今年は、武漢肺炎パンデミックという悪夢に見舞われ、なおその収束像が描けないが、また世界で、地球温暖化阻止のため脱炭素の盛り上がった年でもあった。
 日本は、スターリニスト中国やロシアなど自国エゴの独裁政権と並んで、世界の脱炭素の動きから劣後していたが、新たに誕生した菅政権は日本の脱炭素の意思を鮮明にした。
 先の臨時国会冒頭の所信表明演説で、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と表明したのだ。
 

​​アメリカもパリ協定に復帰へ
 これは政権最高責任者による決意表明であり、また国際公約ともなった。日本企業と消費者は、未来に責任を持つ者として30年後までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする決意を固めないといけないだろう。
 近い将来、温室効果ガスの排出ゼロを表明したのはヨーロッパが先行し、日本は2番手になる。二酸化炭素による地球温暖化に懐疑的だったトランプ政権のアメリカは、各州レベルでは新車のEV化義務づけなど注力しているものの国全体としては後ろ向きだった。
 石油・石炭産業への配慮もあった。しかしバイデン新政権はパリ協定に復帰し(写真)、日本と同様に2050年までの排出量ゼロを目指すことになる。

 


 アメリカが温暖化阻止に本腰を入れれば、世界はその方向に確実に動くだろう。
 

自動車は電動車に乗り換えの動き顕著
 世界の全二酸化炭素排出量約300億トンのうち、自動車は17%ほど占めている。自動車が標的になるのは、当然だ。
 日本では、菅政権の意向もあり、例えば、国に先がけて東京都が2030年までに新車販売は電動車(ハイブリッド車を含む)に限ることを方針を示した。イギリスは30年に、フランスは40年に従来型のガソリン車、ディーゼル車は販売禁止となる。
 アメリカでは環境意識の強いカリフォルニア州が35年までに販売禁止の方針だ。
 世界の潮流がこうなると、日本の自動車メーカーも電動車重視に動かざるをえない。厳しいのは、ヨーロッパやカリフォルニア州などの電動車に日本の強みのハイブリッド車が含まれないことだ。しかもEV(電気自動車)車の販売量は少ない。
 

世界はEV化だが
 もし次世代車の本命がEVになるとすると、日本の自動車産業は大幅な構造転換を求められることになる。特に自動車部品メーカーには影響は大きい。
 従来型ガソリン車の部品点数は、約3万点と言われる。この多数の部品に、中小を含めた夥しい専門メーカーが生産と技術開発に従事し、大きな裾野を形成している。
 ところが普通のEVとなると、部品点数は半減するという。動力がエンジンでなくなり、モーターになると大幅に簡素化されるからだ。
 

​​燃料電池車(FCV)こそ本命
 ただ日本には、世界に先がけ、トヨタとホンダが市場投入した燃料電池車(FCV)がある(写真=トヨタ自動車のFCV「みらい」)。

 FCVは水素の価格が高いこと、したがって一般には普及せず、そのために水素供給ステーションがガソリンスタンドに比べて圧倒的に少なく、ドライバーは常にガス欠を心配しないといけないという欠点がある。
 EVの場合、確かに運転時に二酸化炭素を出さないが、動力の電力は火力発電所で供給されるとすれば、必ずしもゼロエミッションではない。その点、FCVの水素を砂漠のメガソーラーで水を電気分解して生産し、日本に持ってこれば完全にゼロエミッションとなる。
 自動車の電動化は、コネクティッド・カー化、スマート・カー化に不可欠な基盤でもある。

EVにはないFCVの長所​
 FCVは、EVと違って給水素に要する時間がガソリン車並みで、しかも1回の給水素の航続距離もガソリン車並みだ。これは、EVではとうてい及ばない(写真=EVの充電はいまだに時間がかかる)。

 


 日本は、水素供給コストの低下と共に、FCVの低価格化を推進し、世界に技術供与するメリットが見込める。FCVと周辺の整備を望む。
 一方、水素を二酸化炭素と反応させればメタンガスになり、これなら既存のエンジン車にも応用できる。これもまた脱炭素の一手段である。​

 

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