銀行が営業で外貨保険を持ってきました。以前書いた相続したドル用ですね。

金融業界の営業は、いろいろと批判されていますけど、批判されるネタ、つまり悪質商品も数年単位で変遷しています。時系列でざっくり並べると、

投信の回転販売
ラップ口座
一時払いの保険

なのだそうです。確かに父親が買った野村のラップは悪質でしたね。あと、残された明細から推測するに、父親に保有していた株を安値で売らせて投信を買わせた疑いも野村にはあります。それはさておき、この一時払いの保険のリスクは

為替リスク
手数料などのコスト
カントリーリスク

の3点ですが、このうちコスト部分が問題になっているみたいです。あと一時払い保険には固定金利と変動金利があるのですが、変動の場合は運用部分がブラックボックスになっているという点も問題になるみたいです。

で、その変動金利の一時払いも持ってくるだろうと予想して、そこを突っ込むかと思っていたら、固定利率のヤツを持ってきました(運用がブラックボックスな点を指摘しようと情報を集めていたけど、無駄になった....)。ただ、やっぱり罠はあったようです。10年固定金利で4.5%なのですが、これをまるまる信じて契約するとまずいことになるわけで、いろいろチェックしました(まだざっくりとした試算だけで、さらに調べるべきことも出ていますが....)。

保険は数本持ってきたのですが、銀行の一押しを例に考えてみます。まず、数字は以下の通りです。

年数     10年
金利     4.5%
実質金利   4.15%
購入手数料  5%
送金手数料等 別途
年金管理費  1%

となっています。

第1に、購入手数料が5%ですので、購入時点で元本が95%に減ります。投信では購入手数料がゼロのいわゆるノーロードが主流になっており、それ以外でも3.3%がよく見る数字なので、それに比べて高い数字になっています。ただ、中には7%という保険もあるようです(さらに上があるかもしれませんが、見つけた範囲では7%が最高でした)。

第2に実質金利、金利から実質金利を引くと0.35%となります。この差の部分が、投信の信託報酬にあたる部分ではないかと考えられます。見つけた中では、0.65%という数字もありました(これもさらに上があるかも)。つまり、営業では見た目の利率が強調されるけど、実際の金利はもっと低いということになります。

で、元本から5%引いて、4.15%を1年複利で計算して満期の元利額を割り出し(念のため年金管理料1%を引く)、それを5%引く前の元本と照らし合わせて利率を再計算すると、だいたい3.5%くらいとなりました。つまり、提示された利率(というか営業トークで強調された利率)よりも1%くらい低いという結果になります。

ただ、投資における一般的な年利は3~4%といわれているらしいので(どのような運用をするかの条件にもよりますが)、3.5%という数字はそう悪いわけではないことになります(贅沢言うと、3.6%なら10年で1.5倍なのでキリがよくなると思うのですが)。でも、4.5%を強調してくるんですよね。ちなみに、ネットでは5.2%という数字も見つけました。いずれも建前上の数字です。いろんな数字(何年後にいくらになるかなどのシミュレーションの数字など)も、この建前の利率で計算して示されているみたいなんですよね(面倒くさいからまだ検算していませんが、利回りの数字を見る限りはこちらの数字と合わないので、たぶん)。いずれにせよ、この建前の利率は信じてはいけないというのが、まず押さえる点のようです。

もうひとつ、情報公開というか情報の非対称性というか、本とかに出てくる難しい言葉で表される問題があります。今回の問題に当てはめると次のように言えます。

まず一時払い保険は、山のような保険会社数があり、それぞれがかなりの数の保険を売っています。でもって、それぞれの内容が利率を含めて微妙に異なっています。さらに、それらの詳細の一般に公開していない。つまり、いろんな業者の似たような保険の数字を調べようと思っても、なかなか出てこないわけです。おそらく、このことが情報非対称性のひとつの事例なのだと思います。つまり、利率や手数料の水準が妥当かどうか、判断材料が探せないわけです。簡単に言うと比較が出来ない。

これが投信の場合、数字が公開され、モーニングスターとかみんかぶとかで検索可能で、比較も可能です。そうなると、手数料などのコストについても、だいたいの妥当な水準が見えてみます。保険の場合はそれがない。この見えないという点、あるいは妥当な水準がわからないという点が大問題ということだと思います。

あと、検討しておく点といえば税金ですかね。実質的に金融商品として保険を売って来るわけですけど、制度上は保険と見なされて課税されます(当たり前といえば当たり前ですけど)。投信だと利子のみに一律約2割のところ、年金だと受け取る総額(元本含む)に総合課税、一括だと1/2算入で、分割だと全額になります。これをどう考えるかです。

元本に対する元利が150%だとしましょう。投信の場合、150%のうち利子部分の50%にのみ20%(正確には20.315%)の税がかかります。対して、保険の場合、一括受取だと150%のうち(1/2なので)75%が総合課税に加算されるのか、あるいは利子部分にのみの25%が加算されるのかで変わってきます(この点はまだ調べていないのですが、一応必要経費というのがあるので元本は課税額から引けるのではないかと思われます。この点は今後、調べます)。分割受取でも同じ問題が起きます。この点の説明がなく、「年金額が増えます」の一点張りで押してくるんですよね。お得感だけを強調して、ちゃんとした数字を示さないわけです。ここも問題といえば問題ですね。

まぁ、投信と比べた場合、固定利率だと(為替はさておくとして)不確実性は排除できますから、その費用としてゲインが減るというのは仕方が無いかと思います。投資の平均的なゲインを引き出せるということであればよし、ということでよいかもしれません。それに、不確実性を排除した年利3.5%なら、数字としては悪くはないわけですが....。


ちなみに、前回の書評で少しだけ書いた『非産運用』では、ここまで具体的な計算は出てこないのですが、このような計算の背景を理解するという点では、かなり参考になっています。実際、この本で指摘されていたとおり、持ってきた保険は全部銀行の系列保険会社か、もしくは提携している海外の保険会社でしたしね。たぶん、キックバックもあるんでしょうね。