中学一年のとき同級生だった川井は、運動神経がとても良かった。
鉄棒で大車輪をする人間を始めてみたのも、川井だった。
その後一度も、大車輪をしている人間を直接見たことはない。
ある日、川井に呼ばれて彼の席に行くと、学生鞄の中から調味料入れのような瓶を取り出した。
中には鉄砲の銃弾がいくつも入っていた。
弾はすべてひしゃげていた。
使用した後のものらしかった。
ひとつやる。
そういって川井は、中から比較的整った弾を一個くれた。
拾ってきたものだという。
今になって考える。
あの弾はどこで拾ってきたのだろう。
数十キロ離れた町に陸上自衛隊の演習場があって、今でこそ道路も整備されてアクセスもよくなっている。
けれど、あの頃は峠道をいくつも越えなければ行けない遠い町だった。
それに、演習場に行けたとしても、子供が入れるのだろうか。
あの日、弾を入れた瓶を大切そうにしていた川井の様子を思い出すたびに、不思議な気持ちになる。