「分配」重視の岸田ばらまき政権のショックの後も、マーケットの傷は癒えず、どうやら年末恒例の「掉尾の一振」も肩すかしで終わりそうである。ニューヨークのダウ株価など、オミクロン株騒動後の暴落を早くも回復しているのに、日本だけが低迷するのは、マーケットの岸田ばらまき政権への不信感が主因だ。


持ち株のアリババ株大幅下げで株価は今年最高値から半減​

​ そんな全般不調のマーケットでも、ひときわ傷が深いのが、ソフトバンクグループ(SBG)である。先週末の終値は5518円で、昨年末終値の7692円から2174円安、今年最高値の1万0695円からは約半値という大不振である(株価チャート図)。​

 

 

 SBG株は、昔から個人投資家にも人気が高く、個人株主も多い(今年9月末現在で、機関投資家も含めて26万1204名だが大部分は個人投資家だ)。それだけに痛手を被っている投資家は多いだろう。

 不振を極めるのは、投資先のスターリニスト中国のアリババ集団の株価の不振だ。香港取引所に上場するアリババの時価総額は、ピークである20年10月末の約6兆6000億香港ドル(日本円換算で約95兆円)もあったのが、足元は約2兆8000億香港ドルと、5割以上も減ったからだ。

 それに歩調を合わせてSBGが保有する資産の中でアリババ株が占める割合は1年前の中間決算期時点の59%から28%に大幅に下がっている。


ライブコマースの女性インフルエンサーに巨額追徴課税と罰金​

 習近平政権の進める「共同富裕」の名の下、一部のIT企業や不動産、娯楽、ゲーム、学習塾などの産業が抑圧され、アリババはその最大の標的、象徴となっていることが大きい。いまだにアリババ創業者の馬雲は、表舞台に立てず、逼塞させられている。

 圧迫は、アリババのライブコマースで活躍するインフルエンサーにも及ぶ。

 去る11月22日、ライブコマースで活躍する著名女性インフルエンサー2人が当局から脱税で摘発された。2人で約2500万人ものフォロワーを抱えていた。2人の科された追徴課税と罰金額は合計で日本円換算16億円。

​ 摘発されたインフルエンサーの1人「雪梨」なるニックネームの女性(写真=本名:朱宸慧)は、ライブコマースを通じて昨年には40億元弱もの売上を挙げていたという。​

 


SBGに悪材料相次ぐ​

 こうしたインフルエンサーは、圧倒的知名度をもとに商品製造会社と有利に契約し、コマース画面上で宣伝を繰り返す。この契約の際、優位な立場を利用して税金を隠すために領収書などの発行を拒むという。

 元手要らずで数十億円も稼ぎ、脱税をしているなら、当局も見逃せなかったかもしれないが、それは「人治主義」の国だ。アリババへの強圧下でなければ、もっとやりたい放題だっただろう。

 SBGは、出資する滴滴出行(ディディ)がニューヨーク証券取引所の上場廃止を余儀なくされている。滴滴出行は、ニューヨーク証券取引所に今年上場したばかりで、たった半年後にアメリカから退出を強いられた。スターリニスト中国当局の圧力による。


香港上場間際のセンスタイム、アメリカが証券投資禁止措置​

​ 10日には、アメリカ財務省がスターリニスト中国企業商湯集団(センスタイム)を、証券投資を禁じるリストに載せた(写真=CEOの徐立)。センスタイムは画像認識大手で、同社の顔認証技術がウイグル族を監視し、人権侵害に使われていることを財務省は問題視した。​

 

 

 同社にはSBG参加のビジョンファンドが投資しており、17日には香港市場に上場される予定だった。SBGにまた悪材料が増えた。

 ……というわけで、悪材料が出るたびに、回り回ってSBGの株価が下がる。

 巨大な人口を背景にした膨大な市場に幻惑され、スターリニスト中国企業に投資したSBGは、共産党1党独裁の中国カントリーリスクを見誤ったと言えそうだ。


昨年の今日の日記:「車に轢かれても潰れず、食われても捕食者が噛めずにはき出すほどの驚異の『鋼鉄』の虫コブゴミムシダマシの秘密」