先週も、武漢肺炎にわよる世界のマーケットの動揺はいっそう深まった。
 ニューヨーク株式市場のダウ平均は18日、終値で2万ドルを割りこんだ。トランプ大統領登場で2万ドルを突破した株価は、元に戻ってしまった。この間、1万ドルもの暴落である。
 日本の東京証券取引所も同様。19日、ついに1万6552円と1.7万円の底を突き抜けた。
 

先進国、経済活動はマヒ状態​
 無理もない。
 北米と欧州の自動車生産工場が休止し、再開の目途が立たない。日本の現地工場も例外ではない。言うまでもなく、自動車生産は、部品を含めて広い裾野の製造業を持つ。欧州だけで1360万人の雇用に影響するという。
 イタリアが死者で初めてスターリニスト中国を抜き、他のEU主要国も感染者数は軒並み5桁に達し、なお急拡大している。
 EUは域内はもとより世界の国境を閉じ、外食店は閉め、市民は外出も事実上できない。
 今や今年度のユーロ圏はマイナス成長が必死であり、後半の盛り返しにもよるが最悪2桁%のマイナスの恐れが意識されている。
 国境閉鎖の大波をもろに食らっているのが、航空業である。欠航便数は、ほぼ国際線で1日1万2000便にも達している。世界の国際線のほぼ半数が欠航、となった(写真=成田空港も閑散)。

 


 

アメリカのメガ航空会社、ボーイング危うし​
 感染は、北米でも拡大し、アメリカはついにほぼ一体の経済圏であるカナダとの国境すら閉じた。アメリカは国民に全世界への渡航を事実上、禁止した。
 アメリカのメガ航空3社(デルタ、アメリカン、ユナイテッド)と世界の民間航空機市場を二分するボーイング社も経営危機が伝えられている。
 ニューヨーク株式市場や東京証券取引所、さらに欧州の株価暴落は、1929年以来の世界恐慌を予見しているかのようだ(写真=1929年の大暴落時のニューヨーク証券取引所)。

 


 事態はさらに深刻化している。全米最大の州であるカリフォルニア州は19日、同州の全住民約4000万人に原則として外出を禁じる外出禁止令を出したし、ニューヨーク州では翌20日、全ての非必須とされる事業の営業を停止し、非必須の従業員を自宅に留まらせる行政命令が発令された。アメリカ経済もマヒ状態になりつつある。​
 

日経225種平均株価は下落なのにTOPIXは値上がりの怪​
 日本の東証では、17日火曜、18日水曜、19日木曜と珍現象が生じている。つまり日経225種平均株価は火・木と3桁の下げなのに、全体の値動きを示すTOPIXだけはプラス、つまり値上がりしたのだ。
 もっと顕著だったのは、水曜日の225種平均株価とTOPIXである。前者が僅か9.49円とたった1桁の値上がりだったのに、TOPIXだけは32.12ポイントも値上がりしたのだ。通常、225種平均株価はTOPIXの指数を15倍したものに該当する。つまり水曜日は、日経225種平均株価なら450円もの大幅値上がりしてよかった。なのに、値上がり幅はたった9円強だった。
 

ソフトバンクグループの大幅下げ​
 これは、日経225種平均株価に大きく影響する値がさ株、特にソフトバンクグループ(SBG)の大幅値下がりが、日経225種平均株価の足を引っ張ったのだ。
 SBGの株価は、週末にかけて下げ足を強め、水曜日は前日比397.0円(10.9%)下げ、木曜日は同559.0円(17.2%)の強烈な下げで、ついに3000円を割って2687.0円で終わった(​グラフ​)。

 

 2月12日の今年の高値5871円から僅か1カ月半で半値以下になった。
 携帯電話のソフトバンクを手放し、投資会社となったSBGは、同社と傘下のビジョンファンドの抱えるスタートアップ企業などの株価が、世界株安で含み損に転じ、今や事業継続性すら危ぶまれているからだ。
 したがってSBGの株価反転は、世界の株価次第、もっと言えば武漢肺炎の収束次第と言える。
(この項続く)​

 

昨年の今日の日記:休載​