kawanobu日記/日本から雇用が失われる円高定着、もう下がらない失業率:海外資産比率、海外従業員比率 画像1

 外交、安全保障、経済運営、内政のすべてにアマチュア感覚で、決断力も実行力もないバラマキスト民主党政権が出来て間もなく1年――その間に、本来なら自立的に景気回復している局面なのに、いまだにその実感がない。

失業率、依然5%台
 何よりも誰もが日本経済の回復に自信を抱いていないのは、株価に表れている。ずっと1万円を割ったきり、9500円近辺をウロウロしているのは、企業の第1四半期決算の発表が終わってほとんどの上場企業は目覚ましい回復を示しているのと、いかにもそぐわない。
 間もなく開く東京外為市場で、ひょっとすると09年11月につけた1ドル=84円82銭を突破するかもしれないという超円高局面に入っているのに、何の対策もとられない。
 マーケットがバラマキスト民主党の経済運営に不信感を示している。
 先月30日発表された6月の労働力調査で完全失業率は前月比0.1ポイント上昇の5.3%と4カ月連続の悪化となった。企業業績の著しい回復に比べて、雇用回復がなく、株価も上がらない。まさに絵に描いたような「ジョブレス・リカバリー」(雇用なき景気回復)である。

有力企業の一部はもはや「外資系」
 そのカラクリの一端が、7月31日付日経新聞朝刊1面のコラムで明かされている。日経調べでは、有力上場企業660社の10年3月期における国内外資産で海外比率は3分の1を越えたという。海外資産が国内よりも多い企業は、45社に達している。本社機能こそ残しているものの、これではもはや「外資系企業」である。
 理由は、言うまでもなく超円高である。特に1年前に民主党政権が発足して以来、円高に拍車がかかった。当時の藤井財務相が、浅はかにも何度となく口先円高誘導したからである。そのせいで、すっかり1ドル80円台が定着した。ちなみに円は誰が見ても買われすぎであり、購買力平価から見て適正値は1ドル=110~120円程度とされる。しかしマーケットは、政策当局の無策を見定め、安心して円買い・ドル売りを仕掛けている。
 その後、藤井の後を襲って財務相に就任したボケ菅は、円高誘導こそやめたものの、市場はすっかり円買いモードになっている。そのせいで海外で何かあると、必ず円高に振れる。ギリシャ危機で、長らく安定した対ユーロでも超円高に振れた。

内需企業の資生堂も今や「外資化」
 すると輸出企業は、為替差損を被るので、円高対応という形の生産拠点の海外移転を進める。移転しなくとも、部品を海外で購入する。
 日産が小型車マーチの国内生産をやめ、タイからの全面的輸入に切り替えたのは、小型車のように低付加価値の車を国内で作っても採算に合わなくなったからだ。これで、確実に雇用は失われている。実際、10年3月期で、同社は海外資産比率ばかりか海外従業員数でも国内従業員数を逆転し、50%越えした。日産などまだ緩い方だ。HOYAとTDKでは、海外従業員比率が87%にも達しているのだから。すべてではないとしても、このかなりの部分は国内の雇用を犠牲にしたものだ。
 海外資産比率が4分の3にも達しているホンダは、もう二輪車を国内でほとんど生産していないし、13年に稼働させる新鋭の寄居工場は、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)という環境車に必要な高度な生産技術を追及する拠点、という位置づけだ。低付加価値車の工場新設計画は、撤回している。
 最も早くから「外資化」した極小ベアリング製作会社のミネベアは、海外資産比率72%だが、海外従業員比率は94%にも達している。連結で5万人近い従業員がいるのに、単体、すなわち日本の本社の従業員はたったの2814人だ。もちろん営業利益の8割を海外で稼ぎ出す(写真=同社タイ現地法人のロッブリ工場)。
 最近は典型的な内需型企業である資生堂も、国内市場に見切りをつけたように海外生産や海外企業の買収を進めている。海外資産比率は、56%へと急上昇している。

若者失業は減る一方
 以上から言えるのは、日本ではもはや失業率が5%を切ることはあるまい、ということだ。かつての失業率が1%台という完全雇用の時代は、もう来ない。
 製造拠点は戻らないので、若者の技能工が雇われることはないし、その逆風と少子高齢化の相乗効果で国内消費市場も縮小する一方だから、デパートや専門店の販売職もさらに縮む。
 内需が縮む一方なので、経済成長率もせいぜい1%台にいけばよい方だろうし、マイナス成長に陥ることも頻出するだろう。バラマキスト民主党政権の唱える成長戦略など、絵に描いた餅だ。
 ただ、研究開発拠点としての役割は残るので、大卒・大学院修了の理系には追い風は吹くだろうが、絶対的雇用数では技能工採用数には遠く及ばない(だから勉強は大切である)。
 文系大卒も、国内向けは市場縮小だから、(モチベーションの要らない公務員ならまだしも)海外にまで出て行く覚悟がないと、就職難につきまとわれるだろう。
 そうした企業の経営姿勢と雇用の変化を、アマチュア感覚のバラマキスト民主党政権には分からない。そしてやることは、社民党に引っ張られて製造業派遣の禁止などの若者の雇用を狭める反企業的政策である。
 もっとも昨夏にバラマキスト民主党政権を選んだのも、そうした若者たちだった。自らの愚かな選択が自らに降りかかってきたことに身に染みて感じるがよい。

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