​ アメリカのグーグルが、量子コンピューターで世界最高速のスパコンをもはるかにしのぐ超々高速計算に成功した、とイギリスの科学誌『ネイチャー』10月23日号に発表、翌24日、記者会見を開いて成果の内容を明らかにした(写真=グーグルの量子コンピューターの1つとスンダー・ピチャイCEO)。

 


 

0から1のすべての値を使って同時処理​
 それによると、最先端のスパコンで約1万年(!)かかる乱数を作る問題を、同社の開発している量子コンピューターがわずか3分20秒で解いたという。計算性能は約15億倍と、まさに「量子超越」の達成である。
 これまで量子コンピューターは、人や車の流れを基に最速のルートを一挙に探し出すなど、複雑な計算は苦手で、それを可能にできるのは、0か1かのどちらかで表す情報単位で1つずつ順番に処理していく従来型コンピューターではなく、0と1の間のすべての値を使って同時に処理できる量子コンピューターしかない、と考えられていた。
 

今年最大の科学技術ニュース​
 これが可能になれば、複雑な計算に基づく気象予測や創薬のためのシミュレーション、交通予測、金融リスクなど生活が画期的に変わる。しかし可能性ではなく、実際に量子コンピューターの性能を明らかにした例はこれまでになかった。
 グーグルは、それを初めて実証した。
 おそらく今年の科学技術としては、今年4月のブラックホールの画像作成成功と並ぶ、最大のニュースである。開発チームを主導した研究者は、数年後にノーベル物理学賞の受賞の栄に浴するだろう。
 

​通信や金融の秘匿を保証する暗号が破られるリスクも​
 しかし、あらゆる技術には光と影がある。量子コンピューターも、実現したあかつきの最大の不安は、これまで通信や金融工学などに利用されていた難しい暗号が一瞬にして解かれてしまう、というものだ。実際、この報が流れると、暗号資産であるビットコインなどの価格が一挙に10%以上も下落したという。
 量子コンピューターにかかれば、今のビットコインなど盗むのも容易になるからだ。
 ただ幸いにして、各国の最先端研究者の開発努力にもかかわらず、実用化にはまだ数十年単位の時間がかかるという。グーグルの発表は、1つの例での実証であった。

 

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