ゴンダール・アトセ・テオドロス空港で、僕たちはプロペラ機に搭乗した。小さな空港なので、搭乗口から直接、飛行機まで歩いて行く。

 

◎広大なエチオピア国土の往来は飛行機が効率的
 空港ビルの表面は、ゴンダール城を連想させる石積み模様で装飾されている(写真)。


 僕たちが乗るのは、アジスアベバからバハルダール空港までもプロペラ機だった(写真)。


 エチオピアには、アジスアベバ市内を除いて鉄道はない。日本よりずっと広い国土(約113万平方キロ)を行き交うには、空路が最も効率的だが、まだ経済的に離陸していないので、飛行機利用者すら限られる。ジェット機を導入するより、少人数輸送のプロペラ機の方が合理的なのだろう。

 

◎アビシニア高原は裸の山岳に深い峡谷
 下界を見下ろすと、ゴンダール離陸して間もなくは、茶色の背景にパッチ状の緑が見えているが、しばらく茶一色の世界が広がる(写真)。木がほとんど生えていないので、稀に降る雨で大地が削られ、深い峡谷を形成している。アビシニア高原の相変わらずの風景である。

 ここもかつては(旧石器時代末までは)緑が覆っていたかもしれないと思うと、エチオピア全土が失った表土はどれほどだったか想像もつかない。

 

◎2つの世界遺産を結ぶインフラがない
 再びパッチ状に緑が見え出すと、ラリベラである(写真)。


 約30分の飛行で、「エチオピアのエルサレム」と呼ばれるラリベラに着いた。プロペラ機で30分ほどだから、ゴンダール-ラリベラ間の距離は大したことはない。地図で見ると、150キロもないように見える。もし舗装された道路があれば、2時間弱で行ける距離だ。搭乗まで時間をくってわざわざプロペラ機に乗ったのは、その道がないのだろう。エチオピアの2つの世界遺産の地を結ぶ道がない――エチオピアのインフラは予想以上に貧弱なようだ。
 ラリベラは、今回のエチオピア旅行で、僕の最も訪れたい名所ナンバーワンであった。ここには、硬い岩をくり抜いた岩窟教会がいくつもある。昔、アフリカ考古学の本を読んで、心密かにいずれは訪れたい、と期した所だ。

 

追記 アフリカのインフラ整備の道険し
 ケニア、ナイロビで8月27日~28日に安倍首相も出席して開かれたTICADⅥ(第6回アフリカ開発会議)。今回は、初めてアフリカで開かれ、日本のインフラ開発援助や人材育成などが話し合われたが、これまで南部アフリカ(南アフリカ、ジンバブエ、ボツワナ、ザンビア)、エチオピア、そしてモロッコを観た限り、南アフリカとモロッコを除くと、そのインフラの貧弱さは目を覆うばかりで、アフリカ大陸全体が経済離陸するのは大変だという感がする。

 

◎晴天率の高いエチオピアには送電網の不要なコミュニティー・メガソーラーを
 特にエチオピアは、アフリカの中でも最貧国に属する。首都アジスアベバを出ると、農村部の大半に電気が来ていない。もちろん水道もない。道路も未舗装の所がほとんどだ。初等教育は午前と午後の二部制で、農村部ではその学校にすら通っていない子どもが半数程度いる。
 発電所を建設しても、地方を電化するには、膨大な送電線網が必要となる。幸い、エチオピアは乾燥した国なので晴天率が高い。こういう国にこそ、集落の近くの砂漠にメガソーラーを大量に造り、一部を蓄電池に貯めて、農村の電化に利用したらいい、と思う。
 保守管理は、最初は何カ所かのソーラー施設を日本人がまとめて担うにしろ、地元の優秀な若者を助手に雇い、技術を教えて少しずつ業務を委譲していけばいい。
 日本のアフリカ支援は、そうしたきめの細かさが求められる。
 エチオピアの、特に農村部を観て、つくづくう思う。