kawanobu日記/ボケ菅の短慮が東アジアの動揺のパンドラの箱を開けた。ロシア、モンゴル、韓国は…… 画像1

 憂鬱な昨日、一昨日から時間がたち、多少は思考を働かせる余裕が出来たのは嬉しい。思うのは、北朝鮮に拉致された被害者家族のように、「北京の虜囚」となったフジタの社員4人のご家族の心境だ。心から同情する。

ならず者は安保理常任理事国
 スターリニスト国家中国による4人の拘束の報をニューヨークで聞き、泡をくったボケ菅は、今後の解放交渉の段取りなどまるで考えずに、公務執行妨害の中国人船長の釈放を検察に命じた。
 本来なら、中国人船長を釈放するに際し、北京と交渉し、4人と引き換えなら釈放すると交渉すべきだった。それも一切せず、慌てふためいての25日未明の釈放の後、甘ちゃんのボケ菅政権がスターリン主義国家から突きつけられたのは、不当極まる「謝罪」と「賠償」要求である。
 むろん全く筋の通らない要求だが、不法拘束されている4人の人質を前に、この要求を突っ張りきれるだろうか? もはや、相手にすっかり足元を見られている。世界のメディアは日本に同情するだろうが、相手は安保理常任理事国である。国連でも、解放決議はできないのだ。

最高刑死刑の脅しに耐えられるか
 4人が逮捕、起訴されれば、スパイの容疑だから最高刑死刑が待ち受ける。中国の裁判所は、最高人民法院(最高裁)も含めて共産党の指導下にある。胡錦涛の一存で、どのような刑も宣告できるのだ。腰抜けでアマチュアのくせに、自民党政権には強硬だったポピュリストの民主党政権が、「謝罪」と「賠償」要求を拒み続けられるとはとうてい思えない。スターリニストは、この際、一気に尖閣諸島との交換という荒技提案をしてくる可能性も考えておく必要がある。
 突然現れたこの中国リスクに、中国に進出している日系企業の多数の日本人社員とその家族もまた、拙劣な素人外交のゆえに怯えているのではないか。

「韜光養晦」をかなぐり捨てた経済大国中国にロシアは今
 日本のこの歴史的な「白旗降参」を今、世界は懸念をこめた複雑な思いで見つめている。その1番手は、ロシアではないかと思われる。帝政ロシアとその後のソ連時代の中ソ対立を通じて、後れた中国にさんざん暴虐の限りを尽くしてきた。その最大のものは、帝政ロシア時代に清朝から奪い取った広大な極東と沿海州の領土である。
 ソ連時代からの長年の係争関係にあった中ロ国境問題は、04年に最終的な中ロ国境協定が結ばれて解決した。この協定で、大ウスリー島を半分ずつに分けるなど、係争地面積をほぼ2分割する形で領土問題は終わったことになっている。
 しかしそれは、経済力では劣っても核戦力では中国全土を完全に破壊できる能力を持つ圧倒的な核大国のロシアに対しての、中国の時間稼ぎの印象が強い。かつて改革・開放を唱えて中国の経済発展を目指した独裁者、鄧小平は、「韜光養晦(能力を隠して時間を稼ぐ)」を唱えて、ひたすら中国の存在を国際社会に目立たせないようにしてきた。外国との紛争を起こせば、外資が逃げ、経済発展が阻害されると考えたからだ。

沿海州と極東ザバイカルの返還要求も
 しかし21世紀になって年率10%前後の経済成長を果たし、経済力とそれに裏付けられた海軍力でアジア最強の大国となった中国は、もはや「韜光養晦」をかなぐり捨て、あからさまなならず者国家として振る舞い出している。
 もし中国のスターリン主義政権があと10年続くとすると(続かないとは思うが)、圧倒的経済力とそれで裏付けられた軍事力の急拡大で、アメリカとの関係で核軍縮に向かわざるをえないロシアに肩をならべる実力を持つにいたるだろう。
 その時、極東ロシアでは移入してきた中国人に人口でも劣勢に立たされているはずだ(現在、極東でロシア人人口は減少している)。その時、清朝時代に北京条約などの不平等条約で帝政ロシアに奪われた沿海州や極東ザバイカル地方の返還を要求するようになるに違いない。中国人の間には、帝政ロシア時代に広大な領土を切り取られた怨みが沈殿している。イギリスが香港、ポルトガルがマカオを返還し、ドイツや日本はとっくに植民地を撤退しているのに、ロシア一国のみが清国期の領土を返還していない形なのだ。

20世紀初頭まで清国、中華民国領だったモンゴルの不安
 モンゴルも安泰ではいられない。20世紀初頭まで清朝と、辛亥革命で後継国家となった中華民国の領土だった外モンゴルは、1921年、モンゴル人民族主義者と共産主義者がソ連赤軍の軍事的支援でモンゴル国として独立を宣言、3年後に共産主義者主体のモンゴル人民共和国として、世界で2番目の社会主義国となった。
 しかし戦後、蒋介石の中華民国政府は、モンゴル独立を認めず、このためソ連の衛星国のモンゴルは独立国として長く国連加盟を認められなかった経緯がある。やっと国連に加盟したのは、1961年になってからだった。当時、台湾の中華民国政府が中国を代表していたので、拒否権でモンゴルの国連加盟は阻まれたのである。
 この歴史を見れば、強大化して国内に内モンゴル自治区を抱える中国は、西方のモンゴル国に領土的野心を復活させてもおかしくはない。半世紀前まで、蒋介石の中華民国は自国領だと言っていたし、20世紀初頭まで清国、中華民国領だったのは確かだからだ。
 金で雇った少数のモンゴル系中国人をモンゴル国内に潜入させ、中国への編入を求める騒乱を焚きつければ、モンゴルの統一の名目で確実に軍事介入するだろう。

北朝鮮は渤海国の一部という中国歴史家の主張で、韓国も危ない
 モンゴルは陸で中国と長い国境線を抱え、経済的、軍事的に圧倒的な弱小国だ。一方の中国は強大な陸軍力を持つ。その気になれば、台湾を制圧するより容易だろう。何しろ中国は安保理理事国なので、安保理で制裁決議は絶対にできない仕組みときている。アメリカもロシアも、中国にモンゴル侵攻されれば傍観するしかない。
 北朝鮮も、中国の領土的野心の対象国だ。前にも書いたが(本年8月19日付日記「迫り来る北朝鮮Xディーに備える中国とアメリカ、韓国(上):金正日、金日成、金ジョンウン、金正男」 を参照)、もし北朝鮮で金正日死後に跡目をめぐる混乱が生じそうなら、直ちに軍事力を背景に傀儡政権を作り、やがて中国の一省に編入するだろう。中国の歴史家は、だいぶ前から「朝鮮半島北部は、かつての中国の地方政権であった渤海国の版図の一部だ」と主張しているからだ。
 そうなれば朝鮮半島は、永遠に分断される。韓国でも、ボケ菅政権の白旗降参を見て、竹島が安堵されたと喜ぶより、密かにそちらの心配を始めているはずだ。

いつ人質と経済攻撃を受けてもおかしくない台湾
 台湾は、スターリニスト政権が鉄の支配を行う大陸と経済的に今や一体となっている。もし大陸に進出した台湾系企業が接収されたら、台湾はもたない。現在の国民党政権(馬英九政権)が続いている間は動かないだろうが、民進党が政権に復権する動きが顕在化したら、直ちに経済戦争カードを切るに違いない。何よりも、日本を経済攻撃と人質で屈服させたのだ。
 スプラトリー諸島(南沙諸島)は、遠からず中国海軍によって完全に制覇されるのは疑いない。中国は今年から南シナ海を、チベットや台湾とともに「核心的利益」と公言するようになったので、中国漁民を使って沿岸国を挑発し、報復と称していつでも軍事占領できるようになっている。
 実際、88年の赤瓜礁海戦で、中国は赤瓜礁の島々をベトナムから奪った(これは、中越国境戦争の一環でもあった)。

一線を越えさせたボケ菅の短慮
 上記のように考えれば、ボケ菅政権の短慮は、中国にとんでもない一線を越えさせてしまった可能性が高い。鄧小平の「韜光養晦」はもはや遠い昔の遺訓であり、今はかぶっていた猫を脱ぎ捨て、スターリニスト本来の傲慢で強権的、膨張主義的野心をあからさまにし出したそのスタートを切らせたと思われる。
 尖閣諸島は、その「試し」であり、思い通りにボケ菅政権は全面降伏してくれた。ボケ菅政権は、目先のスターリニストの恫喝に屈し、世界に動揺の芽を膨らませるというパンドラの箱を開けたのである。東アジアの緊張は、北朝鮮発だけでなく、超大国ならず者国家の中国も新しい要因になった。
 ロシアとモンゴル、韓国、台湾、東南アジア諸国の憂鬱と恐怖の始まりである。
 写真は、文禄・慶長の役で秀吉の軍と戦った朝鮮の将軍、李舜臣の像。ソウル、世宗路で。像の右側の座像はハングルを作った世宗大王で、その間に大統領官邸の青瓦台が見える。

昨年の今日の日記:「和製GM=日航JALの破綻は秒読み:政投銀、民事再生法、チャプターイレブン、メガキャリア」