昨年11月、アメリカのスタートアップ「オープンAI」が一般公開した生成AI「チャットGPT」が、アメリカで大きな話題となつている。公開以来、たった2カ月ほどで、ユーザー1億人ともいう。
 

マイクロソフトの検索エンジンBingに組み込み​

 マイクロソフトは自社の検索エンジンBingにチャットGPTを組み込み、検索でガリバー的首位のグーグルに挑み、グーグルも非常事態宣言を発して今月に生成AIを使った自動応答ソフト「Bard(バード)」を導入すると発表した。

​ チャットGPTとは、いかなるものか(写真=公式サイト)。​

 

 

 これまでのGoogleやBingは、単語を打ち込んで、それに関係したサイトを検索していた。大量のサイトがヒットし、それを1つ1つ開いて読み、自分でどれが目的に合うものか判断していた。
 

必要な事項で命令すると即時に見事な文章の回答が得られる​

 ところがチャットGPTは違う。いくつかの用語を組み合わせて命令すると、それに見合った文章をAIが即時に生成して表示してくれる。AIは、世界中の天文学的データを探し、指示された命令にかなう文章を作成してくれるのだ。チャットGPTの基盤となるAIは、10の23乗の3倍という天文学的回数の演算をこなすのだという。それまで自分で様々な情報を検索し、それに合わせて1つの文章を作成していた手間が全く無くなる。

 その文章は、AIが作成したものとは思えないほど、自然の文体ともいう。

​ またプログラムも書けるし、イラストも他人の素材を集めて制作できる。画学生が少し手を入れれば、立派な絵に仕上がるともいう(写真)。

 


 

大学などで恐慌​

 ともかく従来になかったほど画期的であることは確かだ。例えば高級ホテルのコンシェルジェのように、どんな疑問・質問にも答えてくれる。彼女との今夜のレストラン、着ていく服装、プレゼントの品と店etc.。

 これは、例えば大学のレポート作成に利用すると、学生はほとんど何の努力も要せずに1本の論文を作成できる。現代の学生から熱狂的に歓迎されたのは、当然だ。

 大学当局も、対抗して大慌てでチャットGPTの利用を禁止しているようだが、どの文章がチャットGPTで製作したのかはなかなか判断がつかないようだ。だがその威力があまりにも「破壊的」なため、利用禁止措置は世界中の大学・研究機関で広がっている。

 ただしチャットGPTのAIは既存のデータを探して回答するので、古いデータや誤り(フェイク)が混じり、内容にも偏りのあることがあるという。
 

なりすまし用の偽メールなども作成してくれる​

 悪用も心配される。前述のようにレポート作成に利用すれば、何の苦労も無く作れるから大学のレポート以外に、企業レポートでも乱用されるだろうし、さらには成りすまし用の偽メール、マルウエアまで作成できる。

 例えばチャットGPTを使って短編小説を書いたら、それはユーザーの作品と言えるのだろうか。

 社会にこんなものが氾濫したら、我々は何を信用したらいいか分からなくなる。
 

開発スタートアップの企業価値は今や290億ドル​

 それでもその破壊的威力を持った価値のため、チャットGPTを公開したオープンAI社の企業価値は290億ドルにも達しているという。様々な目的に則した生成AIの後発スタートアップ企業が世界中で雨後の竹の子のように生まれている。

 この破壊的価値は、強権的国家にとっても危うい。スターリニスト中国の規制当局は、アリババなどの国内IT企業に、チャットGPTサービスを提供しないように指示した。チャットGPTによって、共産党統治に批判的な文章が作成されかねないから、という。スターリニスト中国から直接アメリカのオープンAIのチャットGPTにアクセスし、そこに会員登録することは可能なのかどうかは分からない。


昨年の今日の日記:「抵抗するウクライナに無差別攻撃を強めるプーチン・ロシアの狂気、絶対に許すな、核兵器の使用」​