F1 第16戦 中国GP
中国GP観戦記 ミハエル、タイトルに大手
▽痛恨!ルノーの判断ミス
今回、ルノーは予選から完全にGPをコントロールしていた。
ここのところフェラーリ優勢のGPが続いていただけに、予選で天候に恵まれたと
はいえミハエル・シューマッハーを引き離す絶好のチャンスだった。
しかし、それをたった一つの判断ミスから失うことになった。
その判断ミスとは、アロンソの最初のピットインでフロントタイヤを交換したこ
とだ。
これにより一時は30秒近く差のあった、フィジケラとミハエル・シューマッハー
に逆転されてしまった。
その後、アロンソは路面が乾いてくるのを待ち、ドライタイヤに交換。
タイヤ交換後は、ファーステストラップも記録できていただけに、悔やんでも悔
やみきれない判断ミスだった。
アロンソが失速したのは、新しいフロントタイヤのが暖まるのが遅く、タイヤが
グリップしなかったからだ。
今回は特に気温が低く、タイヤ温度が上昇するのに予想以上に時間がかかってし
まった。
アロンソは4周程度で、温度が回復すると予測していたが、実際には8周から9周
もかかってしまった。
一度、ペースが落ちてしまうと、それが更にタイヤ温度の上昇を妨げてしまう悪
循環に陥ってしまう。
これは今年、ホンダが悩まされ続けてきた問題だった。
それがルノーを直撃したのだ。
大半のクルマは路面が乾く中、フロントタイヤ(特に左側)が摩耗していたが、
最初のピットストップでタイヤ交換せずに走り続けた。
アロンソはフロントタイヤの摩耗を訴えており、念のためフロントタイヤだけを
交換させたのだろうが、これが完全に裏目に出た。
それにしても痛い、ルノーとミシュランの判断ミスとなった。
だが、それにも負けずに最終的に2位になったアロンソはやはり素晴らしいドラ
イバーと言えよう。
今回、三位以下になった場合、残り二戦で大変苦しい立場に立たされることにな
っていたが、これでミハエルと同点。
ラスト二戦で勝負を決する。
▽ミハエル・シューマッハー渾身のアタック
今回、勝ったミハエル・シューマッハーだが、実際はかなりきわどい勝利だった。
最大のピンチは予選の第二ピリオド。
雨が降り続く中で、コンディションに合わないブリヂストンのスタンダード・
ウェットを履くミハエル・シューマッハーは第二スティントで脱落する可能性が
あった。
それを最後のアタックで、10位以内に滑り込むスーパーラップ。
トヨタを含むブリヂストン勢の大半が第一ピリオドで脱落し、マッサやウィリア
ムズ二台も第二ピリオドで脱落する中、BSユーザーで唯一第三ピリオドに進んだ
ミハエル・シューマッハー。
七回のワールドチャンピオンに輝いた偉大なドライバーの力をまた見せつけた。
グリップ不足のタイヤで、アタックすることは非常に難しい。
しかも、ミスが絶対に許されないラストアタックで、ベストラップをたたき出す
技術と精神力は脱帽だ。
第三ピリオドに入り若干雨が弱まったことも、ミハエルに味方し予選6位なったが、
それも第二ピリオドを通過できたからこそ。
現役も残り少ないが、他のドライバーとは力が違うことを証明した。
二回目のストップを終えた後のアタックも素晴らしかった。
ドライタイヤ交換直後、タイヤ温度があがっていない状況で、しかも路面はまだ
濡れている部分もあった。
その状況でものすごい走りを見せて、ピットアウトしてきた、フィジケラをかわ
した。
コンディションが難しければ難しいほど、ミハエル・シューマッハーは真価見せ
てくれる。
決勝レースでも雨がスタート前に上がったことは、ミハエルにとっては幸運だっ
た。
ただレース前、ちょい濡れの状態はブリヂストンに有利なコンディションである
と考えられていたが、想像以上にミシュランの出来がよく、乾きつつある路面で
もミシュランとブリヂストンの差は予想より大きくなかった。
それだけにルノーの作戦ミスはあったにせよ、今回の勝利は価値がある。
本当になぜ、引退するのかわからない。
▽ホンダ、順当な位置に
予選でホンダの二台は全く同タイムを記録。
予選3位、4位で二列目を占めた。
しかし、決勝で路面が乾いてくると、ミハエル・シューマッハーの敵ではなく、
ルノーにもついていけずに4位と6位になった。
これは今のホンダの競争力を表しており、順当な結果だろう。
なので、次の鈴鹿でも大きな期待はできないだろう。
特に次は2007年バージョンのエンジンを投入予定なので、信頼性が心配だ。
これは2008年からエンジン開発が凍結されることが決定しており、その開発中止
のエンジンの原型が今年の日本GPで使用されるエンジンになると決まったからだ。
話しが複雑なのだが整理するとこうなる。
今のところエンジン開発が凍結されるのは2008年から。
だが元になるのは2006年に使用していたエンジンになる。
2007年のエンジンで、2008年を戦うわけではない。
これはFIAがエンジン開発凍結を2007年度から前倒しで適用したいために、チーム
側に圧力をかけるための措置と考えられる。
つまり、エンジン開発凍結は2008年からなので、2007年はエンジン開発しても良
いけど、どうせ2008年は2006年バージョンのエンジンを使うのだから2007年の開
発は無駄。
だったら2007年からエンジン開発凍結しようよというのがFIAの狙いだ。
最後の鈴鹿になりそうなので、ホンダにはがんばって欲しいが、開発不足のエン
ジンだけに信頼性には不安が残る。
スーパーアグリの山本左近は初の完走。
難しいコンディションだったので、とりあえず良かった。
もう一人の佐藤琢磨は14位を走行していたが、最終ラップで順位を争うハイド
フェルドとホンダの二台に周回遅れにされるときに、三台の結果に影響を及ぼ
してしまい、それが元で失格となってしまった。
琢磨はハイドフェルドを先に行かせようとラインをイン側にずらしたのだろう
が、その前に周回遅れのアルバースがいてハイドフェルドは行く手を阻まれて
しまった。
それにより、バトンはハイドフェルドをかわしたが、バリチェロとハイドフェ
ルドは接触。
佐藤琢磨は一連のアクシデントの責任を取らされる結果となった。
琢磨は、ハイドフェルドを前に行かせようとしてレコードラインを外したのだ
が、アルバースが前にいて、さらにイン側からホンダの二台がくる状況の中で、
難しい判断を強いられてしまった。
▽最後の鈴鹿にむけて
ミハエル・シューマッハーとアロンソは同点で、鈴鹿を迎える。
はっきり言って、ドライバーズ・サーキットである鈴鹿でこの二人以外が1位、
2位になるのは難しいだろう。
そうすると鈴鹿でどちらが勝つにしても、2点差で最終戦に行くことになる。
そうすると、勝ち星が多いミハエル・シューマッハーが圧倒的有利だ。
そう言う意味で、今回ミハエル・シューマッハーが優勝した意味は大きい。
今回の結果でミハエル7勝、アロンソ6勝となったからだ。
もし、次のレースでミハエルが勝てば、アロンソが2位でも王手をかけられる。
最終戦でアロンソが勝って、ミハエル・シューマッハーが2位でもチャンピオン
はミハエル・シューマッハーになるからだ。
そしてよほどのことがない限り、ミハエルが2位以下になることは考えられない。
ミハエルは次のレースでアロンソが勝った場合も、2位になれれば、最終戦で勝
つことにより、アロンソの結果にかかわらずチャンピオンになることができる。
そう考えると同点とはいえ、アロンソは追い詰められた。
鈴鹿では追い抜きがほとんど不可能なので、予選のアタックが非常に重要。
第三ピリオドの二人の最後のアタックが、大注目だ。
ここで鍵を握るのはライコネン。
この二人に対抗できる唯一の存在だが、マクレーレンの調子次第となる。
もしライコネンがこの二人に割ってはいるとなると、それがチャンピオンシップ
の行方を左右しそうだ。
当面、最後になる鈴鹿でこの偉大な二人のドライバーがどういう走りを見せてく
れるのか、非常に楽しみだ。
どちらにしても、今回のように天候に左右されることなく、勝負が決することを
望みたい。
▽痛恨!ルノーの判断ミス
今回、ルノーは予選から完全にGPをコントロールしていた。
ここのところフェラーリ優勢のGPが続いていただけに、予選で天候に恵まれたと
はいえミハエル・シューマッハーを引き離す絶好のチャンスだった。
しかし、それをたった一つの判断ミスから失うことになった。
その判断ミスとは、アロンソの最初のピットインでフロントタイヤを交換したこ
とだ。
これにより一時は30秒近く差のあった、フィジケラとミハエル・シューマッハー
に逆転されてしまった。
その後、アロンソは路面が乾いてくるのを待ち、ドライタイヤに交換。
タイヤ交換後は、ファーステストラップも記録できていただけに、悔やんでも悔
やみきれない判断ミスだった。
アロンソが失速したのは、新しいフロントタイヤのが暖まるのが遅く、タイヤが
グリップしなかったからだ。
今回は特に気温が低く、タイヤ温度が上昇するのに予想以上に時間がかかってし
まった。
アロンソは4周程度で、温度が回復すると予測していたが、実際には8周から9周
もかかってしまった。
一度、ペースが落ちてしまうと、それが更にタイヤ温度の上昇を妨げてしまう悪
循環に陥ってしまう。
これは今年、ホンダが悩まされ続けてきた問題だった。
それがルノーを直撃したのだ。
大半のクルマは路面が乾く中、フロントタイヤ(特に左側)が摩耗していたが、
最初のピットストップでタイヤ交換せずに走り続けた。
アロンソはフロントタイヤの摩耗を訴えており、念のためフロントタイヤだけを
交換させたのだろうが、これが完全に裏目に出た。
それにしても痛い、ルノーとミシュランの判断ミスとなった。
だが、それにも負けずに最終的に2位になったアロンソはやはり素晴らしいドラ
イバーと言えよう。
今回、三位以下になった場合、残り二戦で大変苦しい立場に立たされることにな
っていたが、これでミハエルと同点。
ラスト二戦で勝負を決する。
▽ミハエル・シューマッハー渾身のアタック
今回、勝ったミハエル・シューマッハーだが、実際はかなりきわどい勝利だった。
最大のピンチは予選の第二ピリオド。
雨が降り続く中で、コンディションに合わないブリヂストンのスタンダード・
ウェットを履くミハエル・シューマッハーは第二スティントで脱落する可能性が
あった。
それを最後のアタックで、10位以内に滑り込むスーパーラップ。
トヨタを含むブリヂストン勢の大半が第一ピリオドで脱落し、マッサやウィリア
ムズ二台も第二ピリオドで脱落する中、BSユーザーで唯一第三ピリオドに進んだ
ミハエル・シューマッハー。
七回のワールドチャンピオンに輝いた偉大なドライバーの力をまた見せつけた。
グリップ不足のタイヤで、アタックすることは非常に難しい。
しかも、ミスが絶対に許されないラストアタックで、ベストラップをたたき出す
技術と精神力は脱帽だ。
第三ピリオドに入り若干雨が弱まったことも、ミハエルに味方し予選6位なったが、
それも第二ピリオドを通過できたからこそ。
現役も残り少ないが、他のドライバーとは力が違うことを証明した。
二回目のストップを終えた後のアタックも素晴らしかった。
ドライタイヤ交換直後、タイヤ温度があがっていない状況で、しかも路面はまだ
濡れている部分もあった。
その状況でものすごい走りを見せて、ピットアウトしてきた、フィジケラをかわ
した。
コンディションが難しければ難しいほど、ミハエル・シューマッハーは真価見せ
てくれる。
決勝レースでも雨がスタート前に上がったことは、ミハエルにとっては幸運だっ
た。
ただレース前、ちょい濡れの状態はブリヂストンに有利なコンディションである
と考えられていたが、想像以上にミシュランの出来がよく、乾きつつある路面で
もミシュランとブリヂストンの差は予想より大きくなかった。
それだけにルノーの作戦ミスはあったにせよ、今回の勝利は価値がある。
本当になぜ、引退するのかわからない。
▽ホンダ、順当な位置に
予選でホンダの二台は全く同タイムを記録。
予選3位、4位で二列目を占めた。
しかし、決勝で路面が乾いてくると、ミハエル・シューマッハーの敵ではなく、
ルノーにもついていけずに4位と6位になった。
これは今のホンダの競争力を表しており、順当な結果だろう。
なので、次の鈴鹿でも大きな期待はできないだろう。
特に次は2007年バージョンのエンジンを投入予定なので、信頼性が心配だ。
これは2008年からエンジン開発が凍結されることが決定しており、その開発中止
のエンジンの原型が今年の日本GPで使用されるエンジンになると決まったからだ。
話しが複雑なのだが整理するとこうなる。
今のところエンジン開発が凍結されるのは2008年から。
だが元になるのは2006年に使用していたエンジンになる。
2007年のエンジンで、2008年を戦うわけではない。
これはFIAがエンジン開発凍結を2007年度から前倒しで適用したいために、チーム
側に圧力をかけるための措置と考えられる。
つまり、エンジン開発凍結は2008年からなので、2007年はエンジン開発しても良
いけど、どうせ2008年は2006年バージョンのエンジンを使うのだから2007年の開
発は無駄。
だったら2007年からエンジン開発凍結しようよというのがFIAの狙いだ。
最後の鈴鹿になりそうなので、ホンダにはがんばって欲しいが、開発不足のエン
ジンだけに信頼性には不安が残る。
スーパーアグリの山本左近は初の完走。
難しいコンディションだったので、とりあえず良かった。
もう一人の佐藤琢磨は14位を走行していたが、最終ラップで順位を争うハイド
フェルドとホンダの二台に周回遅れにされるときに、三台の結果に影響を及ぼ
してしまい、それが元で失格となってしまった。
琢磨はハイドフェルドを先に行かせようとラインをイン側にずらしたのだろう
が、その前に周回遅れのアルバースがいてハイドフェルドは行く手を阻まれて
しまった。
それにより、バトンはハイドフェルドをかわしたが、バリチェロとハイドフェ
ルドは接触。
佐藤琢磨は一連のアクシデントの責任を取らされる結果となった。
琢磨は、ハイドフェルドを前に行かせようとしてレコードラインを外したのだ
が、アルバースが前にいて、さらにイン側からホンダの二台がくる状況の中で、
難しい判断を強いられてしまった。
▽最後の鈴鹿にむけて
ミハエル・シューマッハーとアロンソは同点で、鈴鹿を迎える。
はっきり言って、ドライバーズ・サーキットである鈴鹿でこの二人以外が1位、
2位になるのは難しいだろう。
そうすると鈴鹿でどちらが勝つにしても、2点差で最終戦に行くことになる。
そうすると、勝ち星が多いミハエル・シューマッハーが圧倒的有利だ。
そう言う意味で、今回ミハエル・シューマッハーが優勝した意味は大きい。
今回の結果でミハエル7勝、アロンソ6勝となったからだ。
もし、次のレースでミハエルが勝てば、アロンソが2位でも王手をかけられる。
最終戦でアロンソが勝って、ミハエル・シューマッハーが2位でもチャンピオン
はミハエル・シューマッハーになるからだ。
そしてよほどのことがない限り、ミハエルが2位以下になることは考えられない。
ミハエルは次のレースでアロンソが勝った場合も、2位になれれば、最終戦で勝
つことにより、アロンソの結果にかかわらずチャンピオンになることができる。
そう考えると同点とはいえ、アロンソは追い詰められた。
鈴鹿では追い抜きがほとんど不可能なので、予選のアタックが非常に重要。
第三ピリオドの二人の最後のアタックが、大注目だ。
ここで鍵を握るのはライコネン。
この二人に対抗できる唯一の存在だが、マクレーレンの調子次第となる。
もしライコネンがこの二人に割ってはいるとなると、それがチャンピオンシップ
の行方を左右しそうだ。
当面、最後になる鈴鹿でこの偉大な二人のドライバーがどういう走りを見せてく
れるのか、非常に楽しみだ。
どちらにしても、今回のように天候に左右されることなく、勝負が決することを
望みたい。
F1 第17戦 日本GP
▽アロンソ タイトルへ逆王手
信じられない光景だった。
トップを快走中のミハエル・シューマッハーのフェラーリから白煙が吹き出して
いる。
ピットアウト直後のトラブルだ。
最後のピットインを終えたミハエル・シューマッハーとアロンソの差は約5秒。
追い抜きが難しい鈴鹿サーキットのことを考えると、このままレース終了すると
考えるのが普通の状況だった。
だが、アロンソが激しく追い上げる中で、ミハエル・シューマッハーも一瞬の隙
も与えることがで
きなかった。
今年、何度も見てきた二人の激しいバトル。
この二台は激しくプッシュしあい、限界で走り続けていた。
新しい世代のチャンピオン アロンソと、皇帝シューマッハーの一騎打ち。
この二台の差は5秒あったが、それでも二人のこいつだけには絶対に負けられな
いという激しい意志がみなぎる、すごい走りだった。
見ている者の心を激しく揺さぶるドライビングはめったに見られるものではない。
レース中のミハエル・シューマッハーにエンジントラブル。
私のつたない記憶ではいつ以来か思い出せない。
記録によると111レースぶりのことらしい。
このエンジントラブル、前兆がなかったわけではない。
中国GPでマッサが交換したエンジンと同じスペックを今回も使っていた。
1週間のインターバルでは、対策は難しかったのかもしれない。
それにしても、痛すぎるエンジントラブルだった。
信頼性抜群のルノーもイタリアで、エンジントラブルに見舞われた。
これは、激しいタイトル争いが熾烈な開発競争を招き、それが遠因となってトラ
ブルが発生していると思われる。
少しでもパワーを欲しがる以上、ぎりぎりの開発が続けば、信頼性は多少犠牲に
なる。
しかし、このエンジントラブルもアロンソの素晴らしい走りがあったからとも言
える。
抜きにくい鈴鹿で、予選5番手はかなり厳しい順位だ。
しかも、予選でブリヂストンはミシュランを圧倒した。
シーズン後半のミシュランはブリヂストンに攻められっぱなしだった。
特に予選でのブリヂストンのパフォーマンスは素晴らしかった。
だが、アロンソはいつもあきらめなかった。
優勝こそ、カナダGPから遠ざかっていたが、粘り強い走りで常に上位をキープし、
縮められる得点を最小限にくいとどめてきた。
そして、今回もレース前にブリヂストン圧倒的優位の声の中で、スタート直後に
フィジケラをパス。
さらにラルフをコース上でパスすると、最初のピットインでマッサも抜き2位に
浮上した。
マッサは最初のタイヤがパンクして、早くピットインを強いられたため、抜かれ
てしまった。
ハイドフェルドの後ろで戻ったので、燃料の多いハイドフェルドに行く手を阻ま
れ、なす術がなかった。
ここからは、ミハエル・シューマッハーとアロンソの一騎打ち。
常に5秒前後の間隔をキープし、共に譲らない。
この二人だけ別次元の世界にいるかのような奇妙な感覚。
かつてのセナとプロストの走りを彷彿する激しいバトルだった。
そして、運命の36周目にミハエルのエンジンは白煙を吹き出し息絶えた。
これによりアロンソ126ポイント、ミハエル・シューマッハー116ポイントで、差
は10ポイント。
残りはブラジルGPを残すのみ。
正直、ミハエル・シューマッハーの逆転チャンピオンは数字上は可能だが、厳し
くなった。
ミハエル・シューマッハーはおそらくブラジルGPで優勝するだろう。
だが、アロンソはリタイヤを避けるためリスクをできるだけ避けた走りをするだ
ろう。
こういう時のアロンソは、本当に強い。
▽日本勢の日本GP
トヨタはブリヂストンタイヤのアシストもあり、予選で3位、4位を得たが決勝で
はルノーの敵ではなく、結果的にはバトン、ライコネンの後ろの6位と7位に終わ
った。
決勝レースではミシュランもブリヂストンタイヤとほぼ同程度のパフォーマンス
を見せたので、トヨタとしては実力を反映した順当な順位となった。
ホンダは予選で出遅れたが、バトンが4位に入賞。
最後の鈴鹿GPで表彰台には乗れなかったが、ひとまず結果を残した。
バトンは序盤、フロントのグリップ不足から先頭グループより1秒ほど遅いラップ
タイムで走られることを強いられた。
これは、思ったほどフロントタイヤの温度が上がなかったことが原因だった。
1回目のストップでフロント・ウィングを調整した後は、順調に走れ4位でフィニ
ッシュ。
序盤の遅れがなくても、3位は厳しかったかもしれないから、今のホンダではルノ
ーとフェラーリの後ろの4位は満足すべき結果だろう。
今年のホンダはどうも、レース中のパフォーマンスが安定しない。
それが、思ったほどの結果を残せていない大きな原因だ。
タイヤの温度管理に悩むホンダにとって温度変化に敏感な今年のタイヤは、扱い
にくかった。
そして、日本に帰ってきたスーパーアグリはこの1年の成長の跡を見せてくれた。
予選では、佐藤琢磨がモンテイロを上回った。
ポールポジションのマッサとは4秒弱。
開幕戦ではポールポジションと6秒差があったことを考えると長足の進歩だ。
まだまだ、満足できるレベルではないが感慨深い。
レースでもトロロッソと戦い15位でフィニッシュ。
山本左近は予選でアタックした最初の周のヘアピンで、痛恨のミス。
晴れの舞台でノータイムに終わり、最後尾からのスタートになった。
レースでも慎重に走り、二度目の完走。
スーパーアグリの二台は今年、目標にしていた日本GPで二台完走という目的を達
成した。
▽最後の鈴鹿GP
今年の鈴鹿は本当にすごい人だった。
金曜日でも7万人、土曜日は14万人が集まった。
空前絶後の記録だろう。
私が最初に鈴鹿に行った20年前。
土曜日は1コーナーでもどこでも、座ってみることができた。
友人と1周回って見た記憶が懐かしい。
当時の土曜日の入場者数は7万人。
この観客数はスーパーアグリ参戦やミハエル引退の影響もあったのだろうが、や
はり最後の鈴鹿でのF1という出来事が大きかったはずだ。
F1が日本で再開されてから20年。
その間、鈴鹿はファンの聖地であり続けた。
来年から日本GPは、富士スピードウェイで開催される。
だが、鈴鹿サーキットは我々ファンにとっていつまでも忘れられない聖地で有り
続けるだろう。
モータースポーツの歴史が浅い日本にとって、鈴鹿サーキットは世界誇れる名サ
ーキット。
毎年、ここで繰り広げられるトップドライバー達の激しいバトル。
このサーキットこそ本当のドライバーズ・サーキットなのだ。
バーニー・エクレストンはこう言った。
鈴鹿は施設さえ良くなれば、問題ないと。
再び、鈴鹿でF1が再開される日を信じて、この観戦記を終わりにしたい。
ありがとう、鈴鹿サーキット。
信じられない光景だった。
トップを快走中のミハエル・シューマッハーのフェラーリから白煙が吹き出して
いる。
ピットアウト直後のトラブルだ。
最後のピットインを終えたミハエル・シューマッハーとアロンソの差は約5秒。
追い抜きが難しい鈴鹿サーキットのことを考えると、このままレース終了すると
考えるのが普通の状況だった。
だが、アロンソが激しく追い上げる中で、ミハエル・シューマッハーも一瞬の隙
も与えることがで
きなかった。
今年、何度も見てきた二人の激しいバトル。
この二台は激しくプッシュしあい、限界で走り続けていた。
新しい世代のチャンピオン アロンソと、皇帝シューマッハーの一騎打ち。
この二台の差は5秒あったが、それでも二人のこいつだけには絶対に負けられな
いという激しい意志がみなぎる、すごい走りだった。
見ている者の心を激しく揺さぶるドライビングはめったに見られるものではない。
レース中のミハエル・シューマッハーにエンジントラブル。
私のつたない記憶ではいつ以来か思い出せない。
記録によると111レースぶりのことらしい。
このエンジントラブル、前兆がなかったわけではない。
中国GPでマッサが交換したエンジンと同じスペックを今回も使っていた。
1週間のインターバルでは、対策は難しかったのかもしれない。
それにしても、痛すぎるエンジントラブルだった。
信頼性抜群のルノーもイタリアで、エンジントラブルに見舞われた。
これは、激しいタイトル争いが熾烈な開発競争を招き、それが遠因となってトラ
ブルが発生していると思われる。
少しでもパワーを欲しがる以上、ぎりぎりの開発が続けば、信頼性は多少犠牲に
なる。
しかし、このエンジントラブルもアロンソの素晴らしい走りがあったからとも言
える。
抜きにくい鈴鹿で、予選5番手はかなり厳しい順位だ。
しかも、予選でブリヂストンはミシュランを圧倒した。
シーズン後半のミシュランはブリヂストンに攻められっぱなしだった。
特に予選でのブリヂストンのパフォーマンスは素晴らしかった。
だが、アロンソはいつもあきらめなかった。
優勝こそ、カナダGPから遠ざかっていたが、粘り強い走りで常に上位をキープし、
縮められる得点を最小限にくいとどめてきた。
そして、今回もレース前にブリヂストン圧倒的優位の声の中で、スタート直後に
フィジケラをパス。
さらにラルフをコース上でパスすると、最初のピットインでマッサも抜き2位に
浮上した。
マッサは最初のタイヤがパンクして、早くピットインを強いられたため、抜かれ
てしまった。
ハイドフェルドの後ろで戻ったので、燃料の多いハイドフェルドに行く手を阻ま
れ、なす術がなかった。
ここからは、ミハエル・シューマッハーとアロンソの一騎打ち。
常に5秒前後の間隔をキープし、共に譲らない。
この二人だけ別次元の世界にいるかのような奇妙な感覚。
かつてのセナとプロストの走りを彷彿する激しいバトルだった。
そして、運命の36周目にミハエルのエンジンは白煙を吹き出し息絶えた。
これによりアロンソ126ポイント、ミハエル・シューマッハー116ポイントで、差
は10ポイント。
残りはブラジルGPを残すのみ。
正直、ミハエル・シューマッハーの逆転チャンピオンは数字上は可能だが、厳し
くなった。
ミハエル・シューマッハーはおそらくブラジルGPで優勝するだろう。
だが、アロンソはリタイヤを避けるためリスクをできるだけ避けた走りをするだ
ろう。
こういう時のアロンソは、本当に強い。
▽日本勢の日本GP
トヨタはブリヂストンタイヤのアシストもあり、予選で3位、4位を得たが決勝で
はルノーの敵ではなく、結果的にはバトン、ライコネンの後ろの6位と7位に終わ
った。
決勝レースではミシュランもブリヂストンタイヤとほぼ同程度のパフォーマンス
を見せたので、トヨタとしては実力を反映した順当な順位となった。
ホンダは予選で出遅れたが、バトンが4位に入賞。
最後の鈴鹿GPで表彰台には乗れなかったが、ひとまず結果を残した。
バトンは序盤、フロントのグリップ不足から先頭グループより1秒ほど遅いラップ
タイムで走られることを強いられた。
これは、思ったほどフロントタイヤの温度が上がなかったことが原因だった。
1回目のストップでフロント・ウィングを調整した後は、順調に走れ4位でフィニ
ッシュ。
序盤の遅れがなくても、3位は厳しかったかもしれないから、今のホンダではルノ
ーとフェラーリの後ろの4位は満足すべき結果だろう。
今年のホンダはどうも、レース中のパフォーマンスが安定しない。
それが、思ったほどの結果を残せていない大きな原因だ。
タイヤの温度管理に悩むホンダにとって温度変化に敏感な今年のタイヤは、扱い
にくかった。
そして、日本に帰ってきたスーパーアグリはこの1年の成長の跡を見せてくれた。
予選では、佐藤琢磨がモンテイロを上回った。
ポールポジションのマッサとは4秒弱。
開幕戦ではポールポジションと6秒差があったことを考えると長足の進歩だ。
まだまだ、満足できるレベルではないが感慨深い。
レースでもトロロッソと戦い15位でフィニッシュ。
山本左近は予選でアタックした最初の周のヘアピンで、痛恨のミス。
晴れの舞台でノータイムに終わり、最後尾からのスタートになった。
レースでも慎重に走り、二度目の完走。
スーパーアグリの二台は今年、目標にしていた日本GPで二台完走という目的を達
成した。
▽最後の鈴鹿GP
今年の鈴鹿は本当にすごい人だった。
金曜日でも7万人、土曜日は14万人が集まった。
空前絶後の記録だろう。
私が最初に鈴鹿に行った20年前。
土曜日は1コーナーでもどこでも、座ってみることができた。
友人と1周回って見た記憶が懐かしい。
当時の土曜日の入場者数は7万人。
この観客数はスーパーアグリ参戦やミハエル引退の影響もあったのだろうが、や
はり最後の鈴鹿でのF1という出来事が大きかったはずだ。
F1が日本で再開されてから20年。
その間、鈴鹿はファンの聖地であり続けた。
来年から日本GPは、富士スピードウェイで開催される。
だが、鈴鹿サーキットは我々ファンにとっていつまでも忘れられない聖地で有り
続けるだろう。
モータースポーツの歴史が浅い日本にとって、鈴鹿サーキットは世界誇れる名サ
ーキット。
毎年、ここで繰り広げられるトップドライバー達の激しいバトル。
このサーキットこそ本当のドライバーズ・サーキットなのだ。
バーニー・エクレストンはこう言った。
鈴鹿は施設さえ良くなれば、問題ないと。
再び、鈴鹿でF1が再開される日を信じて、この観戦記を終わりにしたい。
ありがとう、鈴鹿サーキット。
最終戦F1 ブラジルGP
▽皇帝時代の終わり
ついにミハエル・シューマッハーのラストレースが終わった。
彼は8度目のワールドチャンピオンにもなれなかったし、最後のレースを勝利で
飾ることもできなかった。
だが、彼は勝者に値することを証明して、最後のレースを終えた。
フリー走行からダントツの速さを見せつけていたフェラーリとブリヂストンタイ
ヤ。
予選でも第一、第二ピリオドと他車を圧倒し、ポールポジションはほぼ間違いが
ないと思われていた。
そんな絶対的優勢の中、ミハエルは第三ピリオドに突然、トラブルに見舞われる
ことになる。
燃料ポンプにトラブルが発生、マシンがスローダウン。
そのまま、ピットに戻ったミハエルのマシンはガレージへ入り修理を開始した。
予選中には直る見込みのないトラブルだったが、それでもミハエル・シューマッ
ハーはコックピットを降りない。
これには、彼の勝利への執念を感じた。
結局、彼の望みは叶えられることはなかったが、彼の勝利を求める気持ちはいさ
さかも衰えていなかった。
このトラブルにより、ミハエル・シューマッハーは一度もアタックすることなく
第三ピリオドを終え、予選10位からスタートすることになる。
しかし、トラブルがエンジンでなかったこと、発生したタイミングが予選第三ピ
リオだったこと等を考えると、まだミハエル・シューマッハーにツキは残ってい
た。
これが予選第一もしくは第二ピリオドで発生していたら、彼はスタート順位はも
っと悪かったはずだ。
決勝スタート後に発生していれば、その時点で彼のレースは終わっていた。
それを考えると10位からスタートできると言うことは、まだミハエル・シューマ
ッハーにはチャンスが残されていた。
幸い、インテルラゴスは抜くことが可能なコースであり、ブリヂストンタイヤの
抜群のパフォーマンスを考えれば、予選10位からもでも十分に優勝が狙えるはず
だった。
向かえた決勝レース、ミハエルは1周目にBMWの二台を一気に抜き去ると、バリ
チェロもパスし6位へ。
さらにルノーのフィジケラをパスしたところで、決定的なトラブルがミハエルを
襲う。
この時点でトップを走るのはチームメイトのマッサ。
2位に上がれば、優勝するのは間違いなかった。
トヨタの二台はスピード不足でミハエルの敵ではなかった。
前を走るアロンソは、ミハエル・シューマッハーを抑える気持ちはなかっただろ
うし、ライコネンは来シーズン移籍するフェラーリを抑えるとも思えなかったか
ら、優勝の可能性は大きかった。
(ライコネンに対するこの考えが甘かったのは、最後の最後で見せつけられるこ
とになる)
ところがフィジケラをパスした直後、ミハエルのマシンが大きく振られる。
左のリアタイヤのパンクだ。
しかも、パンクの発生地点が第一コーナーで、ミハエルはほぼ1周をスロー走行せ
ざるをえず、大きくタイムロスをした。
ここでミハエルの優勝の可能性はほぼなくなった。
このパンクの原因が何かはよくわからない。
激しくクラッシュしたニコ・ロズベルグの破片を拾ってしまったのかもしれない
し、フィジケラと接触したのが原因かもしれない。
もっともフィジケラと接触したのなら、フィジケラのフロント・ウィングがダメ
ージを受けていても、おかしくない。
ミハエルはフィジケラを追い抜いた直後に、タイヤがパンクしている。
普通、少し接触しただけでここまで急激に空気圧が低下することは考えづらい。
ミハエル・シューマッハーはフィジケラを抜いたときには、マシンの姿勢を乱し
ているようには見えない。
ミハエルが姿勢を乱したのは、フィジケラを抜いた後だ。
だから、ニコ・ロズベルグの破片を拾ってしまった可能性が高いと思う。
パンクした部分は左のショルダー部分なので、フィジケラと接触した可能性がゼ
ロとは言えないが、故意にやったとは思えないのでその場合でも、レーシング・
アクシデントとして片付けるしかない。
ロズベルグの破片を拾ってしまったのであれば、不運としか言いようがない。
優勝も見えてきていただけに、なんともミハエルにとっては悔やみきれないトラ
ブルとなってしまった。
これで最後尾に下がったミハエルだが、最後のレースでも最後まで諦めることな
く激しく追い上げを開始する。
二度目にフィジケラを抜くシーンなどは、あまりにもスピードが違いすぎて本来
ブロックしなければならないフィジケラは、何もできなかった。
その迫力はTV画面を通じても感じられた。
まるでクラスの違うマシンが走っているようだった。
そして、最後にベストラップをマークし、ライコネンに対し素晴らしいオーバー
テイクを見せて有終の美を飾った。
彼のファーステストラップは2位のマッサを0.7秒も引き離す圧倒的なタイムだっ
た。
91勝を記録したミハエル・シューマッハーにとって4位は記録だけ見ればたいした
ことがない結果だろう。
だが、このレースで誰が一番速かったのかは、みんながわかっている。
▽手堅いアロンソの走り
アロンソは3日間を通じ、やるべき事を計画通りに実行していった。
ほとんどリスクは冒さず、レブリミットまで回すこともほとんどなかっただろう。
それでも2位になってしまうところが、アロンソのすごいところ。
今年一年を通じて、大きなミスはなかったので、10ポイントのリードがあればほ
ぼ、チャンピオンになるのはほぼ間違いなかった。
もっとも何が起こるのかわからないのが、モータースポーツの世界。
それでも、何も起こらないのがルノーとアロンソの実力だ。
10ポイント差で向かえたブラジルGPは、アロンソにとってもプレッシャーがあっ
たと思う。
誰もがチャンピオンはアロンソと考える中でのレースは難しい。
しかしアロンソは、そんなことを微塵も感じさせないレースを見せてくれた。
昨年もそうだったが、アロンソは常に冷静で勝ちに行くときと、ポイントを拾う
時とを冷静に判断してドライブしていた。
それに加えてミスが少ない走り。
ペースを抑えてミスを少なくすることは誰でもできるが、彼の場合は速く走った
上で、ミスが少ない。
これはミハエル・シューマッハーやセナ、プロストなど偉大なチャンピオン達に
共通するポイントだ。
今回もリスクをほとんど冒さないにもかかわらず、ファーステストラップは全体
の3位で、2位のマッサとは僅差だった。
最後は二戦連続でフェラーリのトラブルに助けられた面はあるが、それはお互い
様。
アロンソもトラブルに見舞われて失ったレースがあり、アロンソのチャンピオン
は正当な結果といえるだろう。
彼こそはミハエル・シューマッハーなき後のF1を支えるチャンピオンだ。
これでアロンソはルノーで最後のレースを終えた。
まるでかつてのミハエル・シューマッハーを見るようだ。
セナが死亡した後とはいえ、ミハエル・シューマッハーは当時のベネトンで2年
連続チャンピオンに輝き、フェラーリへ移籍して更に五回のチャンピオンを取る
ことになる。
世代交代とでも言えばいいのかもしれないが、かつてセナがプロストを引退に、
ミハエルがピケを引退に追いやったのとは少し違う。
なにしろ、ミハエル・シューマッハーこの時点でもアロンソと並んで最速のドラ
イバーの一人なのだから。
ミハエルが引退して、来年からアロンソの時代が来るのか、ライコネンとの二強
時代が来るのかはわからないが、これまでとは全く違うF1になることだけは間違
いがない。
▽ホンダとスーパーアグリの快走
今回のホンダはよかった。
特にバトンは終始、トップグループと同程度のラップタイムを連発し、三位でゴ
ール。
だが残念なことにバトンは14位スタートだった。
予選順位がもう少し良ければ、2位は確実に、もしかしたら優勝も争えたかもし
れないほどのペースだった。
今年のホンダはレースの週末を通じて、コンスタントな力を発揮することができ
なかった。
予選が良ければレースが悪く、予選が悪ければレースがいい。
レース中も第一スティントが悪ければ、第二、第三スティントが良いなどという
こともよくあった。
今回は気温が高くなり、タイヤの発熱が悪いホンダにとってはいい条件となった
ことは間違いない。
このタイヤの発熱の問題は1年を通じてホンダを悩ませ続けた。
来年はこれをどう解決してくるのだろうか。
一方のトヨタは、鈴鹿に続いて予選は良かったが決勝では伸び悩んだ。
予選ではタイヤとドライバーの頑張りで上位に来るが、レースではペースが上が
らず、今回は二台ともリタイヤとなった。
これはマシンの総合力が良くないので仕方のない結果だ。
ガスコインが抜けた、来シーズンはどういう体制で臨んでいくのか。
それが見えてこない。
スーパーアグリに取っては1年の苦労が報われたれブラジルGPとなった。
佐藤琢磨が10位でフィニッシュしたのだ。
しかも、このブラジルGPは1周のラップタイムが75秒前後と短い。
それを考えると周回遅れとはいえ、立派な結果だ。
あと二台リタイヤすれば、入賞できる位置だ。
それにしても琢磨はこのレース、序盤から12位を走行し、期待を持たせてくれ
た。
彼のファーステストラップは全体の9位で、ホンダのバリチェロと1/100秒遅い
だけ。
山本左近はなんとバリチェロより速いファーステストラップを記録し、全体で
7位のタイムとなった。
この二台のタイムはマクラーレンのデ・ラ・ロサより速いタイムだ。
通常、周回遅れ以外ではほとんど国際映像に映らないスーパーアグリが今回は
何度も画面に映った。
この1年を振り返ると、本当に大変な1年だったと思う。
でも、それをやり遂げた鈴木亜久里とチームのメンバーは素晴らしかった。
結果の数字だけを見れば最下位だが、それだけでは計れない偉大な挑戦を成し
遂げた。
もっともスーパーアグリはこれで止まっているわけにはいかない。
来年からホンダのシャシーを使用できるように、FIAや各チームと交渉してきた
がここにきて、それが許されない状況となってきた。
そうなると、来年用のシャシーの開発に取りかからなければならない。
また、彼らの忙しい冬が訪れる。
最後に優勝したマッサに一言。
おめでとう、マッサ。
地元のGPで、地元のドライバーが優勝することは難しい。
誰もがそれを期待するからだ。
セナが長年勝てなかった地元ブラジルGPで勝ったあと、泣き崩れたことが懐かし
く思い出される。
この勝利で、マッサは今年、初優勝を含む2勝をマークした。
だが、ライコネンをチームメイトに向かえる、来シーズンは真価を問われるシー
ズンとなる。
▽今シーズンを振り返って
今シーズンはまれに見る、激しいチャンピオン争いが繰り広げられた。
新世代のチャンピオン、アロンソとF1界に君臨し続けた皇帝ミハエル・シューマ
ッハー。
結果的にアロンソの2年連続チャンピオンで幕を閉じたが、この激しいチャンピオ
ン争いを忘れることはないだろう。
最後にミハエル・シューマッハーには、素晴らしい走りをありがとうと言いたい。
セナ亡き後のF1を支えたのは、彼だったし彼の走りに批判はあるが、間違いなく
一番速いドライバーであり続けた。
彼を倒すことが、全てのF1ドライバーの目標だったし、良くも悪くも彼はF1の中
心だった。
今後、彼がどのようにF1に関わるかは現時点では不明だが、お疲れさまと言って
おきたい。
【編集後記】
長く激しいシーズンが終わりました。
ミハエルの引退、ホンダの初優勝、鈴鹿のラストGPと盛りだくさんのシーズンで
した。
願わくばミハエル・シューマッハーが優勝して、アロンソと喜びを分かち合うシ
ーンを見たかったのですが....。
ついにミハエル・シューマッハーのラストレースが終わった。
彼は8度目のワールドチャンピオンにもなれなかったし、最後のレースを勝利で
飾ることもできなかった。
だが、彼は勝者に値することを証明して、最後のレースを終えた。
フリー走行からダントツの速さを見せつけていたフェラーリとブリヂストンタイ
ヤ。
予選でも第一、第二ピリオドと他車を圧倒し、ポールポジションはほぼ間違いが
ないと思われていた。
そんな絶対的優勢の中、ミハエルは第三ピリオドに突然、トラブルに見舞われる
ことになる。
燃料ポンプにトラブルが発生、マシンがスローダウン。
そのまま、ピットに戻ったミハエルのマシンはガレージへ入り修理を開始した。
予選中には直る見込みのないトラブルだったが、それでもミハエル・シューマッ
ハーはコックピットを降りない。
これには、彼の勝利への執念を感じた。
結局、彼の望みは叶えられることはなかったが、彼の勝利を求める気持ちはいさ
さかも衰えていなかった。
このトラブルにより、ミハエル・シューマッハーは一度もアタックすることなく
第三ピリオドを終え、予選10位からスタートすることになる。
しかし、トラブルがエンジンでなかったこと、発生したタイミングが予選第三ピ
リオだったこと等を考えると、まだミハエル・シューマッハーにツキは残ってい
た。
これが予選第一もしくは第二ピリオドで発生していたら、彼はスタート順位はも
っと悪かったはずだ。
決勝スタート後に発生していれば、その時点で彼のレースは終わっていた。
それを考えると10位からスタートできると言うことは、まだミハエル・シューマ
ッハーにはチャンスが残されていた。
幸い、インテルラゴスは抜くことが可能なコースであり、ブリヂストンタイヤの
抜群のパフォーマンスを考えれば、予選10位からもでも十分に優勝が狙えるはず
だった。
向かえた決勝レース、ミハエルは1周目にBMWの二台を一気に抜き去ると、バリ
チェロもパスし6位へ。
さらにルノーのフィジケラをパスしたところで、決定的なトラブルがミハエルを
襲う。
この時点でトップを走るのはチームメイトのマッサ。
2位に上がれば、優勝するのは間違いなかった。
トヨタの二台はスピード不足でミハエルの敵ではなかった。
前を走るアロンソは、ミハエル・シューマッハーを抑える気持ちはなかっただろ
うし、ライコネンは来シーズン移籍するフェラーリを抑えるとも思えなかったか
ら、優勝の可能性は大きかった。
(ライコネンに対するこの考えが甘かったのは、最後の最後で見せつけられるこ
とになる)
ところがフィジケラをパスした直後、ミハエルのマシンが大きく振られる。
左のリアタイヤのパンクだ。
しかも、パンクの発生地点が第一コーナーで、ミハエルはほぼ1周をスロー走行せ
ざるをえず、大きくタイムロスをした。
ここでミハエルの優勝の可能性はほぼなくなった。
このパンクの原因が何かはよくわからない。
激しくクラッシュしたニコ・ロズベルグの破片を拾ってしまったのかもしれない
し、フィジケラと接触したのが原因かもしれない。
もっともフィジケラと接触したのなら、フィジケラのフロント・ウィングがダメ
ージを受けていても、おかしくない。
ミハエルはフィジケラを追い抜いた直後に、タイヤがパンクしている。
普通、少し接触しただけでここまで急激に空気圧が低下することは考えづらい。
ミハエル・シューマッハーはフィジケラを抜いたときには、マシンの姿勢を乱し
ているようには見えない。
ミハエルが姿勢を乱したのは、フィジケラを抜いた後だ。
だから、ニコ・ロズベルグの破片を拾ってしまった可能性が高いと思う。
パンクした部分は左のショルダー部分なので、フィジケラと接触した可能性がゼ
ロとは言えないが、故意にやったとは思えないのでその場合でも、レーシング・
アクシデントとして片付けるしかない。
ロズベルグの破片を拾ってしまったのであれば、不運としか言いようがない。
優勝も見えてきていただけに、なんともミハエルにとっては悔やみきれないトラ
ブルとなってしまった。
これで最後尾に下がったミハエルだが、最後のレースでも最後まで諦めることな
く激しく追い上げを開始する。
二度目にフィジケラを抜くシーンなどは、あまりにもスピードが違いすぎて本来
ブロックしなければならないフィジケラは、何もできなかった。
その迫力はTV画面を通じても感じられた。
まるでクラスの違うマシンが走っているようだった。
そして、最後にベストラップをマークし、ライコネンに対し素晴らしいオーバー
テイクを見せて有終の美を飾った。
彼のファーステストラップは2位のマッサを0.7秒も引き離す圧倒的なタイムだっ
た。
91勝を記録したミハエル・シューマッハーにとって4位は記録だけ見ればたいした
ことがない結果だろう。
だが、このレースで誰が一番速かったのかは、みんながわかっている。
▽手堅いアロンソの走り
アロンソは3日間を通じ、やるべき事を計画通りに実行していった。
ほとんどリスクは冒さず、レブリミットまで回すこともほとんどなかっただろう。
それでも2位になってしまうところが、アロンソのすごいところ。
今年一年を通じて、大きなミスはなかったので、10ポイントのリードがあればほ
ぼ、チャンピオンになるのはほぼ間違いなかった。
もっとも何が起こるのかわからないのが、モータースポーツの世界。
それでも、何も起こらないのがルノーとアロンソの実力だ。
10ポイント差で向かえたブラジルGPは、アロンソにとってもプレッシャーがあっ
たと思う。
誰もがチャンピオンはアロンソと考える中でのレースは難しい。
しかしアロンソは、そんなことを微塵も感じさせないレースを見せてくれた。
昨年もそうだったが、アロンソは常に冷静で勝ちに行くときと、ポイントを拾う
時とを冷静に判断してドライブしていた。
それに加えてミスが少ない走り。
ペースを抑えてミスを少なくすることは誰でもできるが、彼の場合は速く走った
上で、ミスが少ない。
これはミハエル・シューマッハーやセナ、プロストなど偉大なチャンピオン達に
共通するポイントだ。
今回もリスクをほとんど冒さないにもかかわらず、ファーステストラップは全体
の3位で、2位のマッサとは僅差だった。
最後は二戦連続でフェラーリのトラブルに助けられた面はあるが、それはお互い
様。
アロンソもトラブルに見舞われて失ったレースがあり、アロンソのチャンピオン
は正当な結果といえるだろう。
彼こそはミハエル・シューマッハーなき後のF1を支えるチャンピオンだ。
これでアロンソはルノーで最後のレースを終えた。
まるでかつてのミハエル・シューマッハーを見るようだ。
セナが死亡した後とはいえ、ミハエル・シューマッハーは当時のベネトンで2年
連続チャンピオンに輝き、フェラーリへ移籍して更に五回のチャンピオンを取る
ことになる。
世代交代とでも言えばいいのかもしれないが、かつてセナがプロストを引退に、
ミハエルがピケを引退に追いやったのとは少し違う。
なにしろ、ミハエル・シューマッハーこの時点でもアロンソと並んで最速のドラ
イバーの一人なのだから。
ミハエルが引退して、来年からアロンソの時代が来るのか、ライコネンとの二強
時代が来るのかはわからないが、これまでとは全く違うF1になることだけは間違
いがない。
▽ホンダとスーパーアグリの快走
今回のホンダはよかった。
特にバトンは終始、トップグループと同程度のラップタイムを連発し、三位でゴ
ール。
だが残念なことにバトンは14位スタートだった。
予選順位がもう少し良ければ、2位は確実に、もしかしたら優勝も争えたかもし
れないほどのペースだった。
今年のホンダはレースの週末を通じて、コンスタントな力を発揮することができ
なかった。
予選が良ければレースが悪く、予選が悪ければレースがいい。
レース中も第一スティントが悪ければ、第二、第三スティントが良いなどという
こともよくあった。
今回は気温が高くなり、タイヤの発熱が悪いホンダにとってはいい条件となった
ことは間違いない。
このタイヤの発熱の問題は1年を通じてホンダを悩ませ続けた。
来年はこれをどう解決してくるのだろうか。
一方のトヨタは、鈴鹿に続いて予選は良かったが決勝では伸び悩んだ。
予選ではタイヤとドライバーの頑張りで上位に来るが、レースではペースが上が
らず、今回は二台ともリタイヤとなった。
これはマシンの総合力が良くないので仕方のない結果だ。
ガスコインが抜けた、来シーズンはどういう体制で臨んでいくのか。
それが見えてこない。
スーパーアグリに取っては1年の苦労が報われたれブラジルGPとなった。
佐藤琢磨が10位でフィニッシュしたのだ。
しかも、このブラジルGPは1周のラップタイムが75秒前後と短い。
それを考えると周回遅れとはいえ、立派な結果だ。
あと二台リタイヤすれば、入賞できる位置だ。
それにしても琢磨はこのレース、序盤から12位を走行し、期待を持たせてくれ
た。
彼のファーステストラップは全体の9位で、ホンダのバリチェロと1/100秒遅い
だけ。
山本左近はなんとバリチェロより速いファーステストラップを記録し、全体で
7位のタイムとなった。
この二台のタイムはマクラーレンのデ・ラ・ロサより速いタイムだ。
通常、周回遅れ以外ではほとんど国際映像に映らないスーパーアグリが今回は
何度も画面に映った。
この1年を振り返ると、本当に大変な1年だったと思う。
でも、それをやり遂げた鈴木亜久里とチームのメンバーは素晴らしかった。
結果の数字だけを見れば最下位だが、それだけでは計れない偉大な挑戦を成し
遂げた。
もっともスーパーアグリはこれで止まっているわけにはいかない。
来年からホンダのシャシーを使用できるように、FIAや各チームと交渉してきた
がここにきて、それが許されない状況となってきた。
そうなると、来年用のシャシーの開発に取りかからなければならない。
また、彼らの忙しい冬が訪れる。
最後に優勝したマッサに一言。
おめでとう、マッサ。
地元のGPで、地元のドライバーが優勝することは難しい。
誰もがそれを期待するからだ。
セナが長年勝てなかった地元ブラジルGPで勝ったあと、泣き崩れたことが懐かし
く思い出される。
この勝利で、マッサは今年、初優勝を含む2勝をマークした。
だが、ライコネンをチームメイトに向かえる、来シーズンは真価を問われるシー
ズンとなる。
▽今シーズンを振り返って
今シーズンはまれに見る、激しいチャンピオン争いが繰り広げられた。
新世代のチャンピオン、アロンソとF1界に君臨し続けた皇帝ミハエル・シューマ
ッハー。
結果的にアロンソの2年連続チャンピオンで幕を閉じたが、この激しいチャンピオ
ン争いを忘れることはないだろう。
最後にミハエル・シューマッハーには、素晴らしい走りをありがとうと言いたい。
セナ亡き後のF1を支えたのは、彼だったし彼の走りに批判はあるが、間違いなく
一番速いドライバーであり続けた。
彼を倒すことが、全てのF1ドライバーの目標だったし、良くも悪くも彼はF1の中
心だった。
今後、彼がどのようにF1に関わるかは現時点では不明だが、お疲れさまと言って
おきたい。
【編集後記】
長く激しいシーズンが終わりました。
ミハエルの引退、ホンダの初優勝、鈴鹿のラストGPと盛りだくさんのシーズンで
した。
願わくばミハエル・シューマッハーが優勝して、アロンソと喜びを分かち合うシ
ーンを見たかったのですが....。