今井科学という模型メーカーをご存知ですか? | よもやま雑記噺

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今から21年前の2002年。自主解散という形でひっそりと或る模型メーカーが廃業しました。

その模型メーカーとは今井科学という静岡にあった会社です。

現在60〜70歳位の年齢の方ならサンダーバードのプラモデルのメーカーだと言えば、恐らく知らない方はいらっしゃらないのではないかと思います。しかしながら、サンダーバードの大ヒット以降は商戦的にはなかなか恵まれず、昭和44年頃に一度、倒産してしまいます。

その時、金型の一部と社屋、工場などをバンダイに譲渡しました。当時、清水市にあった今井の社屋は、そのままバンダイ模型の社屋となりました。今井科学からバンダイ模型に移られた社員の方も居られたようで、以降バンダイ模型はキャラクター模型でも数多くのヒット作を生み出して行く事になります。

今井科学は1970年代初頭に静岡市に居を移して、企業活動を再開する事となります。2002年の自主解散時まで居を構えていた社屋は自分の実家から自転車で5分位の位置にあり、社屋に隣接する形で商品倉庫があったりして、どういった経緯かは忘れたものの社屋や倉庫にも入った記憶があり、小さい頃から最も慣れ親しんだ模型メーカーでした。

今井科学が企業再開した際に倒産前に大ヒットした、サンダーバードのあるプラモデルをリニューアルして発売しました。それがこちらです。



サンダーバード秘密基地です。初版キットは昭和43年に発売され、豪華な装丁とブルジョワジーな価格で発売され注目を集めました。モーターギミックなどはある程度は組み込み済みで発売されていましたが、なかなかハードルの高いキットだった事は間違いないようです。

この画像のサンダーバード秘密基地はゼンマイ動力によるキットとなっています。トレーシー島のパーツは塗装済みとなっており、基本的には初版と同形をしていますが、ギミックの変更などで作りが異なっているようです。





サンダーバード1号発射区画であるプールには表面にモールドがなされていますが、一度別のプラモデルに金型流用された際にこのモールドは無くなってしまったようで、再度モーター動力でサンダーバード秘密基地が発売された時にはモールドなしのままで発売されました。トレーシー島の塗装も以降はされないままでの発売となりました。







今井科学が廃業してからもアオシマから同キットはモーター動力で発売されていますが、ゼンマイ動力による大型のサンダーバード秘密基地はこの時だけのものなので、ある意味貴重かもしれません。最も近年デアゴスティーニから究極のサンダーバード秘密基地が発売されてしまったので話題性は無くなってしまったかもしれませんが夢のキットであった事は間違いありません。

1970年代中頃に自分が最もハマったプラモデルが今井科学のオリジナルである、ロボダッチでした。

♪人間だったら友達だけど、ロボットだからロボダッチ♪今井の今井のロボダッチ♪

テレビでよく流れていた、このフレーズは今でも忘れられません。自分が最も好きだったのが4個のプラモデルがシュリンクで1パックに纏められ、300円で発売されていたキットでした。ですが小さい子供にとっては300円すら高価です。当時はプラモデル屋さんで4個の中から好きなプラモデルを1個だけバラして売って貰ったりしていました。1個100円でしたがプラモデル屋さんが、ごく普通にバラしてくれていた事が本当に嬉しかったものです。モグラロボやバーベルロボが好きでした😊。

1981年に社会化現象ともなった第一次ガンプラブームが落ち着いた1982年に今井科学がまたもやスマッシュヒットを飛ばすプラモデルを発売します。





1982年に放送スタートとなった、超時空要塞マクロスのスポンサーとなり、プラモデル開発をスタートさせると、その出来の良さから爆発的なヒットとなりました。何故か今井科学と共同でスポンサーとなっていた、アリイのプラモデルの出来が今一つな事もあってか、今井のマクロスプラモデルの売れ行きは凄まじいものがありました。

以降、超時空シリーズとしてオーガス、サザンクロス、タツノコプロ制作のモスピーダ、ガルビオンなど精力的に発売を続けていましたがマクロスを凌駕する売れ行きにはなりませんでした。

そんな中、今井科学に2度目の危機が訪れます。1990年頃からマクロスのプラモデルがバンダイから発売されるようになりました。今井科学が開発したキットがバンダイ名義で発売され始めた事に最初は何故?と思っていましたがドル箱である、マクロスの金型をバンダイに売却しなければならない程に経営は苦しかったんだと思います。

バンダイはOVAのマクロスII以降、マクロス関連のプラモデルを自社開発するようになりますが、第1作となる、マクロスプラモデルは今井から発売されていたものの再販を続けていました。バトロイドバルキリーは一部パーツを新調する事でより完成度の高いものとはなりましたが、それ以外のキットは今井が開発したままの形で販売されていました。それだけ今井のプラモデルの出来が素晴らしかった証拠でしょう。

当の今井科学は1990年代初めにかろうじて、新規製作の1/350 サンダーバード2号を発売しました。これは今の目で見てもサンダーバード2号の最高傑作とも言えるフォルムをしていました。以降は往年のキャラクターキットを復刻販売したりしていましたが苦しい状況が続く形となったみたいです。

今井科学というとキャラクターキットのイメージが強いのですが、1970年代から大人向けな商品展開も積極的に行っていました。





木製帆船模型の啓蒙です。今井科学が発行していたキングズホビーブックには木製帆船模型や帆船模型のプラモデル、製作に必要な工具等が紹介されています。1980年代に入ってからは木製模型のジャンルに建築模型が加わります。



到底、お子様には手の出ない価格設定と圧倒的な再現度、そして途方もないロングスパンで設定された製作時間など、購買層を限定した販売戦略は見事に的中したと思います。

自分が社会人となり初めて購入した木製建築模型が1/50 法隆寺金堂でした。30年近く前の事ではありますが、JR横浜駅西口にあったアリックニッシンで見つけてから、どうしても欲しくなり65000円位しましたが思い切って購入しました。メーカー提示製作時間は400時間でしたが、完成するまでに1年近くかかりました。





高さ40センチ、幅65センチ、奥行き60センチと桁違いな大きさですが、部材を1つ1つ加工しながら製作しなければならない木製建築模型はまさに修行といえます💦😭。

引っ越しの度に部材が破損したりしてますが、まだまだ形は保ってくれています。

そして晩年の今井科学の新作紹介として行きつけの模型店に置かれていた広告がこちらです。





1/40 薬師寺東塔。現在では小林工芸さんから発売されています。ですが当時、この模型が発売されているのを見た事がなく、本当に発売されたのか疑問に思っていたキットでした。このパウチされた広告は今井科学廃業後に店に残っていた木製建築模型を購入した際に無理言って頂いたものです💦🤣。広告は置いてあったのに、その店にすら置かれていないキットでした。まぁ価格が12万円もするキットなので、広告を見て注文が入ったら仕入れる位の位置付けだったのかもしれません😅。後年、名古屋に来てからネットオークションでイマイロゴの当キットを見つけて何とか手に入れましたが、木製建築模型の最高峰でもある1/40 法隆寺五重の塔と合わせて、死ぬまでには何とか完成させたいキットです😎。

今井科学が発売していた木製模型は現在、小林工芸とウッディージョーが引き継いで販売していますが、元々この2社が開発した商品をイマイブランドとして纏めて販売していたんだと思います。

小林工芸、ウッディージョーどちらも現在は独自な商品開発で多くのファンを魅了しているのは静岡出身として非常に嬉しいです。

今井科学は大ヒットとなる商品を多数、開発しながらも結局は廃業してしまいました。どちらかと言えば職人気質な会社だと言えるかと思いますが、商売人気質に欠ける面も多かった為に廃業せざるを得なかったのかもしれません。

波乱なプラモデルメーカーではありましたが、自分には最も身近な存在だった今井科学。

多くの方の記憶に残ってくれることを願います。