kawanobu日記/統一展望台から見た北朝鮮の山ははげ山:イムジン川 画像1

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 DMZの公園で見たものは、まず「平和の鐘」。2000年に朝鮮半島の平和と統一を祈念して作られたそうだから、金大中大統領時代である。ならず者=金正日の本性への金大中の無理解の記念碑であるような気がした(写真上)。

川の向こうは北朝鮮領
 次は「自由の橋」だ。朝鮮戦争(韓国側呼称は「韓国戦争」)の休戦で捕虜交換がなされた時、ここから北から韓国側捕虜が帰された。捕虜は、この橋を渡ると「自由万歳!」と叫んだから、自由の橋という名称がついた。むろん、現在は北との出入り口は閉鎖されている。
 そのそばに、朝鮮戦争の際に銃弾を浴びたという真っ赤にさびた機関車が展示されていた(写真は14日付日記を参照)。弾痕もはっきりしていて、生々しい。
 公園隣の建物の屋上展望台に上がる。白く塗られた統一大橋が見え、現在、1日に1回、北からの列車が通るという(写真中=下に見える木橋が自由の橋)。たまたま我々がいた時、北からの機関車が通った。残念ながらポジショニングが悪く、写真を撮れなかった。

イムジン川縁の丘上の統一展望台へ
 風はないものの、雨が降っている。我々は、早々にバスでイムジン川河畔に突き出たオドゥサン(烏頭山=標高118メートル)の山頂に設けられた統一展望台に向かう。元来た道を戻り、途中で高速道路を下りた。途中、イムジン川沿いの韓国側には、ずっと鉄条網が張られ、ほぼ100~200メートル置きに迷彩を施した監視ポストがある。ここが、戦場の第一線であることを否応なく思い起こさせる。
 統一展望台に到着した。ここで、大画面での北朝鮮の生活ぶりを見せられる。韓国語、英語、日本語でそれぞれ上映され、時間は約10分。スクリーンの先に広がるガラス窓越しに見えるイムジン川の対岸は、まさに北朝鮮である。
 映画によって、煙った川の向こう岸にうっすらと見える北朝鮮の村は、ほぼ全員が北朝鮮人民軍兵士などの住まいで、一般民家ではないという。したがってここでは、北朝鮮庶民の生活はのぞけないそうだ。

ショーウインドーとしての張りぼて建物
 3階建ての小規模集合住宅が何棟も並んでいるが、中には張りぼてよろしく泥煉瓦で造って実際は人の住んでいないものもあるそうで、あくまでも対韓国のショーウインドーである。3月の哨戒艦撃沈事件を受け、李明博政権は対北朝鮮の宣伝放送の再開を決めたが、北朝鮮の猛反発でまだ実施していない。ここで大音量の宣伝放送を流せば、間違いなく対岸に聞こえる。
 脱北した北朝鮮兵士によると、南の宣伝放送を聞いて、軍上官や政治委員の話とだいぶ違うなと目覚めたという。ラジオのバリコンはハンダで固定され、韓国やVOAの放送を聴取できなくされている北朝鮮兵士や庶民を覚醒させるのに、南側から流される大音量の宣伝放送はある程度効果がある。だから、金正日は李明博政権の決定に猛反発したのだし、例えば韓国民間団体が風船に宣伝ビラをつけて北側に飛ばすボランティア活動にも、いつも激しい反発を示すのだ。

木を伐採して植えないからはげ山
 到着した時は、イムジン川の対岸はほとんど見えなかったが、1時間ほどして帰る頃には、だいぶ晴れて対岸が見えるようになった。3階建ての「張りぼて」建物もよく見える(写真下)。
 特徴的なのは、北朝鮮側の山に木が少ないことで、2つの解釈がある。1つは恒常的な燃料不足と材木不足でどんどん伐採され、植林もされずに放置されているという説。ショーウインドーでもそうだとすると、韓国から見えない北朝鮮の山々はほとんどはげ山であることは想像がつく。実際、北朝鮮が中国に輸出する主要産品は材木である。以前、NHKが中国側から写したテレビ放送で、やはりはげ山だらけだった。
 山に木がないから、当然、森林の持つ保水力がなく、土壌も浸食される一方となる。降れば洪水、晴れれば干ばつで、北朝鮮が毎年のように自然災害に襲われ、食料不足に襲われるのも、いわば当然である。先軍政治のもと、金正日とその取り巻き、人民軍幹部だけが贅沢をし、一般庶民はもとより下級兵士までも飢餓状態にあるように、彼らには北朝鮮国内のガバナンスはない。木は伐採するだけで、植林など考えもしないのだろう。

北朝鮮全土の植林は相当な負担
 統一となれば、まず地力を回復させ、自然災害を防ぐためにも、北朝鮮全国土の緑化もしなければならず、やはり相当な困難である(韓国の南北統一のコストについては、本年8月20日付日記「迫り来る北朝鮮Xディーに備える中国とアメリカ、韓国(下):統一税、ドイツ統一、『日朝国交正常化』」を参照)。
 もう1つの説は、木を切ることで、身を隠しての韓国への亡命を防ぐため、というものだ。確かにはげ山であれば、南への逃亡は容易ではないが、現実には地雷の埋まる休戦ライン超えの亡命はほとんどない。「脱北」という言葉があるように、北朝鮮からの逃亡は、中朝国境超えがほとんどなので、この説は弱い。
 実際は、燃料や材木生産のための伐採の方が真相に近いのではないか、と思う。

昨年の今日の日記:「生活保護母子加算の復活はエセヒューマニズム、元極貧母子家庭の子として:不正受給、最低賃金、ワーキングプア」