卑弥呼主義〜女王様の奇妙な電話〜 | 卑弥呼主義

卑弥呼主義〜女王様の奇妙な電話〜

これは、幾重にも重なった偶然という愉快な物語だ。
運命を司る時の女神が仕掛けた、つまりは必然の物語だ。

女神様は焦らすかのように、時の車輪をゆっくり回す。

まるであの日の見た至極滑稽なある日常のワンシーンの様に。







am08:17
【お前は、今まで食ったパンの枚数を覚えているのか…お前は、今まで食ったパンの枚数を覚えているのか…お前は、今まで食ったパンの枚数を覚えているのか…】←(注:メール着信音です)


Dio様ってば朝から何ですか、うるせぇですよコンチクショー。
せっかくのお休みの早朝に、メール着信音で目を覚ましたアタシは至極不機嫌だった。

何々…?『素敵な出会いをプロデュース致します。美少女系から有閑マダムまで…うんたらかんたら』

出会い系かよ。
どうせなら美少年からファンファン大佐まで…とか もっとアタシがそそるような文面を打ち出してみろってんだ。ウスラトンカチめ。

欠伸を一つ。もう一度布団を顔まで引っ張りあげて二度寝を決め込もうとした時。

けたたましく電子音を鳴り響かせる携帯電話。いい加減ウンザリなわけだが、致し方ない。
布団から顔を出すと、眠たい目を擦り電話に出る。

『はいはい、何だよ朝っぱらか…』
「ッハァハァ…さっきは途中で切れちゃってゴメンネ…ハァハア、ア、ねぇもうこんなに固くなっちゃったよ…###ちゃんのはどうなってんの…?…ンッ…」


…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………オィ。
何者だコイツ。
朝っぱらからテレフォンSEXかよ。
気持ちワリィな。
【途中で切れちゃって】とか云ってる時点で間違い電話だよな?

恐る恐る 着信相手を確かめると 友人のS君だった。
真面目な奴だと思っていたのに、とんでもないムッツリスケベだった。

裏切られた感満載のアタシは、ちと仕返しに悪戯してやろうと思った。


『あぁ…アタシのココも大変…恥ずかしいよぅ…』

S「…俺、もう……え…?って、あれ?###ちゃんだよね?声どうしたの、風邪ひいた?」

『(あ、バレた)…………テメェ、コノ声は地声だよ。悪かったなダミ声で。朝っぱら気色の悪いもん聞かせやがって。いっぺんテメェのケツの穴にバスケットボール突っ込んでやりたいよ。そのまんまゴールにスラムダンクだ。ドアホウ』

S「………………」

『なんとかいったらどうなんだよ。ニュージェネレーションミストレスの空条卑弥呼女王様がお相手じゃ不満かコラ』

S「……間違…えました」

『気付け。もっと早く気付け。このドブ鼠が!朝から何やってんだお前は。呆れてアタシの口からはお前を罵倒する言葉しか出てこないよ』

S「っちょっ!忘れて忘れて忘れて!今の無し!アッー!全部!一切合切忘れて!All erase!!!!」

『携帯片手にエアーセックスですか。お前は今までその右手で何億のオタマジャクシさんを殺害したんだ?言ってみろ、このシリアルキラーめ』

S「らめぇえ!惨めになるぅう~!ソレ以上言わないでぇええ」

『いいから言ってみろ、オナニー狂いのドブ鼠。何億のオタマジャクシさんを惨殺した?』

S「お願いつかまつる、勘弁してつかぁさい」


何弁だよ、つかあさいって。
手探りで灰皿を探して ガラムのスーリヤに火を点ける。

S「いくらで忘れてくれますか?」

『なんでもかんでも金で解決しようとするのがお前の悪い癖だよな。…だがしかし、アタシは福沢諭吉さんが嫌いじゃない。お前の月の給金は幾らだ?』

S「45万ですが」

『家賃、ローン、飲食費用、水道光熱費に携帯代を引くと幾ら残る?』

S「25万」

『ククク…じゃ25万』

S「っええええ?!!!」

喉をクツクツと鳴らし笑うと、電話の向こうの薄ら馬鹿は、あわてふためき声を裏返して間抜けな声をあげた。

『ハッ!安いもんだろうさ。ってか、お前の彼女ちゃんって〇〇〇ちゃんだよな?誰だ###ちゃんって』


楽しいなぁ。
また、面倒臭い事件が アタシに突っ込んできやがった。
寝ぼけ眼の脳みそに血液が充満し、凄い勢いで覚醒していくのが分かる。


S「……………〇〇〇に…だけは言わないで下さい。お願いします」

『どうだろうねー、言わなきゃいいって、メールやら手紙ならイイって事?』

遮光カーテンのせいで薄暗い部屋に、薄く浮かび上がる紫煙を目で追いかけながら、阿呆の様な屁理屈をこねる。


嗚呼、ヤバイ位楽しい。
ぶっちゃけ金なんかいらない。コイツがあわてふためいて、みっともなくあがいて、困りに困って啜り泣く 豚みたいな様が見たいだけ。
もがきまくって、アタシの黒いネイルエナメルの指でグッチャグチャに引っ掻き回して 堕ちて 狂って 縋り付いてくる 惨めな姿を 脳裏に焼き付けたいだけ。


ただの男友達にこんな感情を抱くアタシは きっときっと何処かオカシイのだろう。
多分狂ってる。
ずっとずっと昔から。




だって、アタシの頭には次の意地悪が出番を待つかのように 次々に溢れて止まらない。

次の言葉を口にしたら二度と戻れない。
無味無臭の生活。
普通の友達関係。


ミルキーみたいに甘い誘惑。
バニラみたいに 白くて甘ったるい魔性。
中毒になりそうな着色料がドップリの、ギトギトの欲望。


しかし、どうやら アタシはどこまでも欲深で強欲で貪欲らしい。

甘い誘惑にはめっぽう弱いみたいだ。
面倒臭ければ面倒臭い程
アタシの本能が 脱皮をするが如くめきめきと音を立てて 正体を表す。









『会ってお話したいね。全部。電話だとお前の顔が見えないもの』









たった三言。
でもほら、やっと車輪がいつもみたいに倍速で回り出した。


ここで、くわえ煙管がトレードマークの悪魔の回想録のページがめくられる。
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