kawanobu日記/福島第1原発から極微量に検出されたプルトニウムとは;ジャンル=物理学、社会 画像1

 浜の真砂は尽きねども世に原発頭痛のタネは尽きまじ――である。
 これまでヨウ素131やセシウム137など、放射性の核分裂生成物が検出されていたから、28日に東京電力が福島第1原発敷地内の土壌からプルトニウムを微量検出したと発表しても、特段に驚きはない。

プルトニウムの恐怖を煽ってどうするの
 ただ、世の中にはことさらに恐怖を煽る人たち(センセーショナリズムに走る低級メディア)がいる。それに迎合するように、昨日朝のNHKニュースではトップニュースとして大がかりに扱われた。
 毒性が強い、半減期が長い、と恐怖を煽るように伝え、ただし検出されたのは極微量で、1950年~60年代に大気圏内核実験でばらまかれたプルトニウムと量はほとんど同じレベル、健康に影響は及ばない、と断るのだが、ほとんどの人たちは後段を聞かず、また怖い放射能がと慌てて、食品の風評被害と水の買い占めに走るのだろう。
 だから、本日は少しこのプルトニウムについて述べ、「解毒剤」としたい。

確かに猛毒、半減期は半永久的だが
 プルトニウムは、確かに生物体にとって好ましくはない。なぜなら天然にも極微量だが存在するが、本当に極微量だ(ウランの1兆分の1程度)。天然のウラン238が中性子を捕獲して生成されたと考えられるが、それだけに生物体の進化の過程でほぼ存在しなかったので、確かに化学的に毒物である。
 半減期がとてつもなく長いことが、同じ核分裂生成物であるヨウ素131やセシウム137よりもやっかいである。それだけ放射線に曝される時間が永く続く。例えば主なプルトニウム同位体であるプルトニウム239の半減期は、2万4000年以上もある。ヨウ素131が約8日、セシウム137が約30年の半減期からすれば、半永久的な長さである。ちなみに2万4000年とは、これを過去に当てはめれば世界は旧石器時代で、単純な農耕すら行われていなかった。
 そしてアルファ線(強力な放射線である)を放出して、ウラン235に変わる。アルファ線とはヘリウム原子核のことなので、電子が実体であるベータ線よりも「大きい」。このため紙1枚でも、遮蔽できる。

冥土の王の名前にたじろぐが、細片を呼吸しなければ……
 重金属であるから常温では飛散しない点、放射線防護が容易である点は(肌を覆えれば服1枚で完璧に遮蔽できる)、同じ核分裂生成物であるヨウ素131やセシウム137よりはるかに取り扱いやすいと言える。例えばヨウ素131は昇華性があり、セシウム137は常温で液体だから蒸発という形で、環境に飛散しやすい。
 プルトニウムが、冥界の王「プルートー」から命名されたから、それだけで怖じ気づくが、強力な毒性を憂慮されるのは細かい破片を吸い込んだ場合である。肺に留まり、ここで強力なアルファ線を半永久的に照射し続ける。そのため「晩発障害」として肺がんになる懸念が高まる。
 しかし過去おそらく100回以上も実施された米ソ、フランス、イギリス、中国の大気圏内核実験でも、具体的な晩発障害は報告されていない。むしろ怖いのは、原発従事者が壊れた核燃料を扱う時とか産業利用の時の従事者だ。一般人には、ほとんど害はない、と断定できる。
 ヨウ素131やセシウム137の高濃度の検出でうかがえたように、プルトニウムの検出は、おそらく2号機の核燃料が完全にメルトダウンを起こし、それが圧力容器外から環境中に飛散されたことを物語る。だから炉心底でドロドロに溶融した核燃料を何とか封じ込める必要性があるのは明らかだ。
 これを封じないと、チェルノヴイリ型大事故につながる懸念が拭えないからだ。

半減期の異なる3つの同位体を検出
 最後に述べておきたいのは、前述のようにこれまで多数の核実験で環境中に排出されたプルトニウムと同レベルなのに、どうして福島第1原発から飛散したと見分けられたのか、である。
 リブパブリも、それが不思議だった。しかしよくよく考えて、理由が分かった。今回検出されたプルトニウムは、238、239、240の質量の異なる同位体3種だが、それぞれ半減期が異なるのだ。それぞれ約88年、約2万4000年、約6600年である(元素名の次の数字が質量である)。
 すると新しく生成されたプルトニウムと、過去の核実験で生成されたプルトニウムとは、年代が違うために構成比が異なる。つまり福島第1原発由来の新しく生成されたプルトニウムに「指紋」があるようなものなのだ。その「指紋」から、原発敷地内の土壌のプルトニウムが原発由来の物だと断定できたのだろう。

2号機から漏れ出た?
 なお、それが何号機由来かまでは分からない。疑わしいのは、プルトニウムをウランと混ぜた核燃料を燃やすプルサーマル炉である3号機だが、ウラン燃料の中でも、核燃料のウラン235が核分裂していく際に、燃料にはならないウラン238が余分な中性子を捕獲してプルトニウムに変わっている。メルトダウンがほぼ確実の2号機から漏れ出たと考えても、いっこうにおかしくはない。
 以上から、軽薄なメディアのセンセーショナリズムに流されず、軽挙妄動は慎まれることをお願いする次第だ。吸引しないようにと、間違ってもマスクの買い占めなどに走らないように。
 写真は純度99.96%のプルトニウム。重さ5.3キロ、直径は約11センチで、これ1つで長崎型原爆1個を作れる。北朝鮮が核実験に使ったのもプルトニウムだが、これよりはるかに純度は低かったと見られる。

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