2世紀にわたって軍事的中立を貫いたスウェーデンが、いよいよNATOに加盟する運びとなった。

 

スウェーデン加盟でNATOは32カ国に拡大​

​ 昨年5月、フィンランドと共にNATOへの同時加盟を目指したが、トルコの独裁者エルドアンの横やりで、フィンランドだけこの4月に加盟を果たし、スウェーデンだけは店ざらしにされていた。トルコの反体制独立派のクルド系組織がスウェーデンで保護されているなどと難癖をつけ、さらにはアメリカにF16戦闘機の売却を容認させ、EUへのアクセスも容易になるように条件闘争を行い、ある程度、その目途がたったからだ(写真=10日、リトアニアの首都ビリニュスで握手するトルコのエルドアンとスウェーデンのクリステション首相。中央はNATOのストルテンベルグ事務総長)。​

 

 

​ スウェーデンが加盟を果たせば、NATOは32カ国に拡大する()。発足時、12カ国から出発したのに、ソ連崩壊を経て、旧東欧とバルト3国も加盟し、さらに解体された旧ユーゴスラビア諸国も、セルビアを除いて加わった。​

 

 

ウクライナの加盟は見送り、安全を長期的に保障する枠組み創設​

 これで北欧諸国は、すべてNATO加盟国となる。テロ国家ロシアのプーチンは、NATOの東方拡大を脅威に感じ、ウクライナも加盟に動いて、その加盟を阻止しようとして、ウクライナ侵略戦争に踏み切った。

 ウクライナはもちろんNATO加盟を希望し、ゼレンスキー大統領も11日、12日にリトアニア、ビリニュスで開かれたNATO首脳会議に参加し、加盟を訴えた。

 ただNATOは、ウクライナの加盟プロセスを加速させることを決めただけだった。ウクライナはもちろん即時加盟を希望しているが、今、ウクライナがNATO加盟国になると、集団的安全保障条項から、アメリカと西欧は対ロシア防衛戦争に加わることになり、それは非現実的として、即時加盟は認められなかったのだ。

​ その代わり、G7はウクライナの安全を長期的に保障する枠組みを創設、NATO加盟国とウクライナが2国間協定を結び、ウクライナの安全を高める(写真=G7首脳との会談に加わるゼレンスキー大統領)。​

 

 

プーチンの対ウクライナ侵略戦争は戦略的に失敗が明確化​

 しかしそれでも、プーチンはNATOの圧力をさらに身近に感じることになった。それどころか、フィンランドとスウェーデンもNATOに加わり、事実上、全ヨーロッパを敵に回すことになった。戦略的な大きな失敗、である。

 考えてみれば、昨年2月にプーチンが始めたウクライナ侵略戦争は、最初から誤算・失敗続きだった。取り巻きどもの甘い見通しのもと、3日間で首都キーウを占領し、ゼレンスキー大統領ら首脳部を逮捕し、傀儡政権を樹立し、その傀儡政権と軍事的同盟を結んで、NATOに対向しようとしていた。

 

テロ国家ロシアの後退、少しずつだが​

 ところがウクライナ側の防衛戦争への志気の高まりとNATO諸国の軍事援助で、今や占領地から1寸ずつ交代させられている。しかも、膨大な戦死者・負傷者を出して。

 6月下旬には、バフムト攻略の原動力となった民間軍事会社ワグネルの反乱まで招来した。穴の開いたバフムトは、ウクライナによる奪還が堅実のものとなりつつある。

 ロシア侵略軍は今や完全に守りに入り、それもどこまでもつか、という話になってきた。

 プーチンの悩みは尽きない。


昨年の今日の日記:「札幌周遊記2022⑬:なだらかな土道の先に岩だらけの険しい道;安倍元首相の葬儀に多数」