​ 日本から遠いウクライナは、広大な黒土地帯(写真)のコムギ生産・輸出大国という程度にしか知られていないが、実は世界的なIT大国でもあり、「東欧のシリコンバレー」とも呼ばれる。日本にも、エンジニアなど多数、来ている。​

 

 

 それを見るにつけ、プーチンのロシアは、とんでもない国を敵にして侵略したと思う。
 

IT技術者は30万人​

​ ウクライナは、1991年に旧ソ連から独立して以来、ソフトウエア産業を強化してきた。同国には、約30万人ものIT技術者がいる(写真)。近年は、海外企業の開発委託先としても注目されている。​

 

 

 同国の投資庁によると、ロシア侵略以前はIT企業の数は5000社超もあった。

 同国のIT関連団体によると、コンピューター関連サービスの2021年の輸出額は68億ドルもある。目覚ましいのは伸び率で、3年前から2倍以上に拡大した。

 IT部門の収益はGDPの4%以上を占めている。

 IT産業の強みは、パソコンと通信設備さえあれば、どこにいても仕事に従事できることだ。巨大に装置を必要とする重化学工業と、大いに異なる。敵国に侵略されて工業設備を破壊されても、IT産業は生き残れる。
 

IT軍に国際的ハッカー集団「アノニマス」も加勢​

​ こうした潜在力が、対ロシア防衛戦争で生きた。エンジニアたちは、「IT軍」に組織され、反ロシアのサイバー戦争を仕掛けている(写真)。​

 

 

 ロシア侵略軍が苦戦しているのは、軍内の情報があちこちで抜き取られ、軍の動きや指揮系統が筒抜けに近い状態になっていることが大きい。またロシア国内の重要施設に、ランサムウエアも送りつけ、運輸施設を立ち往生させることもある。

 この反ロシア・サイバー部隊「IT軍」には、国際的なハッカー集団の「アノニマス」なども加勢している。

 今、テレビなどでロシア侵略軍の残酷な無差別攻撃が大写しされるが、ウクライナの対ロシア情報戦争は、目に見えないけれどもロシア侵略軍に打撃を与えているのだ。
 

困難に満ちた戦後復興の希望の星​

 プーチンは、欧米から供与された対戦車ミサイル「ジャベリン」、対空ミサイル「スティンガー」を駆使するウクライナ軍にほとほと手を焼いている。サイバー部隊の手にかかれば、軍の位置情報も筒抜けで、そこに効果的に攻撃が加えられる。

 しかしロシアによるインフラ施設の破壊は、ウクライナの戦後復興にとって大きな痛手であることは間違いない。一説には、こうした破壊で、今年のGDP伸び率はマイナス40%にも達するのではないか、と推定されている。

 しかし同国のIT人材と基盤は、生き残る。IT産業は、ウクライナの復興の最強の原動力になるに違いない。


​昨年の今日の日記​:「幕末に無敵の強さで京の治安を守った武装集団=新選組、戊辰戦争も生き残った義に生きた武士たちの維新後:前編」