やはり石破ショック、である。先週末9月27日金曜日の午後3時半頃、自民党総裁選決選投票で高市早苗氏に石破茂が逆転勝利すると、マーケットは2円前後の円高に触れ、翌日のCMIの日経平均先物は、約2300円もの大幅下げとなった。

 マーケットは、金融課税強化や法人税増税をちらつかせる石破を歓迎しなかった。それを受けた週明けの東京市場も1910円安と、過去5番目の全面下げとなった(翌日10月1日は732円高の多少の反発となった)。


閣僚19人のうち6人も推薦人から起用​

 2021年の岸田ショックの再来である。2代続いて、マーケットから歓迎されない船出となった。ただ岸田は当初から掲げた金融課税強化を就任後封印し、新NISAを始めるなど、マーケットと一般投資家に寄り添う姿勢に変わり、7月11日にはハブル期最高値をはるかに超える4万2224円の史上最高をつけた。石破の登場は、これに水を指すものとなった(短期的には)。

​​ そして、9月30日には、党役員人事(下の写真の上)、10月1日には閣僚人事(下の写真の下)を決めた。露骨な論功行賞人事と言える。19人の閣僚のうち6人までを総裁選の自身の推薦人が占めた。特に陣営の事務総長を務めた赤沢亮正を経済財政・再生相に、平将明をデジタル相に充てた。2人とも、先細りになった石破派が21年に解散されるまで、最後まで同派に残った「忠臣」だ。​​

 

 


保守派は徹底排除​

​ 特徴は、保守派の露骨な排除である。決選投票で戦った高市早苗氏を断られることを承知で党総務会長のポストを打診した。総裁選で名実ともに党ナンバー2に上り詰めた高市氏が党総務会長などの軽いポストを受け入れるわけはないと知ってのことだ(写真=1回目投票結果)。​

 

 

​ さらに1回目投票で議員票で4位と健闘した小林鷹之氏(上掲写真)には、これも断られることを承知で党広報本部長を打診して、固辞された。次の総裁をとも飛躍する自負の小林氏に非礼とも思える軽職で、かくて総裁選党直後に発言した「出馬した8人の方々にはぜひ重職に就いていただきたい」という言葉は、早々と食言となった。​

 2人とも、リベラル石破の危険性を察知し、早々と距離を置いたかたちだ。

 肌合いの合わない茂木敏充氏も干された。


旧安倍派がゼロ、そして札付き左派の村上誠一郎を総務相に起用

 身内を重用した半面、徹底的に干されたのは保守派の多い旧安倍派で、党役員にも閣僚にも1人も起用されなかった。これほど敵意が露わになった内閣人事を、僕は記憶にない。

 その一方、かつて安倍首相を「国賊」と中傷し、党役職1年停止処分を受けた札付きの左派、村上誠一郎を総務相に就けた。ちなみに村上は、石破の推薦人20人に名を連ねたから、その論功行賞人事である。

 これほど偏頗な人事は、長く政界を見てきた僕にも記憶にない。


早くもささやかれる石破政権短命説​

​ はっきりと不快な態度を示したのは、最高顧問に棚上げされた麻生太郎氏だ。30日の臨時総務会後に行われた石破を囲んだ新党役員の記念撮影で、麻生氏は周囲が引き留めるのを振り切って退席した。石破と一緒に写真に収まることを明確に拒否した形だ(写真)。​

 

 

 党総裁選で明らかになったように、議員票で2位の高市氏(72票)、4位の小林氏(41票)、5位の茂木氏(34票)の計147票と過半数を石破は敵に回した。そして麻生氏の退席、さらに上川陽子氏(同23票)、河野太郎氏(22票)を閣外への追い出し。

 一方で、強力に支える議員集団の不在。

 早くも党内外から、石破政権の短命説が出る所以だ。例えば27日に予定される総選挙、そして来年7月に予定される参院選などではかばかしい成果を出せなければ、一気に退陣の火の手があがるだろう。


昨年の今日の日記:「記者の前で処理水飲んでみせた元民主党政権政務官の園田康博氏を『癌死』フェイクニュースまで使ったスターリニスト中国の卑劣な策謀」

 今まで彗星というと、空振りのしっぱなしだった。

 だから、今回も俄には信じられないのだが……。紫金山・アトラス彗星のことである。

 紫金山・アトラス彗星については、一時、地球に最接近すれば今世紀最大の彗星となる、と期待された。ところが3月下旬~4月半ばにかけて急激に増光し、太陽に接近する途中に分裂・崩壊したと予測され、期待は大きく後退した。


2023年1月に発見された周期8万年の長周期彗星​

​ ところが紫金山・アトラス彗星は、生き残った(写真=5月10日に岡山の天文台で撮影された紫金山・アトラス彗星)。​

 

 

​​ 現在は、9月28日の近日点到達を通過した。南半球では肉眼でも見える程度の光度になっているという(下の写真の上=9月17日にナミビアのファーム・ティボリから撮影された紫金山・アトラス彗星;下の写真の下=ISSから撮影された紫金山・アトラス彗星)。​​

 

 

 

 紫金山・アトラス彗星は、軌道周期が約8万年という途方もない長周期彗星で、太陽系が誕生した時に取り残された無数の彗星の集まりである「オールトの雲」からやって来た。2023年1月に中国の紫金山天文台の天文学者によって、地球と太陽の距離の7倍以上離れた位置で初めて発見され、一時行方不明となったが同2月に南アフリカ天文台サザーランド観測所の小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)により再発見されたことで、この名がある。正式には、「C/2023 A3」というカタログ番号が付与されている。


日中にも見える可能性?​

​ 現在、南半球では、太陽の陰から姿を現したばかりの彗星をアマチュア天文家たちが見守っている。観測の順番はまもなく北半球に回ってくるが、星空観察アプリの「Star Walk」によると、紫金山・アトラス彗星はこの100年間に北半球で観測された彗星の中でも最大級に明るい彗星になると期待されている(想像図)。天文情報サイトのSky&Telescopeなどは、10月に入れば日中にも見えるようになる可能性があるとしている。もし日中にも見えたら、世間では大騒ぎになるだろう。​

 

 

 はたして期待してよいのか。

 まだ確実なことは言えないらしいが、北半球からの観測が集まれば、さらに多くの手がかりが得られるだろう。


どこまで明るくなるか​

 いささか誇大妄想的ににも思える前評判だが、ずっと紫金山・アトラス彗星を追っているオーストラリアの天体写真家マイケル・マティアッツォ氏によると、同彗星は最接近中に急速に明るさを増していたという。

 同氏は夜明け前の空に尾を引く白っぽい彗星の撮影に成功している。明るさは4.3等級と推定され、肉眼でも見える。こと座で最も明るい星ベガの絶対等級と同じ、0.6等級まで明るくなるとする予想もある。

 10月中旬の夜には、目を見張るような素晴らしい天体ショーが期待できる、とアリゾナ州フラッグスタッフにあるローウェル天文台の天文学者チーチェン・チャン博士は予測する。「天気さえ良ければ、北半球のどこからでも紫金山・アトラス彗星は見えるはずだ」と、心強い。


ベスト観望期は10月半ば、ただしこの頃に満月​

 さて前記のように9月28日、紫金山・アトラス彗星は近日点に到達した。太陽からの距離は約5900万キロだ。この時が彗星にとって最も危険な時期であり、太陽の影響で分裂する可能性がある。彗星の状態、特にその明るさの見通しを予測するのが非常に難しいのは、そのためだ。

 もし近日点を無事に通過できていれば、10月4日にかけて、紫金山・アトラス彗星は日の出前の東の低空、地平線に近くに輝いて見える。同4日頃、彗星は太陽の光の影響でいったん見えなくなるが、この段階で観測に十分な明るさが保たれていれば、10月中旬から再び壮大な天文ショーが楽しめという。

​ 最もよく見えるのは10月10日~20日頃とみられる()。同彗星が10月12日に地球に最接近し、地球から約7100万キロまで近付き、通過していくからだ。​

 

 

 ただしこの頃、月が満ちてくる。満月は10月17日だから、観望期間は限られてしまう。


彗星は西の夕空に現れる​

 専門家の見立てでは、10月中旬の西の空に彗星が現れ、観察場所にもよるが、日没から1時間半後ぐらいまでの短い時間、高度4~8度付近に見えるだろうという。

 また別の彗星の専門家は、10月10日以降、夜空に出現する彗星はマイナス等級になる可能性もある、とみる。

 地球に最接近するにつれ、マスメディアが見え方を報道するようになるだろうから、それを参考にぜひ観望したい。


昨年の今日の日記:「牛乳と乳糖不耐症、わが体験からその人類史を振り返る」​

 

​​ イスラエル、モサドのとびきりの諜報活動には舌を巻く。27日には、レバノンを実効支配するイスラム原理主義テロリスト「ヒズボラ」の最高指導者ハッサン・ナスララ(写真下の写真は28日にベイルートで行われた反イスラエルデモでナスララの写真を掲げる群衆)を、首都ベイルート南部郊外ダヒエの集合住宅地下に設けられていたヒズボラ本部をピンポイント空爆で殺害した。27年前にナスララは長男をイスラエル軍に殺害されているから、親子2代の受難となった。​​

 

 

 

 イスラエルがナスララの殺害を狙っていることは9月26日付日記「ガザに引き続きレバノンで対ヒズボラ戦大規模空爆を続けるイスラエル、その成算は」で予言したが、あの時にはすでにイスラエル国防軍は、ナスララを捕捉していたのだ。


地下貫通するバンカーバスター弾使用​

 これで、イスラエルの南のガザ地域を支配していたハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤを去る7月31日にイランの首都テヘランの滞在地で爆殺して以来、イスラエルは自らを脅かしてきた南北のテロリストの首魁を暗殺したことになる。

 いずれも敵地で的確に捉えて殺害しているので、内通者を通じて指導者の居場所を常に把握していたことを推定させる。

​ ヒズボラ本部の空爆ではナスララの他に、会議で集まっていた、ヒズボラの南部戦線を指揮していた司令官アリ・カラキなど複数のヒズボラ幹部とヒズボラの後ろ盾のイラン革命防衛隊「コッズ部隊」の将官も殺害している。イスラエル空軍は、コンクリートに囲まれた地下室にナスララらがいることを把握していて、コンクリートの地下室をも破壊できるバンカーバスター(地中貫通爆弾)を使用した(写真=大きなクレーターの開いた現場)。​

 


通信手段を失い、幹部の殺害も相次ぐヒズボラ​

​​ ガザ戦争が始まってから、ヒズボラはハマス支援のためにたびたびイスラエル北部にロケット弾や短距離ミサイルを撃ち込んでいるが、これに対してイスラエルの報復も厳しく、7月には司令官のフアド・シュクル(下の写真の上)、9月には別の司令官のイブラヒム・アキム(下の写真の下)をピンポイント空爆で殺害している。​​

 

 

 

 いずれも諜報活動を通じて居場所を把握し、殺害していた。

 ナスララ殺害で受けたヒズボラの痛手は大きい。17日、18日の両日、ヒズボラの通信手段となっているポケベルとトランシーバーに仕込まれて爆弾が爆発し、多数の死者・負傷者を出したうえ、通信手段を失っている(9月20日付日記:「ポケベル、トランシーバーでレバノンのテロリスト『ヒズボラ』を一斉攻撃するイスラエルの新たな戦争」を参照)。前記のように作戦を命じる複数の司令官も既に殺害されているのだ。


あるか、レバノン侵攻​

 ヒズボラとその後ろ盾のイランにとっては、困難な局面に立たされたと言える。もし大規模なロケット弾、ミサイルで報復を行えば、次は地上軍がレバノン南部に攻め込んでくるのは必至だ。ガザでハマスを事実上無力化させたイスラエル軍にとって、レバノン侵攻は困難な任務ではないだろう。

 レバノン南部に侵攻されたら、ガザのようにイスラエル軍はヒズボラの拠点を徹底的に破壊するだろう。そしてかつてレバノン戦争でやったように、キリスト教徒主体の南レバノン軍を再建し、占領地の治安維持をまかせるに違いない。ガザと異なり、レバノンには反ヒズボラの党派も多いから、それはイスラエルにとって強みとなる。


ヒズボラは「世界最強の非国家武装組織」で手強い​

 しかしヒズボラは、世界最強の非国家武装組織と言われる。推定兵力は5万人、保有するロケット弾とミサイルは12万~20万発とされる。イランから供与された射程500キロのスカッドミサイルも保有する。スカッドミサイルは、イスラエル全土を射程に収める。

 掃討は、ハマスよりかなり困難だ。ヒズボラが窮地に立たされれば、イランが介入してくる可能性もある。

 そうなれば第5次中東戦争となり、世界の平和と経済を脅かす。

 今後の動きに目を離せない。


昨年の今日の日記:「中国恒大集団、『清算』秒読み、スターリニスト中国経済に激震か」

​​ 自民党新総裁に、最もなってほしくない人物が選出された。27日の同党の総裁選の決選投票で選出された石破茂である(以下、いずれも敬称略)。


セカンドベストの高市は決選投票で逆転負け​

​ ベストシナリオはちょっと当選の見込みは乏しいが小林鷹之、セカンドベストは高市早苗で、たぶん彼女になるだろうと読んでいたが、当てが外れた(​写真​=決選投票前に演説する高市)。​

 

 

 小泉進次郎は、初めから無理だと思っていたが、前首相の管義偉が応援しているから、場合によっては決選投票で当選のめもあるかもしれない、それなら管が後見人として控えているから、それでもいいかなと思っていた。それが、よりによって石破とは――。なぜ僕が石破を忌避するかは後述する。

 1回目の議員票は高市72票、石破46票で、26票もの大差がついていたが、決選投票結果は、石破が国会議員票189票、都道府県連票26票の合計215票と逆転、高市は173票、21票の合計194票止まりだった。

 1回目投票と決選投票の国会議員票結果を深読みすると、1回目で首位に立った高市が2位石破に逆転された理由も分かってくる。


小泉支持票と旧岸田派票が石破に向かった​

​ 3位の小泉75票以下の動向が、結果を分けた。ちなみに旧岸田派からは林芳正と上川陽子の2人が立って、38票と23票だった。合計61票。小泉票と旧岸田派票の大半が、石破に流れたのだ。理由は、故安倍元首相の流れをくむ保守派の高市が嫌われたからだ。過去4回も総裁選で敗れ、今回がラストチャンスと言う石破への同情票もあったかもしれない(写真=決選投票結果を受けて自席で立って挨拶する石破)。​

 

 

 しかし、石破で本当によかったのか。

 彼は、自民党で当選しながら野党に転落した自民党を離党、新生党から新進党に移った日和見である。また自民党内でも、麻生政権時には閣僚でいながら麻生批判し足を引っ張った。安倍がマスコミと野党からの「森友学園、加計学園」疑惑(いわゆるもりかけ疑惑)の集中砲火を浴びている時も、自民党議員なのに冷ややかな態度で終始した。つまりリベラル・メディアの受け狙いのポピュリストなのだ。


石破のメディア受け狙い、原発ゼロ、金融課税強化、法人税増税……​

 総裁選に入ってからも、夫婦別姓に異を唱え、エネルギー問題に対しては原発ゼロと後ろ向きの姿勢をとり、法人税増税と金融課税強化を打ち出していた。能登の被災が話題を集めると、「防災省」創設などと言っている。いずれもマスメディア受け狙いで、日本を強化することにはつながらない。

 こんな石破が、総裁選で有力候補に浮上できたのは、「政治と金」の問題で、麻生派以外の派閥が消えたことが最大の要因だ。党内基盤の無い石破にとって、派閥の無くなったのは、まさに僥倖と言えた。


金融課税強化で貯蓄から投資に向かう流れを止めるな​

 その石破が自民党総裁、すなわち次期首相になる。市場にとっては、大きなネガティブ・サプライズとなり、さっそく円高進行、時間外取引で日経平均先物の急落、と身構えた。12月物は、2000円以上の大幅下げとなった。27日にニューヨークのCMEにもよるが、せっかく上向きかけた東京市場の日経平均株価も週明けは大幅下げで迎えることになるたろう。3年前、やはり金融課税強化を唱えていた岸田が総裁に選ばれると、東京市場は8日連続安で応えたデジャブとなりそうだ。

 金融課税強化は、新NISA導入などでせっかく出来た貯蓄から投資に向けての大きな流れをストップさせることになる。これは、絶対に阻止しなければならない。


意外に弱かった河野太郎、時代は終わったか

 僕が石破を支持できないことは以上の理由だが、1回目投票の議員票結果を子細に見ていくと、いくつも興味深いことが読み取れる(写真=1回目投票結果)。​

 

 

 まず河野太郎の意外の弱さだ。前回2021年総裁選では決選投票で岸田に敗れはしたが、1回目投票では岸田に1票差にまで詰め寄っていたのに、今回は8位の30票(うち議員票22票)と惨敗を喫した。河野の時代は終わったのかもしれない。

 1回目投票で3位に終わった小泉は、しかし議員票では堂々のトップとなったのは流石だ。解散の近い衆院議員の多くが、選挙の時の自民党の顔として「進次郎人気」にすがろうと、小泉に投票したのだろう。


推薦人からも逃げられた加藤勝信の不徳

 奇っ怪なのは、どん尻の加藤勝信が議員票を16票しか取れなかったことだ(写真=1回目の投票をする加藤)。16票のうち1票は自分の票だろうから、他議員からは15票しか集められなかったことになる。しかし彼は立候補に当たって、20人の議員の推薦人を集めていた。推薦人として名前だけ貸した議員がいたことになる。

 

 それならまだしも、当日の流れを見ると、その節操の無さに呆れるばかりだ。投票直前の同日昼、党本部での加藤の「出陣の会」には推薦人20人が揃い、カツカレーを食べながら勝利を誓い合ったのに、そのわずか1時間半後に16票という結果だ。その後の「報告会」には17人が出席し、神妙な顔つきで加藤氏の敗戦の弁を聞いた。投票しなかった議員も少なくとも2人が出席したことになる。「裏切り者」の鉄面皮ぶりには驚きしかない。


次の総裁選に足場を固めたこばホーク​

 河野と加藤が、赤っ恥をかいた組だとしたら、面目を施したのは、僕が応援していた小林鷹之(こばたか、こばホーク)だ。議員票は石破に迫る41票を獲得し、議員票だけなら4位につけた。彼自身、当選など思ってもいなかっただろうから、これは望外の「勝利」と言えるかもしれない。次の総裁選への足場を固めたと言えるかもしれない。

 ともあれ僕が支持しない石破が自民党総裁になった以上、次の選挙ではまたも維新に投票するしかない。


昨年の今日の日記:「ウクライナ防衛軍のロシア侵略軍放逐の戦いが進む、黒海艦隊司令部壊滅」

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 鉄鋼、アルミ……スターリニスト中国の特有の宿痾である基礎資材の過剰供給をもとに大幅値下がりした資材の洪水のようなダンシング輸出が、今、液晶ディスプレーや太陽光パネルで起きている。


22年には世界の太陽光パネル出荷量の7割を​

 共産党中央政府のかけ声の下に各省がメーカーに手厚い補助金を付け、それによってコストを切り下げたメーカーがダンピング輸出をする構図だ。液晶ディスプレーでは既に唯一の日本のシャープを市場から放逐し、韓国のサムスン電子すら撤退させた。

 太陽光パネルは、それ以上かもしれない。その結果、太陽光パネル価格が昨年比半額へと値崩れを起こしている(写真=太陽光発電所)。

 

 

 

 それができるのは、世界の太陽光パネル市場の大半を補助金をてこに低コスト生産をしているスターリニスト中国メーカーが独占しているからだ。2022年で1位から5位までを中国メーカーが独占()、他の中小メーカーを含めると全世界出荷量の71%を占めた。このうち5位だったジンコソーラーが翌23年上半期トップに上がったから、5位までの独占率はさらに高まったとみられる。

 


1年で半値、6年前からは5分の1に​

 そのスターリニスト中国メーカー同士の激しい競争で、太陽光パネルは急激な値下がりをし、米調査会社NEFによると、今年4月下旬段階で1ワット当たり11.1セント(約17円)と1年前の同21.6セントの半分になっている()。

 

 

 上掲図で見ると、6年前と比べればさらに値下がりが激しく、短期で実に5分の1にも切り下がっている。

 それを促しているのは、スターリニスト中国メーカーの過剰生産だ。IEA(国際エネルギー機関)の集計では、22年の世界全体の太陽光パネル生産能力(大半は前述のようにスターリニスト中国会社)は約700ギガワットにも達していて、同年のパネル設置量、約200ギガワットの3倍超となっている。


欧州メーカーは閉鎖、アメリカはセーフガードで流入防ぐ​

 凄まじい過剰生産とスターリニスト中国の業界の競争で、太陽光パネルは上述のような大幅な値崩れとなっているのだ。

 これだけ激下げで割を食っているのは、太陽光発電の普及するヨーロッパのメーカーだ。スイスの太陽光パネルメーカーのマイヤー・バーガー・テクノロジーは、価格が採算点を大幅に下回ったため、ついにこの2月にドイツの工場を閉鎖した。代わりにアメリカで生産能力を増強する(なぜアメリカで生産可能なのかは後述)。パネルの原料生産を手がけるノルウェーのノルサン社も23年、国内操業を停止した。

 スターリニスト中国のダンピング輸出にも、アメリカはセーフガード(緊急輸入制限)で追加関税をかけてスターリニスト中国メーカーの輸出洪水の流入を防いでいる。


​◎ほぼ撤退の日本は、ペロブスカイトで巻き返しを​

 日本も、アメリカに見習って早く流入防止を図るべきだった。かつてのシャープ、パナソニック、京セラ、ソーラーフロンティアなどはほぼ撤退に追い込まれ、国内ではほとんど手がけるメーカーはない。

 復活は、超薄型で折り曲げ可能で丸い球面にも貼れる、スターリニスト中国より一日の長のあるペロブスカイト型太陽電池しかない。これで、国内のガードを固め、世界に、特にスターリニスト中国に輸出していってほしい。


昨年の今日の日記:「ウクライナ侵略の泥沼にはまった『裸の王様』プーチン、旧ソ連圏首脳の誰もが権威の失墜を痛感」

 僕らパソコン世代にとっては、インテルには絶大な憧憬があった。「インテル・インサイド(インテルCPUを搭載)」()の表示は、絶対の信頼があったし、マイクロソフトのウインドウと併称された「ウインテル」は、パソコンの絶対的支配者だった。

 


スマホ向け半導体のクアルコムがインテルを900億ドルで買収か​

​ そのインテル(写真=サンジエゴの本社とゲルシンガーCEO)が、今や別のアメリカ半導体企業に買収されかねないという。

 

 

 

 20日、アメリカの経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』など複数のメディアが報じたところによると、スマホ向け半導体を強みとするクアルコム(写真=サンジエゴの本社)がインテルに買収を持ちかけたという。インテルの時価総額は19日時点で約900億ドル(約13兆円)だ。実現すると、テクノロジー業界で過去最大規模のM&Aとなる。​

 

 

 インテルとクアルコムの事業領域は、重複が少ない。インテルは前記のようなパソコン向けCPU(中央演算装置)が主力で、クアルコムの主力はスマホ向け半導体だ。

 そのパソコン向けCPUが主力というインテルは、まさに時の流れに流された。今や通信などはスマホの時代。パソコン自体は今もオフィスや個人で使われているが、もう成熟化して伸びる余地はない。


2期連続の大幅赤字​

 半導体の製造受託も進出したが、2022年にソニーの「PlayStation 6」チップの設計・製造契約を逃している。

 経営も迷走している。インテルは2019年にせっかく育てたスマホ向け通信半導体事業をアップルに売却してしまった。

 このためインテルの24年4~6月期の最終損益は約16億ドルの赤字と2期連続の赤字を計上、注力するデータセンター向けの人工知能(AI)半導体への開発資金に事欠く。

 クアルコムは、スマホ依存の脱却に向け、パソコン向けの半導体を開発してきた。インテルを傘下に収めれば、さらにパソコン向け半導体を強化できる。


インテルの名が消えるか?​

 インテルがクアルコムによる買収を受け入れるかは、現在のところ不明という。

 しかし現状のままではじり貧となるのは、インテル首脳も分かっているだろう。対策として、半導体の受託生産を含む製造部門を分社化し、この新会社が外部資本を受け入れると16日、表明している。さらに踏み込んで、インテル全体を身売りすることを株主から迫られるかもしれない。

 僕らパソコン世代の絶対不滅の寵児だったインテルの名も消えるかもしれない――まさに時代の流れを痛感させるニュースだった。


昨年の今日の日記:「不当ないいがかりで日本の海産物を輸入禁止しているスターリニスト中国のEVに110万円もの補助金で支援するアホな国=日本」

 

 ガザ戦争がレバノンにも拡大する気配だ。

​ レバノンを実効支配するイスラム原理主義テロリスト「ヒズボラ」の基地や拠点などへのイスラエルの空爆が激しさを増している。23日以降の空爆で、2日間で死者は550人以上に達している(写真)。
 

 

司令官のイブラヒム・アキムを空爆で殺害​

 今のところレバノンまでの軍事侵攻まで至っていないが、17、18日のポケベル、トランシーバーの一斉爆発以来、イスラエル軍の攻撃は激化している。

​ 20日の首都ベイルートへの空爆で、ヒズボラ有力幹部で軍司令官のイブラヒム・アキム(写真=アメリカの指名手配ポスターのアキム)を初め、複数の中堅幹部を殺害した。イブラヒム・アキムは元イスラム聖戦機構のテロリストで、1983年4月に63人の死者を出した在ベイルートアメリカ大使館爆破と、同年10月にアメリカ人軍人ら241人の死者を出したアメリカ海兵隊兵舎爆破事件に関わった容疑で、アメリカから指名手配されていた。700万ドルの賞金首でもある。​

 

 

 また多数の死者を出した23日の空爆では、レバノン各地の1600カ所が標的になった。


ガザのハマス討伐に一段落でヒズボラ掃討戦に着手​

 いまだハマスに捕らえられている人質100人余の解放に至っていないが、ガザでのハマス掃討は一段落ついた、というネタニヤフ政権の判断なのだろう。イスラエル民間人が人質として拉致されてからそろそろ1年になる。政権内部には、残された人質はもはや生きていないのではないか、とする見方が出ているのだろう。

 半ば死に体のハマスは、もう当分はイスラエルを奇襲攻撃できない。

 それなら北部の安全保障に脅威となっているレバノンのヒズボラの掃討にかかろうというのだろうか。


5万の兵員を抱えるヒズボラはハマスよりはるかに手強い​

 実際、ヒズボラから頻繁にイスラエル領内に撃ち込まれるロケット弾とミサイルから身を守るために、住まいから避難しているイスラエル国民は約5万人もいる。ネタニヤフ政権は、これら避難民が安全に自らの住まいに帰還できるようにする、と言明している。それにはヒズボラのロケット弾、ミサイルを徹底的に破壊することが必要だ。

​ ただしヒズボラは、ハマスよりもはるかに強力・強大だ。レバノン議会にも議席を持ち。兵力はハマスの10倍近い約5万人を抱える。保有するミサイルやロケット弾は12万~20万発と推定され、精密誘導ミサイルも保有している恐れがあるという(写真=指導者ナスララの演説を聴くヒズボラ戦闘員)。​

 

 

​ イスラエルの最終標的は、ヒズボラの創設者の1人で、最高指導者のハサン・ナスララ(写真=テレビで演説するナスララ)だろうが、ナスララを殺害してもヒズボラ壊滅は容易ではない。

 

 イスラエル攻撃は、対テロ戦争の泥沼にはまり込みかねない入口にある。


昨年の今日の日記:「憧れのマチュピチュを訪れインティプンクを登った思い出、あれから11年(後編):インカのチャスキが走ったインカ道を登る」

 朝の散歩から帰り、パーク・ハイアット・ザンジバルの朝食を終えると、僕たちは荷造りをして、出発を待った。

 これで8日間の旅は終わり、あと1日は、エミレーツ航空機の中とドバイ空港でのトランジットで過ごすだけだ。


狭いザンジバル海峡を飛行機で渡る​

 9時頃にチェックアウト。前日まで乗ったのと同じバスで空港に向かう。

 乗るのは、プレシジョン航空という航空会社の便だ。狭いザンジバル海峡を渡るだけだから、搭乗時間は30分もない。

​ 離陸するや、緑のザンジバル島とその先にターコイズブルーの海が見える(写真)。タンザニア本土と違い、ザンジバル島は緑が深い。そのことは、前日のジョザニ自然保護区のハイキングで良く分かった。​

 

 

​ その後、ザンジバル海峡と珊瑚礁の島が見え(写真)、ほどなく着陸の態勢にはいる。

 

 

 

 

ダルエスサラーム空港で観たゴクラクチョウカの花​

​ そしてタンザニア本土の街並みが見えてきた(写真)。ダルエスサラームの郊外なのだろう。​

 

 

 

​ 僕たちの乗ってきたプレシジョン航空機(写真)の着陸したのは、ダルエスサラーム空港の国内線専用ターミナルだった。​

 

 

 ドバイからエミレーツ航空機で着いた後もそうだったが、ここから国際線ターミナルまではポーターが付かない。僕らは、自分たちのスーツケースを各自転がした。

​ 国内線から国際線に向かう途中の花壇に、黄色いゴクラクチョウカの花が咲いていた(写真)。南ア原産のこの花は、以前に南アフリカに行った時にあちこちで観た。その時の説明では、当時まだ存命だった南ア解放の英雄、ネルソン・マンデラ元大統領が愛した花だったと聞かされた。​

 

 

 長くはなかった旅の最後で、それを思い出した。


​謝辞​

 断続的に長く続けたタンザニアの旅(2024年6月17日~25日)紀行は、今回で終わります。これまでのご愛読、ありがとうございました。

(完)


昨年の今日の日記:「憧れのマチュピチュを訪れインティプンクに登った思い出、あれから11年(前編):マチュピチュ堪能もワイナピチュ登れず」

 いよいよ最終日。いつものように早朝に起き出し、辺りが明るくなった。

 最初の日から気がついていたが、パーク・ハイアット・ザンジバルの休館と新館を結ぶ通路のそばで、画家が1人、絵を描いていた。朝から晩まで、だ。


黙々とキャンバスに向かう画家の絵​

 宿泊客に売るのかもしれないが、全く商売気はなく、通る宿泊客に声をかけるでもなく、ひたすらキャンバスに向かっている。

​ 朝早くでも、もう絵を描いていた。展示されている絵を観て(写真)、これがティンガティンガ・アートなのか、と分かった。​

 

 

​ 1枚、ストーンタウンの迷路を自転車で行く人の絵が気に入ったが(上掲写真の下段の中央)、とても日本に持って帰れない。やむなく断念。​

​ 前日、書いた画廊の通路を絵を観ながら、ビーチに出て(写真)、朝のフォロダーニ公園に行く。​

 


ネコの多い島​

​ 公園からは前夜の賑わいは消え、朝の静寂が支配していた(写真)。​

 

 

​ 公園に2匹のネコが朝日を浴びている(写真)。ストーンタウンで気がついたことの1つに、1匹たりともイヌを見かけなかったことだ。その代わり、港に面しているせいか、ネコはどこでも見かけた。海に近い公園内だけでなく、ストーンタウン市街地でも見かけた。ザンジバルは、さながらネコの島である。ネコ好きの方のために、フォロダーニ公園で見かけたネコを何枚かアップしておこう。​

 

 

 


ケレル・スクエア越しのパーク・ハイアット・ザンジバルの景観​

​ ごく短時間だけ、カスバの迷路の中に足を踏み入れた(写真)。

 

 

 迷子になったら、朝食までホテルに戻れない。トバ口ですぐにケレル・スクエアまで戻った。ここから観るパーク・ハイアット・ザンジバルの景観(写真)は、いつでも心を癒やされる思いだ。素晴らしいホテルだった。

 

 

(この項、続く)


昨年の今日の日記:「旧石器時代の日本にはトラがいた」

 深圳市での18日の日本人学校に通う男児の殺害事件に関係があるかどうか分からないけれど、スターリニスト中国が日本産海産物の理不尽極まりない禁輸措置に対して、ようやく緩和への動きを見せた。


日本産海産物輸入禁止の一方、自国漁船団を三陸沖に出漁させる二枚舌​

​ 日本政府と国際原子力機関(IAEA)が20日午後、スターリニスト中国も加えたモニタリング(監視)体制を拡充することで合意した。日中両政府も合意文書を出し、中国による日本産水産物の全面禁輸措置の緩和に向けて調整に入ることを確認した(写真=福島県の漁民)。

 

 

 全面禁輸措置の撤回ではない。「緩和に向けて調整に入る」というだけだ。

​ そもそも福島第一原発(写真)の処理水放出は、スターリニスト中国も加わるIAEAが国際的安全基準に合致すると結論を出している。それなのにスターリニスト中国は、何ら科学的根拠も示さず、日本産の海産物の全面禁輸を強行した。その間、自国の漁船団を三陸沖に出漁し、漁獲しているという二枚舌措置を行っている(8月22日付日記:「スターリニスト中国は日本産水産物全面禁輸なのに、原発の先の三陸沖に大挙出漁という二枚舌を糾弾」を参照)。​

 


スターリニスト中国外務省は直ちに全面再開ではない、とわざわざ釘​

 自国の漁船団の出漁を禁止しないのは、スターリニスト中国当局も日本近海の海産物は安全であることを認めているからだ。それなのに、日本産海産物の禁輸をしているのは、政治的な思惑、つまり日本への圧力を加えて自国を有利な立場に置くという意思があるからだ。

 今回の合意も、全く不完全だ。理不尽な規制の即時撤廃でなく、「段階的な緩和」を模索するということに過ぎない。実際、スターリニスト中国外務省は、「直ちに輸入を全面再開することを意味しない」とわざわざ釘を刺している。さらに今後の日本側との協議でも「中国の要求が完全に満たされるのが前提」という信じがたい一方的条件まで付けている。


「核汚染水」プロパガンダが効き過ぎ、国内の漁民にも打撃​

 どこまで本気なのか、疑問に思わざるを得ない。その証拠にスターリニスト中国は、今も処理水を「核汚染水」と呼んでいる。処理水を「核汚染水」とするならば、日本側が大きな譲歩をしない限り、全面再開はない、ということになる。

​ 一方で、スターリニスト中国にも微妙な国内状況があるという。想定を超える国内経済への打撃だ。あまりに日本攻撃のために「核汚染水」とアピールしすぎたために、消費者の国内産水産物を忌避する動きも高まり、SNSには「収入が激減した」といった漁業者の悲痛な声が溢れているのだという(写真=浙江省舟山の水産物市場)。​

 

 

 しかも国際的には、自己の「核汚染水」というプロパガンダが全く広がらない。日頃の「戦狼外交」の一環とみなされているのだ。


道理の通らない強権国家の市場アクセスは危険​

 ともあれ、浮き彫りになっているのは、スターリニスト中国という、道理の通らない強権国家の市場に傾斜しすぎる危険性だ。

 これまで劉暁波氏のノーベル平和賞授与への反発で、ノルウェーに対し同国産サケをしばらく輸入禁止した。これに驚いたノルウェーは、大慌てで首相を訪中させて詫びを入れて輸入再開にこぎ着けた。以後、ノルウェー議会はノーベル平和賞の授賞対象にスターリニスト中国の民主派を選ぶことはなくなった。スターリニスト中国には、この成功体験があり、後に武漢肺炎の真相解明を求めたオーストラリアに対し、オオムギ、ワイン、石炭などあらゆる産物の輸入規制を加えた。また台湾に対しても、この前の総統選で、民進党候補への圧力で地盤の台湾南部の果実輸入を規制した。

 農林水産事業者も、スターリニスト中国とはそうした理不尽・非道な国であることを肝に銘じて今後の対中輸出を考えてほしい。


昨年の今日の日記:「初めての新聞小説を楽しむ毎朝:坂本龍馬に私淑し、明治政府の外相で不平等条約改正を成し遂げた陸奥宗光の青春」