時刻は17時になろうとしていた。

普通なら、とっくにチェックインしている

時間なのだが、オイラ達はちょうど

愛知県と長野県の県境をウロチョロ

していた。オイラの経験でもカーナビでも

だいたい18時半に宿に着く計算に

なっている。

まあ、何度も同じことを言うけど、

普通の宿なら、まあまあ通常の

チェックインタイムなんだろうけど、

この宿は、13時からチェックイン出来る

宿なので、心情的にも凄く損をしている

気分になる。

だからなのだろうか。

宿へ向かう車の速度も若干上がり気味。



しばらくすると、愛知県に別れを告げ、

長野県の看板をくぐった。

根羽(ねば)村に入る。

雨は、すっかり上がったが、相変わらずの

曇天模様に山の中の道。

時間的にも天候的にも地形的にも、

まあまあ薄暗くなってきた。



やがて治部坂(じぶざか)峠の

スキー場が見えて来た。

ゲレンデも青いし、リフトも野ざらし。

この辺から下り坂が延々と続く。


『もうちょいだ』


当然だが、今の時期は雪はない。

でも、オンシーズンともなれば、

道の両側に雪の壁が出来て、

路面も凍結する。

その時期に、今のこのスピードで

この峠道を走るのは、自殺行為に等しい。

けど、やっぱ、温泉の魅力には勝てん。

自然とアクセルは踏みぎみだ。

気分は『イニシャルD』か。

良い子のみんなはマネしないでね。




今夜の宿は、長野県の阿智村にある

昼神温泉卿。

その中にある

湯多利の里 伊那華
     ↑
(ゆたりのさと いなか)

という温泉旅館だ。


愛知県の奥三河から長野県の南信州へと

やって来て、最初に思ったのは、

凄く涼しい。

『エアコン要らず』という言葉が

ぴったり合う感じだ。

まあ、今年の夏は、思ってたよりも

暑くなかったような気がする。

夏特有のギラギラした太陽の陽射しを

あまり見てない。


さて。

峠もそろそろ終盤。

中央自動車道(高速道路)が見えてきた。

コレをくぐり、しばらく走る。

ようやく昼神温泉郷の入口が見えてきた。

ここで、国道153号線にサヨナラ。



国道153号線を外れて

国道256号線に入る。

岐阜方面に向かい、1Kmも

行かないうちに、景色はすっかり

温泉街に変わった。

阿智川を挟んだ両側に、大小様々な

宿泊施設が軒を連ねている。

伊那華には来た事はないけど、伊那華の

ホームページで外観は見ていたので

場所はすぐに分かった。

敷地内に車を滑り込ませると、意外にも

駐車場が狭く、一瞬停めるのを躊躇して

相棒を車に残してロビーのフロントへ。

しかし、ちょうど夕食の時間と被って

いたからなのか、フロントには誰も

いない。フロントの奥にも声をかけたが

無反応。

隣りのお土産売り場も無人。

『コレじゃあ盗み放題じゃん・・』

とか、一瞬思う。

フロント前で2~3分ほど待っていると

凄く遠い所から、60代くらいの

番頭さんらしきフロント係のおじさんが

ハッピを着ながら小走りに近付いて来た。

ちょっと息を弾ませながらフロントの

所定位置に着いた。

「いらっしゃいませ」

と言われて、何かの帳簿を開いた。

所定位置に着いたばかりで恐縮なんだけど

放置してある車と相棒をどうにかするため

「車は何処に停めたらいいですか?」

と、所定位置に着いたおじさんを

更に外へと連れ出した。

おじさんは、嫌な顔をせずに応対して

くれて、無事に車を停め、相棒と共に

バッグを担いで、改めてフロントへ。

宿泊カードに記帳して、食事や風呂や

部屋の説明を受ける。

実はその時、オイラも相棒もトイレの

限界が来ていて、正直、おじさんの説明が

煩わしく感じていた。

おじさんには全く罪はない。

悪いのはオイラ達の方だから。


一通り説明を受け、部屋のキーを受け取り

エレベーターで3階へ。

しかしもう、トイレの限界を越えそうだ。

たまらずエレベーターホールの脇にあった

トイレに駆け込む。


『間に合った・・・』

あと2秒遅かったら、とても恥ずかしい

結末を迎えていただろう。

相棒も同じような表情をしていた。



気を取り直して、3階を目指す。

3階の角部屋。

さっそく入室。



2畳ほどの踏み込みの奥に10畳ほどの

和室がある。

更にその奥に、3畳ほどのスペースが。



テレビは直置きだが、実はこの置き方。

寝転んで布団から見るにはちょうどいい

感じだと後から気付いた。

金庫もあったけど、現金は相棒が管理

しているので、オイラは使わなかった。



冷蔵庫は空っぽなので、自販機で買った

飲み物をブチ込む。


窓を開けると、目の前には阿智川が

流れている。



ここ最近、台風の影響や雨が続いていた

こともあり、水位も高く流も速い。



(阿智川の流れを動画でご覧ください)



部屋に入ったのが18時半くらい。

フロントのおじさんの説明だと

夕食はバイキングスタイルで、

18時から21時らしい。

本来なら、温泉でひとっ風呂浴びて

さっぱりしてから夕食、ってのが

いつものパターンなんだけど、

今回は、時間の都合で夕食が先。

温泉は24時間いつでも入れるから

こっちは後でゆっくりと。


ということで、とりあえず浴衣に着替えて

バイキングの夕食を食らいに行く。

1階まで降り、大広間の扉を開けると

もう既にわんさか宿泊客が夕食を

摂っていて、どのテーブルも

いろんなモノが所狭しと並んでいた。


入口で受け付けを済ませて、さっそく

トレイを持って食い物を漁りに行く。

見渡すと、とりあえず和・洋・中の

代表的な食べ物は、ほとんどある感じ。

デザートも豊富でプチケーキやプリンから

アイスクリームやヨーグルトまで

結構何でもある。

ご飯も2種類(白飯と松茸ごはん)ある。

汁物も、味噌汁、赤だしがあり、

長野県らしく、蕎麦(温・冷)もある。

飲み物もいろいろあるし、言うことなし。

何だかんだと回って、ご覧の通り。





上から、ズワイガニ、ローストビーフ、

ラフテー(豚の角煮)、マカロニグラタン

クリームコロッケ、アスパラの天ぷら、

舞茸の天ぷら、肉焼売、海老餃子、

海老フライ、肉まん、松茸ごはん、

赤だし、茶碗蒸し、寿司、

下はデザート。

アイスクリーム3種類

(バニラ・イチゴ・マンゴー)

イチゴのプチケーキ。

まあ、ざっとこんな感じ。


もちろん、コレだけじゃない。

まだまだ食うぜ。


ちなみに、この旅館では1年を通して

日本全国の料理フェアをやっている

みたいで、この日は九州・沖縄フェアを

やっていた。

宮崎の冷や汁や宮崎地鶏の炭火焼き、

沖縄のゴーヤーチャンプルやラフテー、

大分のとり天や福岡の辛子高菜や明太子、

などなど・・・。

とりあえず、ひたすら食いまくる。


ちょっと取りすぎたかも感があったけど、

まあ何とか食い切り、何かしらを何度か

おかわりした。

ふと周りを見渡すと、あれだけいた人が

すっかりいなくなっていて、オイラ達の

他に、5人しかいなかった。

そういえば食事中に、1階のロビーで

ビンゴ大会を開催するというアナウンスが

放送されていたから、もしかすると、

そっちに流れたのかな?



時計を見ると20時半になっていた。

とりあえず食うのをやめて、コーヒーを

飲みながら一息つく。

21時ギリギリまで喋りながら

満腹満足で部屋に戻ることに。


この後は温泉に入りに行くので、

相棒は一足先に部屋に戻る。

オイラは、大広間からエレベーターまでの

廊下に飾ってあるモノを見ていた。

そこには、仕事やプライベートで

この旅館を訪れた有名人や芸能人の

写真やサインが飾られていた。

中でも圧巻なのが、プロ野球の

中日ドラゴンズのシーズン終わりの

納会とかを開催してるんだね。

まあ、『1年間、お疲れさん』みたいな

やつ。ご苦労さん会みたいな感じ?

打ち上げって言った方が分かりやすいか?

名古屋から近いってのもあるんだろうけど

何年か続けて来ていたみたいだね。

知ってる顔から知らない顔まで

ズラリと並んでいるわ。





いろんな問題がありそうなので、

あえてアップの写真ではなく引きで。

気になる人は、画像をズームアップして

見てみてね。


相棒を追って部屋に戻って、お風呂セット

を持って大浴場へ。

さすがに風呂場で写真は撮れないので、

リンク先の写真を参照してください。


大浴場に行って思ったのは、

食事処にあれだけ人がいたのに、

風呂場には5~6人ほどしかいない。

てことは、やっぱみんな食事前に

ひとっ風呂浴びてんだな、ということ。

まあ、普通に考えたらそうなるわな。

でも、そのおかげでがらがらの温泉を

満喫出来て、ありがたいわ。

相棒もろとも、2時間弱ほどいただろうか

ちょっとのぼせっぽくなってきたので、

風呂から上がり、ポカリスエットを

飲みながら一息つく。

館内の廊下を歩く人もまばらになって

来たので、オイラ達も部屋に戻ることに。


部屋のある階のエレベーターの脇には

『浴衣バー』と『枕バー』というのが

あって、自由に浴衣や枕を選べる、

まあ、『ドリンクバー』みたいなモノが

あったので、オイラは低反発枕を

チョイスして部屋に戻った。



部屋に戻ると、既に布団が敷いてある。



(白いのが部屋枕。黒いのが低反発枕)



思わずバタンと倒れ込む。

風呂に行く前に点けておいたエアコンが

布団を冷やしていて、温泉で火照った

身体に心地よい。

相棒を見ると、コンセントの近くに

寝床を陣取り、充電器を繋ぎっ放しで

眠そうな眼をしながらスマホを見ていた。

聞けば、明日の予定をどうするか、

考えているようだ。

まあ確かに、明日の予定は特に何も

決まってない。しいて挙げるとすれば、

長野県の駒ヶ根市の名物である

『ソースかつ丼』が食べられたらいいな、

くらいだろうか。

とりあえず決まっていることは、

明日の夜6時頃までに長野県の茅野市に

あるビジネスホテルにチェックインする

ことくらいだ。

相棒に豊橋電鉄の田口線の話をすると、

『来た道を戻るのは、どうも・・・』

と、あまり乗り気ではない。

確かに『乗り鉄』からしたら、乗れない

電車には興味がないのだろうか?

まあ、オイラも戻ることは反対だ。

それに、雨が降っていたら、それだけで

行く気も失せる。

オイラ的には、電車に乗ろうと乗るまいと

どっちでもいいんだけど。

この電車のカテゴリーは相棒に一任して

いるので、本人が行かなくていいって

言うんだから、今回はパスの方向で決着。

となると、尚更明日の予定を立てて

おかないと、無駄な時間を過ごすことに。



しばらくテレビを見ていると、

調べものをしていた相棒が、何だか

眠そうにウトウトしている。

本来なら、夜中にもう1度くらい

温泉に入りに行くのが定番なんだけど、

奴も眠そうだし、朝風呂でもいいかな。

テレビもあまり面白くないし、

オイラも寝るとするか。

あまり眠くはないんだけど、明日も1日

運転手だからな。



というわけで、おやすみなさい。




その⑥につづく・・・。


(。・ω・。)ゞ