kawanobu日記/金ジョンウン、3代目襲名、ならず者国家の血族人事のデタラメ 画像1

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 ならず者国家北朝鮮が、「社会主義国」の名目のもと、3代続く世襲を明確にした。28日、会期たった1日だけの朝鮮労働党代表者会で、金正日の3男の金ジョンウン(中国紙によると、漢字では「金正銀」と書くようだ)が、金正日の正式な跡目を継ぐことが決まったのだ(写真上=金日成の像を背景にした、代表者会に出席した金正日)。

盗人女の金正日の実妹が党政治局員に
 「手続き」は以下のように進んだ。まず党代表者会で新たに党中央委員124人と同候補105人が選出されたが、金ジョンウンはいきなり中央委員に選ばれた。その後に選出されたばかりの中央委員会総会が開かれ、党中央軍事委員会の新設された副委員長に金ジョンウンは抜擢された。委員長は金正日だから、事実上のナンバー2である。昨日早朝4時の、北朝鮮の朝鮮中央通信が伝えた。なお中央委総会では、政治局常務委員5人、政治局員17人、同候補15人も選ばれている。
 金ジョンウンの後見役とされる叔母(金正日の実妹)の金敬姫(前日に女性でただ1人の人民軍大将に引き上げられた)は、その政治局員に就いた。金敬姫は、党軽工業部長だったが、政治局員という首脳に格上げされたわけだ。北朝鮮国内で地位を利用して特権層向けの個人ビジネスを営み、脱北者に軽蔑されている盗人女だ。
 その夫の張成沢は、党中央軍事委員兼政治局員候補になった。ただ亭主より女房が、政治的序列では上位になったわけで、儒教の伝統の強い北朝鮮で珍事とも言える。まさに血族政治の典型である。

若くして早くもメタボ症候群とされる金ジョンウン
 44年ぶりに開かれたこの代表者会は、金ジョンウンを後継者であることを決めるだけの大会だったことが、これで判明したわけだ。8月27日、今年2度目の訪中した金正日は吉林省の長春で胡錦涛と会談したが、この時、胡錦涛に金ジョンウンの後継を通告したのだと思われる。だから病躯をおして、わざわざ異例の2度目の訪中をしたのだろう。
 さて、前述の金ジョンウンの軍事委副委員長就任などの事実は朝鮮中央通信が報じたが、肝心の金ジョンウンの写真も人となりも紹介されなかった。そもそも金ジョンウンの年齢すら正式に伝えられていない。多くの情報から27歳とみられるが、死にかけの老人ばからから成る北朝鮮の党・軍幹部の中では異例の若僧である。このため日韓のメディアは、スイス留学時代の金ジョンウンと見られる少年の写真を流すのみ、だ(写真下)。バスケットが趣味で強気の勝負をする、というから、金王朝のDNAである残酷さは変わらないかもしれない。
 金王朝のDNAと言えば、メタボ体質も受け継いでいるようで、身長175センチの割には体重は90キロ超という。若いのに、高血圧と糖尿病を患っているという情報もある。大部分の国民が餓死寸前の苦しい生活なのに、金王朝の一族と取り巻きの特権層だけは、成人病や美食病にかかるほど飽食しているという国とは、いったい何なのだろう。

党大会でない代表者会の理由は?
 そもそも全能の独裁者の治める国と党なのに、党規約すら無視されている。
 党規約では5年に1回開くと規定されている党大会は、80年以来、30年間にわたって1度も開かれていない。今回のような重要人事は、党大会を開き、そのもとで新中央委員を決め、それから何日も礼賛ばかりの議論をして……という手続きを踏むはずだが、それすらせず、たった1日だけの臨時的、便宜的な会合である代表者会でお茶を濁した。
 今回、対中国など友邦に国際的に説明するために金ジョンウンへの後継を決める必要があり、それには正式に中央委員と党軍事委副委員長に就けなければならなかったからなのだが、法手続無視の完璧な独善・独裁王朝となっていることを示した。
 金王朝独裁体制が定まっているから、党大会など金正日が開こうと思えば簡単に開けるはずだ。なのに、党規約まで平気で無視している。思うに党大会なら、全国の地方単位や職場単位で代議員を選出しなければならないが、それが煩わしいのだろう。あるいは代議員を選出するほど、国内に余裕もないのかもしれない。だから代表者会に出た「代表者」の人選も、いいかげんだったと思われる。
 北朝鮮は労働党支配の社会主義国では断じてなく、金王朝による帝国なのである。

ラスト・エンペラーは不可避
 3代にわたる世襲体制を正式に決めたが、金ジョンウンはおそらく短期の、金王朝の「ラスト・エンペラー」で終わるだろう。すでに何度か述べたように、金正日が死亡したら、中国はおそらく介入する。こんな若僧に失敗国家を復興させられるわけはない、と胡錦涛も確信しているに違いないからだ。
 鴨緑江の向こう岸で内乱や経済混乱が起これば、難民が押し寄せたりと、東北3省に多くの脱北者、朝鮮族中国人を抱える中国に必ず混乱が波及する。それを、スターリン主義者が容認するはずはないので、その芽は即座に摘まれると考えられる。混乱しなくとも、金正日時代のように自分たちの意に沿わない政権が続くことを容認しないだろう。
 尖閣諸島問題の手段を選ばぬ強権的対応から見て、北朝鮮と韓国の統一はない、とリブパブリが考えるのは、以上の理由からだ。歴史的にも朝鮮半島北半部は、古代中国の地方政権である渤海国の領土だったから、東北3省から東北4省になってもスターリン主義者なりの論理は通る。北朝鮮は独立を失い、「朝鮮自治区」として中国に編入されるのだ。
 ただアメリカと韓国が、全面的経済制裁を掲げて、あるいは武力介入も辞さずと、中国の介入を断固として容認しないという強い姿勢を示せば、それを防げるかもしれない。
 その場合、北朝鮮の民主化は、ルーマニア型になる、と思われる。それは、また明日へ。

昨年の今日の日記:「地球温暖化の一服化を示すデータと遅れて現実化しつつある北極海航路の商業化の相克」