騒がしい高校野球夏の大会も終わり、高校生はいよいよ新学期に備える日々だろう。
 その甲子園夏の大会だが、今大会は大味の試合がやたら目だった。

 

48試合で68本ものホームランが飛び交った
 2桁得点の入った一方的な試合が多く、特に準々決勝以降の7試合のうち、6試合はそうしたゲームであった。0対0の息詰まる投手戦という高校野球本来のトーナメント戦生き残りをかけた好試合は、決勝、準決勝であっても夢のまた夢である。
 2桁得点試合を象徴するのが、今大会のホームラン数「新記録」である。実に全48試合で68本と、昨夏の37本からほぼ倍増した。
 個人でも広陵の中村奨成君(写真)は、PL学園高の清原の記録を破る大会6本の新記録を打ち立てた。

 

 

出場校の8割は私立野球学校
 だが僕は、この大会を1度もテレビでも観たことはなかった。かつて転勤で甲子園球場の近くに住んだ時、夏も春も無料外野席に観に行っていたことがあるが、最近はすっかり興味を失っている。
 出場校が、かつてのような郷土代表とはとても言えない私立野球学校ばかりだからだ。出場49校のうち実に80%が私立高校なのだ。公立高校は、たった8校しかなかった。
 さらにベンチ入りの選手18人のうち、県内中学出身者は6割しかいない。つまり県外の「野球留学」組みが4割を占めるということだ(ただし首都圏・関西圏では受験校私学に他都府県中卒生が進学するのはざらだから、通学できる範囲で隣都府県に行くのは差し支えはなく、これは差し引く必要があるかもしれない)。

 

熊本代表の秀岳館高校は県内出身者はたった1人
 ワースト1は熊本代表の秀岳館高校で、熊本県出身者はたった1人、あとは京都府4人、福岡県4人、大阪府3人……など、野球強豪府県出身者だ。これで熊本県代表なのか? 関西広域圏代表校、と言った方が適切だ。
 石川県代表の日本航空石川は県内中学出身者はたった3人だが、兵庫県から8人、大阪府から2人などを招いていた。また鳥取県代表の米子松蔭も、県内中学出身者3人に留まるのに、大阪府7人、京都府3人、奈良県2人、兵庫県2人と、「関西代表」である。
 これで、郷土代表とはとうてい言えまい。

 

「プロ化」も一段と進む
 甲子園大会が、事実上の私立野球学校全国大会になっていることと表裏一体の関係は、高校野球の「プロ化」である。それが、著しい打高投低現象を生み出す。
 例えば投手の強化は限界があるが、打者ならとことん打ち込みをさせればいい。それには素晴らしい設備をふんだんに備えればいい。
 私立強豪校なら、ナイター設備は当たり前、屋根付き雨天練習場、高度なピッチングマシーン、そして他県からスカウトした球児用に豪華な寮も用意している。筋トレにも勤しむ。
 打撃力が向上するのも、当然だ。今大会を観た人によると、あの打球が、と思える球でもスタンドインしてホームランになった例をいくつも観たという。
 力任せにスタンドに放り込む高校生。まさにプロ並み、である。

 

何でも批判の朝日新聞は礼賛一色、北朝鮮の機関紙か
 私立野球学校全国大会になっている現状は、様々な歪みを生んでいるが、夏の主催者の朝日新聞も春の主催者の毎日新聞も、特段、問題視もせずに放任している。
 特に朝日新聞社は、日頃の批判精神などかなぐり捨て球児の検討を褒めそやし、礼賛一色の紙面だ。社長は運動着姿で挨拶で、また褒める。
 まるで北朝鮮ならず者集団の党機関紙「労働新聞」の金正恩礼賛そっくりである。朝日新聞が時に「ちょうにち(北朝鮮と日本)新聞」と揶揄されるのも、ゆえなしとしない。
 こんな礼賛記事は読むに絶えず、例年は高校野球紙面はほとんどパスするが、今年は特にそうだった。
 朝日新聞は、安倍首相叩きに加計学園問題を利用しているが、もし加計学園の経営する岡山理科大付属が岡山県代表で出場し、甲子園でも勝ち進んでいたらどうしただろうか、とふと意地悪な気持ちになった。

 

昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(63):ゴンダールの空港で観たテオドロス2世像とアビシニアオオカミの絵」