酒を飲んでいつのまにか寝入ってしまった夜明け頃、故郷の田舎の町を飛ぶ夢をみた。本通りの突き当たりにある神社の境内から、一直線に伸びる長い石段を滑るように降りて、鳥居の下を潜り、そのまま空に浮かんだ。家並みを逸れて、田んぼに向かう。田んぼの真ん中には川が流れていて、その上を飛んでいる。鳥の影のように、水面には自分の姿が映っていた。川の中には魚が何匹も泳いでいて、水中の餌を食べるためなのか、魚が身をくねらせるので、時々、銀色の腹が見える。飛んでいる高度は低くて、山の稜線が、まだ目の上にある。くるり、と寝返って空を見ると、青空の中に二つの太陽が両目のように並んで浮かんでいた。雲もないのに、太陽は少しも眩しくなかった。背泳ぎのように仰向けになって、ゆっくり滑るように飛びながら、どこか変だと思っていて、ああ、僕は乱視なんだと思ったとき目が覚めた。僕は近眼だけれど、幸い乱視はない。太陽が二つ見えたからそう思ったのかもしれないが、自分が空を飛んでいることも、乱視ということで納得したような記憶がある。
目が覚めた後も飛んでいた時の浮遊感は残っていて、くすぐったいような泣きたいような変な気持ちだった。




滝壺に落ちる早さで眠りつく夏の終わりに飛ぶ夢をみる