カラスは黒い、と決まっている。どことなく不気味だ。だからだろう、例えばスターリン時代のソ連では、反対派知識人を自宅からしょっ引くための、深夜に街中を走る移送車を「黒ガラス(チョールヌイ・ヴォロン:Чёрный ворон)」と呼んだ。市民は、いつ自宅玄関前に「黒ガラス」が駐められるかと恐れた。
◎知恵が発達するも不気味さがネガティブな印象
カラスは、また路上に放置されたゴミ袋を漁って辺りを汚くさせるし(写真)、これからの季節、繁殖期になると、巣を守るために市街地を歩く人を頭上から襲ったりする。かなりの困りものだ。
しかしカラスは知能が高く、自動車に堅い種を轢かせたりもする。特に南太平洋ニューカレドニア島に分布するカレドニアガラスは、小枝や葉を加工して「道具」を作り、木の穴の中にいる虫を捕まえることで有名だ(写真)。
ただ多くの人たちのカラスに抱く印象は、ネガティブなものだ。
その理由の大部分は、その真っ黒い姿の不気味さにあるだろう。世界中にカラスは500種ほどいるらしいが、ほとんど例外なく真っ黒だ。稀に遺伝子の突然変異や色素の異常によって「白いカラス」が出来ることがあるというが、非常に珍しく、数万羽に1羽程度の確率でしか現れないと言われている(写真)。
◎スイッチ役の「MC1R」受容体がオンのまま
では、カラスの羽の色はなぜ黒いのだろう。
カラスの黒い羽は、黒さを生み出す「スイッチ」役の「MC1R」受容体が、ホルモンの刺激無しでも高活性を保ち、黒い色素(ユーメラニン)を作り続ける「止まらないスイッチ」の役割を果たしているためであることを、このほど岡山大学の研究グルーブが発見した。
鳥の羽の色や動物の体色は、主に黒色系のユーメラニンと赤褐色系のフェオメラニンのバランスで決まる。このバランスを調整するのがMC1Rだ。いわば「色の切り替えスイッチ」である。通常はホルモン刺激によって一時的にオンになり、ユーメラニンの合成を促す。
◎色素のユーメラニンが作られ続けて
研究グループは、ハシブトガラスのMC1Rを培養細胞で詳細に解析した結果、ホルモンが無くても高い活性を保ち、ホルモン刺激への応答が弱いことが判明した。つまりカラスでは、このスイッチ自体が常にオンの状態にあり、ユーメラニンが作られ続けていると考える。さらに、マウスやニワトリでは1アミノ酸置換で生じる「止まらないスイッチ」が知られているが、カラスでは複数のアミノ酸変化の組み合わせで生じている可能性が示されたという。
この研究は、野生の黒いカラスでこの仕組みを実験的に示した初めての成果だ。カラスの黒さの謎に新たな答えを与えるとともに、生物の色の収斂進化に関する重要な発見と言えるだろう。
研究成果は、2026年4月6日に国際学術誌「General and Comparative Endocrinology」オンライン版に掲載された。
昨年の今日の日記:休載
































