もう笑われるのは承知のうえで書きますがね、


私にとって歯医者さんは

この世でゴキブリ以上に嫌いなんです。

ランク付けしたら、
カエルに次いで第二位です。


そんなだから、
前回歯医者さんにいったのはもう5年近く前だし、
その前は11年行きませんでした。

11年行かなかったのに、
5年前の前回、歯医者さんに行ったのは
歯が欠けたからです。

そのときも
行きも帰りもあまりの恐怖と痛みで泣きました。


子供のときは
数人の歯科助手さんに手足を押さえられながら治療を受けた、大暴れkidでした。


例え
そして事実
幼稚園児にバカにされても
歯医者さんがイヤでイヤで怖くて仕方ないのです。



そんな私に奇跡が起こりました。


今週月曜日、
右の頬骨の下あたりに激痛があって目が覚めました。


それから4日間、絶える事なく痛みは続き、
ついに木曜日の夜、
痛みで眠れないほどに。

鎮痛剤もあまり効かず‥‥


とうとう観念して、
歯医者さんに行くことにしました。


歯医者は痛いし怖いし大嫌い、
と騒ぐ私に
知り合いのおじいさんが
比較的新しくできた歯科クリニックを紹介してくれました。


パンフレットには
痛みの少ない治療
お客様とのコミュニケーション
最新医療
がかかれ、
医院長の他に、
矯正専門医、
小児科専門医が紹介されてました。

いっそのこと、小児科の先生に治療してもらいたいと思いました。

金曜日のお昼に電話し、
仕事を定時ダッシュしていける最短の時間の19時に予約しました。

とはいっても
当日予約の初診、ましてやお盆あけの金曜日なので、
混んでるから待ち時間があるのは覚悟のうえでした。


午後は鎮痛剤がようやく効いてきたので、
痛みは緩和されました。

一睡もせず、
薬を飲んだので、
本当なら眠い午後のはずが、
仕事後、歯医者さんに行くことが決まったために
目は恐ろしいほどパッチリ。

ただテンションだけが異様に低い状態で、黙々と仕事しました。


歯医者さんは
さすが新しいとあって綺麗でした。

受付をして、
1時間は待つ覚悟で
ため息つきながら、
背中をまるめて
それはもう情けないくらいしょんぼりと座って待っていました。


30分も待たずに呼ばれたときは
中途半端な覚悟だったので
全身に脂汗、
手まで震えてきました。


小さなクリニックは
個室治療で、
診察台の正面には、
我が家のそれより大きなテレビが
どこの国だか分からない大自然を映していました。

ニュージーランドに似た景色が映されて気持ちが晴れた頃
歯科助手ではなさそうなお姉さんがレントゲンを撮りますよと現れ、
レントゲン室に案内されました。

再び診察室に戻り、
診察台で待っていると、
間もなく医院長が登場しました。

若い医院長から、
先ほどとったレントゲン写真を見ながら説明があり、

親知らずにできた虫歯が原因で痛みがあることが説明されました。

初診で抜歯はあまり薦めたくないところだけど、
蕁麻疹が薬によるものではないみたいだし、
虫歯の状況からみて、
よっぽど親知らずを抜かないほうがいいという事情が無いかぎり、
抜いたほうがいい

とのこと。


私はこの時点でポロポロ泣き始めてたので、
先生はきっと、私が歯を抜くのが嫌なんだと思ったのでしょう。

抜歯を強制はしないよ

と何度もおっしゃってました。


私は

「先生、私は抜歯が嫌なのではなくて、
痛いのがとにかく嫌なんです。
今聞こえてる他の方の治療の音を聞くだけで倒れそうです」

と正直に訴えてみました。


音はどうしようもないし、何もしないのが普通の歯医者さんですが、
さすが個室とあって、
先生はすぐにドアを閉めるように歯科助手さんな指示しました。
(たぶん、普段はいちいち閉めないんだと思います)


そのあと、泣きながら、

私治療中も泣くと思うんですけど、
抜歯ってどうやるんですか
先生に説明を求めると

「実は鎌倉のある道の先にあるトンネルには幽霊がでて‥‥‥

なんて話を聞いてからそのトンネル行ったら恐いでしょう!?

と言われました。

はぁ、なるほど、じゃあ何も聞かずに抜いてもらったほうがいいですね

ということになり、
さっそく麻酔をすることになりました。

診察台が倒れると、恐怖と緊張が急激に高なり、
ハンカチを握る手に力がはいります。

麻酔というと、
小さい頃、麻酔の注射がものすごく痛かった記憶があり、
できないけど、歯を食い縛りたい気持ちでした。

ところがなんてことはない、
麻酔は注射ではなく綿棒でした。

ホッとしたのも束の間、
こんなんで麻酔効くのか!?
と疑心暗鬼になりました。

ところが、時間がたつにつれ、
確かに奥歯のまわりが麻痺してるのがわかる。

これは素晴らしいと思えるほど余裕が出ると、
麻酔薬の味まで分かるように。


「バナナの味がする」

そういうと
すかさず先生は

「よく分かりましたね!これに気付くのは100人中1人ですよ!」

んな、オーバーな
と思っていたら、今度は歯科助手さん

「子供たちにバナナの味っていっても、みんなバナナじゃない!って言うんですよー」


と、なにやらほんわかモード。


「ところで先生、本当に私痛いの嫌なんです」

としつこく食い下がる私に、先生の回答。

「足の小指を角にぶつけると痛いですよね。あれよりは絶対に痛くないですから大丈夫。」


絶対ウソだ!!!!
と思いましたが、もう後にはひけないし、先生たちもリラックスしてーという感じだったので、黙っておきました。



そんな雰囲気のまま抜歯へ‥‥‥

何が行われてるかわからないまま
でも消えない恐怖のなかにいたので、
唾もたまっていないのに、
何度も何度もゴックンしてしまいました。


恐らく、
2~3分に1回のペースだったと思いますが、
治療が終わるまでずっと

「息してくださーい」
「鼻で呼吸するんですよー」
「いるんですよー、息止めちゃう人。苦しくなるから息しましょうねー」

と先生が声かけてくれました。

おかげで、その度に呼吸することを思い出して、
トータル30分もしないうちに終わりました。


終わって冷静になると、
歯科助手さんが物凄い美女ということに気付きました。

山田優ちゃん似で、
背も高くて、スタイル抜群ラブラブ!
しかも、
治療後にいろんな説明をしてくれ、私の「明日飲み会なんですけど、お酒飲んでいいですか?」という質問にも、にっこりして答えてくれました。

なんだかんだ、15分くらいはお話してくれていた気がします。


最後に先生は「泣かずにできましたね」とおっしゃいました。

治療中も治療後も
そういえば、先生の言ってたとおり、
小指を角にぶつけるほどの痛みはありませんでした。


その帰り道
私は歯医者に行って、
生まれて初めて泣かずに帰りました。

いつもは頑張った自分にご褒美を買って帰るのに、
今回はご褒美買うほどつらくなかったので、まっすぐ帰りました。

家に着くと、
私がいつもの泣き顔ではなく笑顔で帰ったので
家族はビックリ仰天しておりました。



なんてことはない
ただの親知らずの抜歯の話です。

ですが
私にとっては奇跡のような出来事でした。