​ 今年9月にスターリニスト中国で不法に拘束されていた北海道大学法学部の岩谷將教授が15日、解放され、札幌の自宅に戻った(写真=岩谷教授)。

 


 

北大、岩谷教授解放、だがスターリニスト中国は今後も監視​
 岩谷教授は今年9月、中国社会科学院から招待され北京で研究発表をした後、スターリニスト中国当局に拘束されていた(この経緯については、19年10月23日付日記:「北海道大学教授がスターリニスト中国により北京空港で拘束、外国人を平気で捕まえる恐怖国家」を参照)。
 岩谷教授の件は、安倍首相が、今月4日にタイで首相の李克強との、先月に国家副主席の王岐山との会談で、早期解放を求めていた。来年の習近平の訪日を控え、また日本の中国研究者の間からも解放の声が高まり、スターリニスト中国も長期拘束を続けられなくなったと見られる。ただスターリニスト中国当局は、解放を「保釈」と説明している。
 今後も監視を続けるぞ、という脅しだ。岩谷教授は、学者として最重要の言論・出版の自由に手枷・足枷をはめられたことになる。研究者として致命的だ。
 また岩谷教授が解放されたとしても、スターリニスト中国にはまだ9人の日本人が長期拘束されている。
 

GAFAなども甘く見える徹底した個人情報収集​
 それにしても恐ろしい国である。中国社会科学院という国家学術機関から招待されても、スパイ罪で捕まるのだ。おそらく岩谷氏は、以前からスターリニスト当局から監視されていて、メールやSNSを盗み見られた末、スターリニスト中国国内におびき寄せられて拘束されたのだろう。
 日本に居ても、日本人でも、スターリニストから監視されている。僕など、とうてい中国に行けない。行けば、拘束、逮捕・起訴の危険性は極めて高い。
 GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のアメリカのIT巨人がユーザーから個人データを無制限に集めていることが、EUやアメリカで問題になっているが、スターリニスト中国ではそれをはるかに超えた個人情報の収集が行われているのだ。
 

すべての個人が特定されている恐怖​
 僕らが日常的に経験することだが、何かにアクセスすると、前に観たサイトの商品広告などがしつこく出てくる。前に観たサイトの情報が、プラットフォーマーに収集されているからだ。うるさいとは思うが、逆に便利に思える時もある。功罪、相半ば、というところか。
 ところが国家がすべてネット空間の個人情報を集めているスターリニスト中国では、そうも言っていられない。街角に隈無く設置されている監視カメラから、顔認証までされて当局に収集されている。ちょっと赤信号を無視して横断歩道を渡っても、スピーカーで名前まで呼ばれて注意・警告される。さらに民主活動家なら、どこで、誰と、何をしているかまで、追跡される。
 

​​地図上に個人の借金未返済者が表示される機能まで​
 さらに個人情報の流用は、際限なく拡大されている。いささか古いが日経新聞の去る2月13日付朝刊1面のコラムによると、河北省・石家荘に住む結婚を控えたある市民は、新居を探すべくある住所をスマホの「老賴地図」に入力した。
 すると新居に予定していたその住所の半径500メートルに住む借金未返済者が近くに100人以上もいることが表示された。しかも由々しいことに、そのリストは、個人名の他、住所と借金額まで表示されたという(写真)。

 


 その市民は、それを観て、住環境が悪い、と別の場所を探すことにしたという。
 「老賴地図」は、この1月にSNSのネット大手「テンセント」が対話アプリ「徴信」が追加機能として提供を始めた。そしてその個人情報を提供したのは、なんと河北省の裁判所だという。裁判所が、欧米なら人権問題になりそうな超個人情報までネット空間に出しているのだ(写真=街角にも掲示される)。

 

 

 そのうち若い頃のちょっとした微罪も、晒されるようになるかもしれない。それも官主導で。​​
 

不意に訪れた外国人記者の来訪まで訪問先に連絡​
 さらについ最近の8月2日付同紙のコラムでの記者報告も、慄然とさせられる。
 その記者は、広東省のある村を訪ねたところ、その村役場の幹部に「外国の記者が来るかもしれないと連絡を受けていました」と言われたというのだ。
 その村には、他の取材の後についでで訪れただけだった。しかも直前まで、訪れるかどうかも決めていなかったという。ところが事前に来訪を当局に把握されていた。
 高速道路の通行履歴、監視カメラの映像、記者の持つスマホの位置情報などがスターリニスト中国の当局のすべて集められ、そこから人工知能を使って記者の訪問先が割り出されたらしいという。事前に村役場の担当者に当局から連絡が行き、「下手なことはしゃべるな」と釘を刺されていたのだろう。
 これは、恐ろしい話だ。
 

共感できる香港市民の抵抗​
 スターリニスト中国の監視の目は、どこまでも厳しく、細かくなっていくのか。ジョージ・オーウェルの近未来風刺小説『1984年』をとっくに越えるほどの事態が、今、何の歯止めも加えられないままに隣の全体主義国家で進んでいるのだ。
 この6月まで自由だった香港市民の中国共産党支配への恐ろしさ、抵抗の真剣さが理解できるだろう。

 

昨年の今日の日記:「宿主のケヤキに住まいの虫こぶを作らせ、その内部に快適さのために排水用の微小毛を生やさせていたアブラムシ」