アメリカ国債のフィッチによる格下げの影響を受け、日本株式は週央から軟調に推移している。7月1日から株式を25分割したNTTもまた、一時の人気沸騰の後、冴えない展開になっている。先週末の終値は158.5円で、ずっと下げ基調となっている()。​

 

 理由は需給悪化の懸念、である。
 

萩生田発言がきっかけ​

 ちなみに25分割の結果、NTT株は1株160円近辺になった。単元株制のもとで100株単位でないと売買できないが、それでも手数料無しだと1万6000円近辺で買える。ネット証券なら、たいてい手数料は無料だから、サラリーパースンも小遣い程度で買える「お手頃」株だ。

​ 本来なら、人気が沸いてもおかしくないのだが、低迷しているのは、自民党の萩生田政調会長(写真)の7月25日の発言がきっかけだった。党の会合で、財源確保策として、NTT株の政府保有義務をやめ、保有株を売却し、完全民営化を目指すという構想を披露したのだ。​

 



政府の3分の1以上保有は今はナンセンス​

 NTT法は、政府が同社の発行済み株式の3分の1以上保有することを定めている。

 保有義務は、通信という基幹中の基幹産業を民営化して外国人に買い占められ、乗っ取られないようにという国家安全保障上の配慮があったものと見られる。

 しかし、当時は通信はNTTの独占事業だったが、民営化と共に、通信の民間参入が認められ、今ではKDDI、ソフトバンク、さらには楽天も参入した。NTTの外国支配の懸念は、無意味になった。

 だから3分の1以上の政府保有の義務は、今ではナンセンスである。むしろNTTにしてみれば、経営の自由度を縛られる3分の1以上の政府保有は窮屈に感じているだろう。重要なことは、その都度、総務省におうかがいをたてなければならないのだ。
 

GAFAMの一角になり得ていたかも​

 だから完全民営化は、その縛りを解くことになり、NTTにも同社への投資家も歓迎すべき転機になり得る。

 思えばNTTが民営化された直後から数年は、株式市場はNTTフィーバーで湧いた。NTTの時価総額も、世界でトップクラスに位置した。

 もし経営の自由度を得ていたら、高株価を巧みに利用し、世界の有望なIT関連株を買収し、巨大なIT企業に生まれ変わっていたはずだ。

 民営化当時、現在、アメリカ株式市場を席巻するGAFAM(「G=Google」、「A=Amazon」、「F=Facebook(現Meta)」、「A=Apple」、「M=Microsoft」)は存在しないか、まだ小さかった。
 

今こそ買い場、買い出動へ​

 もし1980年代にNTTが完全民営化されていれば、お役所気質を一新させ、GAFAMの一角に名を連ねていた可能性さえあり得た。

 いわばNTTは政府に縛られて自由に飛び立てず、狭い日本国内の通信事業という土俵の中での勝負に制限されていたのだ。

 その縛りを解く可能性のある萩生田政調会長の構想は、歓迎こそすれ、「売り」で反応するのは何とも解せない。

 今は絶好の買い場かもしれない。今週から安く指し値し、買い出動することにしよう。


昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(163):塩砂漠の一角に塩湖を遠望」