ワグネルの武装反乱の背後には、やはりロシア軍幹部の影があった。

​ 昨年10月から今年1月まで、ウクライナ侵略の軍事作戦を率いていた現副司令官のセルゲイ・スロビキンが、反乱を事前に把握していたようだ(写真=プーチンと一緒に写真に収まるスロビキン、2017年)。​

 

 

 ワグネルの部隊がロシア正規軍のさしたる抵抗も受けずに、モスクワの南200キロまで進出できたのは、親ワグネルのスロビキンらの指示があったのだ。
 

1月に副司令官に降格されていたスロビキン​

 スロビキンは、中東シリアに派遣されて以来、ワグネルのプリゴジンと昵懇で、スロビキンが総司令官就任に当たっては、侵略戦場で共に戦っていたプリゴジンの強力な推薦があった。そのためスロビキンが総司令官を務めていた時は、ワグネルとの協同がスムーズに行っていた。

 ところが1月にスロビキンは突然、副司令官に格下げされ、後任にワグネル部隊とプリゴジンとしっくりいかない参謀総長ゲラシーモフが総司令官に就いた(1月13日付日記:「笑止! されど不当で差別的なスターリニスト中国のビザ新規発給停止に強く抗議、我々はなめられている」 追記:総司令官にゲラシーモフ」を参照)。
 

スロビキンはワグネルの秘密VIPメンバー​

​ その後、プリゴジンはゲラシーモフと国防相のショイグに装備が不足しているなどと不満を並べ、反乱直前には「弾薬はどこだ!?」と両者を名指しで激しく攻撃までしていた(写真:ショイグ=右=とゲラシーモフ)。​

 

 

 当然、副司令官に降格されたスロビキンも、ゲラシーモフやショイグに不満を持っていただろう。

 CNNが30日朝伝えたところによると、スロビキンはワグネルの秘密のVIPメンバーであったことが、ワグネルの文書から明らかになったという。スロビキンは、ワグネルの個人登録番号も持っていた。それ以外にも、少なくとも30人のロシア侵略軍や情報当局の高官らもワグネルのリストに掲載されていて、こうした高官らもワグネルのVIPメンバーだとしている。
 

事前にスロビキンと打ち合わせたが、思惑は頓挫​

​ そのスロビキンは、24日夜のワグネルの武装反乱の停止後は姿を見せていない(写真)。28日夜、ロシアのメディアは国防省に近い複数の情報筋から、スロビキンは拘束されていると伝えた。別のロシアのジャーナリストは、スロビキンは「この3日間、家族と連絡を取っていないし、警護役とも連絡が取れない」と言う。​

 

 

 アメリカの複数の政府当局者はスロビキンがワグネルの「武装蜂起に共感していた」と述べた、とロイター通信は伝える。

 プリゴジンは、事前にスロビキンと詳細な打ち合わせを行い、ロシア軍の支援を期待し、ゲラシーモフとショイグの失脚を狙っていたらしいことがはっきりした。蜂起後に1日で矛を収めたのは、プーチンの思わぬ強い警告とスロビキンの拘束があったからなのだろう。

 ロシア侵略軍も一枚岩でないことは、これではっきりした。ウクライナ防衛軍の反攻に拍車がかかった時、ロシア侵略軍は崩壊する可能性も出てきた。
 

民間軍事会社37社が乱立​

 ところで、テロ国家ロシアには、ワグネルの他に、多数の民間軍事会社が乱立しているという。国際情報会社によると、その数は37社もあり、うち25社は正規軍の兵力を補うためにウクライナ侵略戦争に加わっているという。また37社の約3割の11社は、ウクライナ侵略開始後に急造されたようだ。

 西側自由主義国では、正規軍以外に、戦車まで装備する武装集団が多数活動しているというのは、とうてい理解できない。

 ワグネルが最も古く、最大規模だったが、それも今は解体寸前だ。しかし、それを補う民間軍事会社がこれほど多数作られているのは驚きだ。中には国営天然ガス企業のガスプロムやオルガリヒが作った会社もある。
 

ガスプロムの民間軍事会社はワグネルと軋轢​

 ガスプロムの作った「ファケル」、「ボストーク」といった軍事会社は、バフムト攻略作戦にも参加していて、主体となっていたワグネルと軋轢が生じていたという。

 プーチンやショイグら侵略軍幹部は、ロシア正規軍の別働隊、補完勢力として、民間軍事会社を利用している。しかしワグネルの反乱で、彼らも民間軍事会社を利用するリスクには気がついたに違いない。

 今後のウクライナ侵略戦争に影響を及ぼすのは必至だ。


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