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 正月三が日は、例年のように北アルプスを中心に冬山遭難者が相次いだ。マクロ的に地球の温暖化が進んでいるといっても、ミクロの気候では冬は相変わらず厳寒だ。軽登山を愛するリブパブリも、とても怖くて冬山など行けない。

劔岳と雄山の雪渓の氷塊を観測
 さて温暖化が進み、世界各地で氷河の後退が報告されている中で、その北アルプスに氷河が存在することがほぼ確認された。昨年末31日付日経新聞に出ていた。もちろん日本で初めての氷河の確認である。
 実は、北アルプス立山連峰に氷河が存在するらしいことは、立山カルデラ砂防博物館(富山県立山町)の福井幸太郎・学芸員が前から注目し、観測していた。
 氷河というのは、高山のただの雪渓とは異なる。降った雪の表面部分は残っても、一部が溶け残って万年雪となり、そこに毎年降り積もる雪の重みで圧密され氷塊となり、全体が低地に向かって徐々に流れ下るものを言う。
 福井氏が今回確認したのは、劔岳(標高2993メートル)の雪渓に残る2つの氷塊と立山連峰の主峰・雄山(標高3003メートル)の1つ氷塊だ。前者の氷塊の長さは、約900メートルと約1200メートル、後者は約700メートルで、厚みはいずれも30メートル以上ある(写真上=劔岳の雪渓)。

月間10~30センチ動いていた
 これらの氷塊が下流に向かって動いていることを確かめるために、雪が溶けきって、しかも本格的に新雪が降雪する前の9月から10月に、氷塊表面にポールを打ち込み、それにアンテナを設置してGPSで測定していた。その結果、劔岳の2つは月間で30センチほど、雄山のもので10センチ前後、流れ下っていることが確認されたという。
 もちろん極地域や5000メートル級の高山に発達する本格的氷河に比べれば、遅い。世界の「一流」氷河には1日数メートルもの速さで流れ下るものもあるし、長さも普通は数キロに達する。
 これらの氷河は、それでも次々と降る新雪が溶けずに積もる一方なので、常に下部の雪が圧密されて氷となって、下流で崩壊して消耗する分を補っている。
 劔岳の実際の雪渓は、まだ見たことがないが、印象深かったのは邦画『劔岳 点の記』(09年公開;木村大作監督)で見たものだ。この映画は、CGやヘリ撮影など一切用いず、俳優が実際に登った実写、ということで話題になった(写真下)。

これまでの極東氷河の南限はカムチャツカ半島だった
 日露戦争の終結したばかりの頃、唯一残された国内の測量空白域を潰すために、現在の国土地理院の源流である陸軍参謀本部陸地測量部の測量技師・柴崎芳太郎らが未踏峰とされてきた剱岳への登頂と測量に挑む物語である。悪天候と急崖、あちこちにクレバスが口を開ける雪渓の困難さに何度も跳ね返され、ようやくに登頂を果たす感動の物語なのだが、フィナーレのどんでん返しもまた印象に残る。日本では白眉の山岳映画だと思う。
 柴崎らが挑んだ雪渓も、氷河であったのかもしれない。
 ちなみにこれまで日本には氷河が存在しないとされ、極東地方の南限はカムチャツカ半島だとされてきた。
 ただ、この確認も淡雪のごとき存在かもしれない。温暖化効果ガスの増加で拍車がかかる地球温暖化で、北アルプスの温度も上昇していけば、そのうち供給量が消耗する分を補えなくなり、消滅してしまうだろうから。

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