​ スターリニスト中国の秦剛(写真)の外相解任は、西側報道機関と政府に、この国の異形ぶりをあらためて認識させた。解任の理由も、いまだに発表されていない。民主国家ではとうてい想定できない異様さである。
 

 

6月25日以来、消息絶つ​

 かつてスターリン時代のソ連では、政府と党の要人が突然失脚したことを、党機関紙の『プラウダ』や政府機関紙『イズベスチア』での序列の異動や言及されないことで知った。21世紀の今日、世界経済大国2位で、国連安保理常任理事国の外相の、理由不明の突然の解任は、スターリン時代のソ連を思わせるようだ。

 秦剛の身に重大な異変が生じたことを西側が察知したのは、今年6月25日に北京でロシア高官らと会談して以降、ふっつりと動静が絶えたことだ。3週間以上もたった7月中旬、インドネシアで開催されたASEAN関連会合いにも欠席し、代理として外交トップの当時前外相だった王毅が出席し、西側は一斉に注目した。この時、スターリニスト中国外務省の報道官11日の定例記者会見で、秦剛の欠席について「身体的理由」とだけ明らかにしたが、その発表を公式サイトに掲載せず、国内の主要メディアも一切報じてなかった。
 

記者会見で秦剛関連の質問が続出​

 その後、台湾の報道機関が香港テレビ局の女性ジャーナリストとのスキャンダルを報道、さらに別の台湾の大手紙が西側の一部に秦剛が駐米大使時代に機密を漏らした疑いがあると報道されるなど、「身体的理由」などではない、「他の何か」があって、失脚したことはほぼ確実になった。

 そうした中、7月25日になってやっと、全人代常務委が秦剛の外相解任を発表、後任に前外相で政治局員の王毅の復帰した。

 1夜明けた26日、外務省の定例記者会見では次々と秦剛の解任について質問が出た。30近くあった質問のうち秦剛関連の質問は20問を超えた。

​ むろんスターリニスト中国が素直に答えるはずはない。その20問超の質問に対し、副報道局長の毛寧(写真)は、すべて「提供できる情報はない」の一点張りで通した。​
 

 

NHKの海外放送ニュースもスターリニスト中国では遮断​

 むろん質問した記者たちもバカではない。素直に答えるはずがないのは百も承知だが、それでも質問の矢を射かけ続ければ、ぽろりと本音の一部が出てくるのではないか、と考えたのだ。しかしさすが鉄の女のスターリニスト毛寧は、全く揺るがなかった。

 スターリニスト中国が秦剛解任にナーバスになっているのは確かだ。外務省のホームページでトップ画面にあった秦剛関連の記載はすべて削除されている。

 25日の夜のNHK海外放送のニュース番組で、スターリニスト中国で秦剛解任の報道が流れると、1分半も放送を途切れさせた。この様子は、当のNHKのニュース番組でも放送された。秦剛解任の報は、よほど国内でも知られたくないようだ。
 

異例のスピード出世の背後に習近平​

 秦剛失脚の真の理由は、まだ分からない。

 確実なのは、その失脚が習近平の意向であっただろうということだ。そもそも秦剛の出世も異例のスピードだった。昨年12月末、56歳で外相に就任したが、これは故周恩来に次ぐ若さだった。

 そして3月には副首相級の国務委員も兼任した。

 外相就任1年半前の2021年7月28日には、世界1の超大国アメリカへの駐在大使に起用されている。

 こうした異例の出世に、習近平の意向があったのは間違いない。

 それだけに外務省内には、ジェラシーと反発が渦巻いていたことだろう。足を引っ張ろうとする輩は多かったに違いない。

 たぶんそのうちの誰かか、駐米大使時代の不祥事を習近平にチクったに違いない。習近平のコネで異例の大出世したのだから、習近平の信任を失えば転落も早い。

 外相就任たった半年で解任を命令できるのは、習近平しかいないのだ。

 ただそれで、習近平もメンツに傷ついたのは間違いない。

 げに恐ろしいのは、周囲のジェラシーというわけだ。


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