卑弥呼主義〜きょうのにっき〜 | 卑弥呼主義

卑弥呼主義〜きょうのにっき〜

『なにお前、これが欲しいの?』
アタシはある物を摘み、男の目の前でぶらつかせる。
男の目は何時になく真剣だ。


「欲しいです」

『欲しいんだったら欲しいで、それなりの態度をとるということを覚えなさい』

掠れた声で懇願するように、上目使いでこちらを見上げるその仕種に、アタシの項は粟立ったように熱を持つ。

熱を持て余すアタシの心拍数はドクドクと速度を増し、同調するかの様に呼吸が荒くなる。



「お願いします。欲しいです」


やめて。止まらなくなる。
そんな目で見ないで。
アタシは動揺を無理矢理に眼鏡の奥に押しやって、何時もの意地の悪い言葉を紡ぎ出す。


『どれくらい?』

「土下座しても足りない位です」

男はそう言うと床にひざまづき、熱の篭った潤んだ目でこちらを見据える。
なんと真っすぐな目なのだろう。

感心と呆れの混じった目で椅子に座ったアタシは、床の男を見下す。

ヤバイね。止まらなくなってきた。その証拠にアタシの口はこんなに饒舌。

『あっはっは!人としてのプライドという物がないのかな、君は。ヘドが出るよ』

「何とでも言ってください」

顔を赤らめ、フイッとそっぽをむく仕種がまた堪らなく愛くるしい。

「…卑弥呼さんは意地悪です。こんなに欲しいってお願いしているのに、さっきからはぐらかしてばかりだ」

『ハッ!全ての物がお願いしたからって必ず手に入るなんて甘い考えはドブ川にでも流しちまいなよ、僕ちゃん。やっぱりお前にはまだ早いよ』


鼻で笑うと手探りで見つけた時化った煙管に火を点け、口元を歪ませた。
煙がアタシの目の前で妖しく踊る。


男は赤茶色の短髪をグシャグシャと掻きむしり、眠たそうな垂れ目がちの目でこちらを睨んで小さく呟いた。

「………イジワル」





プツン。






『ッツアアァァアアアアAAHhhhぁぁあ!!!!』

男はアタシのいきなりの咆哮に脅えた小動物の目をして、正座のままビクッと小さく跳び上がった。

「!?なっ!卑弥…」
『嗚呼!可愛いよ可愛いよ、何この生物!可愛すぎるよ何処の星の生物だよ。持って帰って一から躾て犯しまくりたいよ!何が欲しい?金か土地か株か?!もってけ泥棒コンチクショー、あいつは貴方の大切な物を盗んで行きました、ってかアタシの心だからソレー!!!!っハアハア』


一息でまくし立てると、床にへたりこむ男、いや少年は変態を見るような目つきでドン引きしていた。



「いや、僕はその限定フィギュアが欲しいです。土地とか株とかいりませんから」

溜息まじりに霜柱が立ちそうな程冷静な台詞を吐かれた。



と、扉の向こうから痛い視線と冷たいオーラが漂ってくる。


「うちの息子とのSMごっこは楽しかったかい?卑弥呼女王様」


もうアタシ 汗びっしょびしょ。
手とか脇の下とか(熱帯雨林デスカ?)みたいな状態になってる。
ヤバイヤバイヤバイ。
目はバタフライでもしてんじゃねーか?って位泳いでるし、喉カラッカラだし。


『えへへ☆ごめんちゃい♪』

K「ソレ可愛くないよ。キモい」





………えーっとですね、今友人Kさん宅にお呼ばれしてまして、Kさんの息子はんに限定フィギュアを見せびらかして意地悪してただけなんです。
出来心です。
誓います。
若い小僧に言葉責めなんて滅多に出来ないから、ちょっと調子に乗りすぎちゃいました。


『だからごめんってば!責任もって息子さんはちゃんとアタシの嫁にするから!安心して!このコ、アタシに下さい』

K「死ねペド!」

『ペドじゃない!ショタコンだ!』

息「じゃぁパラフィリアのサディスチンですか?」

『アラヤダ、息子君ったらオマセさん。何処で覚えたのそんな卑猥な言葉!!』

息「お母さんの本棚の秘蔵書です」

中学生の口から出て来る台詞とは程遠いマニアックな言語にアタシとKは絶句する。
ってか、この母親は普段どんなエロ本読んでんだよ。
流石、腐女子の権化!!



まぁ、なんやかんやあってアタシは夕飯をご馳走になったり美味しいお酒に舌鼓をうったりで、楽しい時間を過ごしタクシーまで呼んでいただいておん出されたワケだが。

勿論 限定フィギュアはちゃんとプレゼントするつもりで持って行ったし、ちゃんと息子君にあげてきた。
アタシ 偉い。



でも、日常会話の延長の筈だった 言葉責めにはなかなかどうしてぐっとくる エロスがスパイスのようにちりばめられていて 病み付きになりそうだ。ヤベ。

帰りのタクシーで息子君との会話を思い出して アタシの加虐心がウズウズしちゃったのは内緒なんだゼ。





これで 今日のグダつきにグダついた日記はおしまいなんだゼ、ウン。
アディオス Kid!!