インドネシア、フローレス島のリアン・プア洞窟で2003年に発見されたホモ・フロレシエンシスは、その推定年代が7万~2万年前という年代的新しさにもかかわらず、1メートルほどの低身長・400ミリリットルほどの小さな脳など多くの原始的特徴を持っていることで、古人類学の常識外れの人類であった。


一時は未発見のホモ・エレクトス以前のホミニン起源が有力だったが
 小さな島でどうやって個体群を維持できたのか、どうして独自の進化を遂げたのか、多くの謎が尽きないが、彼らの出自も大きな謎だった。
 一時はホモ・エレクトスよりも小さな脳・身体、脚が短く相対的に腕の長い形態などを根拠に、ホモ・フロレシエンシスはホモ・エレクトス以前の未発見のホミニン(人類)を祖先とするとするという説が有力だった。
 その後、2011年以降の国立科学博物館の海部陽介氏らのチームが頭蓋形態の研究などによって、ジャワ原人が小さな島に隔離された島嶼化によって矮小型に進化したとする見解が有力になった。


ホモ・フロレシエンシス復元

ホモ・サピエンス(左)とホモ・フロレシエンシス


現代人、化石人類の歯と比較し、現代人より原始的な特徴9つを同定
 今回、同じ海部氏らのチームが、人類の進化的変化の中で最も保守的である歯の形態を詳細に研究し、電子科学誌『PLOS ONE』11月18日号に発表した。
 チームがホモ・フロレシエンシスと比較したのは、世界各地の490個体の現代人の歯、さらにアフリカのA.L.666-1標本やオモ(G/H層出土)など早期ホモとアフリカ、ドマニシ、アジアのホモ・エレクトス(新古のジャワ原人、周口店標本など)の化石人類の歯などであった。
 その結果、フロレスエンシスの歯の形態的特徴で、現代人の歯よりも明らかに原始的であるものを9つ同定した。そのうち7特徴は、犬歯と小臼歯のものだった。ここからも、フロレシエンシスが現代人の病体であるという極少数派の主張は覆される。


ホモ・エレクトス以前の人類とは似ておらず、ジャワ原人に最も近い
 さらにフロレシエンシスの歯の原始的特徴を他の化石人類と比較すると、その特徴は175万年前より新しいホモ・エレクトスと似ており、ホモ・ハビリスなど初期ホモと共有するものは1つもなかった。また175万年前より新しいホモ・エレクトスの中では、ジャワ原人の歯と最も良く似ていた。
 この一方、フロレシエンシスの大臼歯は前後に短く、下顎大臼歯の咬頭の数が5つから4つに減少している点では、ホモ・エレクトスよりも現代人に似ていた。
 頭蓋研究などの成果も含め、これらのことからホモ・フロレシエンシスはジャワ原人から進化し、しかもその進化はモザイク的なものであったことが明らかになった。一見、猿人的に見えた原始的諸特徴は、ジャワ原人の島嶼化によって獲得されたものだったのだろう。
 写真は、ホモ・サピエンス(左)と比較したホモ・フロレシエンシスの頭蓋と、復元模型。


昨年の今日の日記:「ロシア通貨のルーブルが底抜けの大暴落はツァーの如きプーチンを痛撃」


追記 アメリカのFRBがゼロ金利解除
 アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は、16日、リーマンショック後に7年間続けてきた実質的ゼロ金利を解除し、0.25%の利上げを行った。利上げは、9年半ぶり。
 国際金融市場では、今回の連邦公開市場委員会で利上げを行うことは既定の事実とされ、9月の同委員会で利上げを見送られたことへの不全感からのあく抜け感が広がり、ニューヨーク初め、世界の株式市場は好感、大幅高で利上げを受け止めた。
 FRBは、今後も利上げを続けていくが、それは年に4回程度、トータル1%程度の緩やかなものに留まるとも見ている。
 リーマンショック後の超金融緩和局面は転機を迎えたが、世界で唯一とも思えるアメリカの堅調な景気は、穏やかな利上げで今後も持続していくと思われる。