昔、いろいろなことに行き詰って、休日を利用して田舎に帰ったことがある。

子供の頃に遊んだ、小さな川の狭い川原に寝転んで空を見上げた。

夏だった。

青空に濃い雲がゆっくりと形を変えながら流れていく。

そのとき、ふと身体が空の雲間に落ちていくのではないかと不安になった。

夏の陽炎が空気を歪めていたためかもしれない。

とっさに両手で地面の草束を握っていた。

頭では空に落ちるなんてことはありえないとは分かっていた。

けれど、じっと見ていると空に吸い込まれそうな感覚がするのだ。満天の星空をじっと見ていると眩暈がしてくる、という文章がなにかの小説にあった。

それと同じ感覚なのかもしれない。

でも、どうせなら暗い夜空より、青空の中に吸い込まれたいと思う。

一度、野っ原に寝転んで、じっと空を見つめてみると面白いかも知れません。



重力よ吾を解き放ち天空の雲の谷間に落としめ給え