大晦日の夜
新聞販売店をしていた
田舎の実家は
元日の配達用に
大量の折込チラシを
束ねる仕事を
しなければならなかった
作業途中で年越しそばの代わりに
近所の居酒屋が
やっていた
中華そばを出前で頼んで
家族みんなで食べた
その中華そばは独特の味わいで
子供の頃食べた
その中華そばが
それ以降食べたラーメンや中華そばのなかで
一番美味しい中華そばだった
その居酒屋は
僕が大人になる頃には
閉店してしまったので
もう食べることが出来ない
ただ 一度だけ
以前働いていた
職場の先輩に連れていってもらった
高級中華料理店で食べた
料理の中に
その中華そばの出汁の味に似た料理があった
多くの料理を細かく出す
店だったので
料理名は覚えていない
また
以前の職場は離れた街だったので
今はもう訪れる機会がない
ただ 田舎の居酒屋の
年老いた女将さんが
高級中華料理店で出て来るような
出汁の味を作っていたことが
今は不思議に思う