やはり我慢して良かった、と思う。先週末、東証REIT指数が約1年ぶりに2000台に回復、2003.14で引けたのだ。
 昨年3月、REIT相場が暴落し、ほとんどの銘柄がストップ安を付けた時は、僕も肝を冷やした。あれは、武漢肺炎の世界的な蔓延と底知れなさに恐慌に陥った機関投資家が、株も債券も原油・金など商品もことごとく叩き売ったパニックの中の出来事だった。
 

値上がり目的ではないけれども​
 それまで僕は、多数の銘柄のREITを保有していて、さすがにその時は半数以上が購入価格を下回って、気分も沈んだ。
 ただそれから僕は、初心に戻った。
 僕がREITを買い、保有するのは、値上がり目的のキャピタルゲイン狙いではなく、あくまでも分配金(株で言えば配当金)というインカムゲイン目的である。ならば、少々の値下がりにへこたれず、そのままホールドし、半期の決算ごとに支払われる分配金をもらい続ければよいのだ、と。
 

減配観測尻目に分配金は過去最高に​
 そしてあれから間もなく1年になる。早くも武漢肺炎前の高値を上回った株に対し、REIT価格の回復は遅々としているが、それでも着実に値を回復してきた。
 今では、一部の銘柄以外、かなりは購入価格を上回るほどになった。東証REIT指数の2000台回復は、その過程に過ぎない。
 では長期金利も強含みで、都心オフィスビルの空室率が高まっているのに、なぜREIT指数は回復したのか。
 機関投資家、主に地方銀行(地銀)筋がREITを購入するのは、高い分配金利回り狙いだ。彼らは昨年3月の大暴落時に、分配金大減配を予想し、パニックになって優良REITも叩き売った。
 その分配金は、着実に支払われている。いや、平均分配金は、武漢肺炎パンデミック最中の2020年にはむしろ増加し、20年下期には過去最高を記録したのだ。
 

​​​​オフィスビル投資のREITも堅調​
 例えば僕も保有する上場REITの時価総額2位の「ジャパンリアルエステイト投資法人」の直近第38期(20年4月1日~9月30日)運用資産報告書(写真)を読むと、1口当たり分配金は1万0740円で、前期よりむしろ652円の増配になっている。

 


 同投資法人は、都心部のオフィスビルを主要投資対象にしているため(写真)、武漢肺炎でリモートワークが進み、テナント企業がビル・フロアの借りスペースを縮小し、それが賃料減少につながり、減配になるのではないか、と危惧され、一時はたった2週間で37%強という厳しい下げを食らった(チャート図)。

 

 


 それが蓋を開ければ、むしろ増配となった。
 このような傾向は、ホテル運用する一部のREITを除く、ほとんどのREITで共通している(写真)。

 


 

昨年3月にたたき売った地銀勢も参入​
 REITを運用する投資法人責任者たちは、少々の賃料減少を相殺できるだけのバッファーを持っている。例えば含み益のあるビルを1棟売却するだけで、十分な分配金原資を確保できるし、修繕費などを切り詰めれば、利益を確保できるのだ。
 こうした成果を見て、昨年3月初め~半ばに、REITを叩き売った地方銀行(地銀)勢が、安定した分配金を目当てに再びREIT購入に回帰している。
 それが、東証REIT指数の2000台回復に表れている。
 投資とは、投機と違い、長い目で見るものである。目先の暴落にパニックになって投げ打ったり、暴騰に有頂天になって飛び乗ったり、はもってのほかなのである。

 

昨年の今日の日記:休載