私選:2021年のナイジェリア・ポップ10曲 | 勝手にシドバレット(1985-1995のロック、etc.)

勝手にシドバレット(1985-1995のロック、etc.)

ロックを中心とした昔話、新しいアフロ・ポップ、クラシックやジャズやアイドルのことなどを書きます。

 たまには新しい音楽の話をしようと思って、2021年最後の更新は今年気に入ったナイジェリアのポップ・ミュージックを10選してみます。
 だいたい3~4年前からコンテンポラリーなアフロビーツを聴くようになりまして、今年は日常の7割くらいをそういった音楽、とりわけナイジャ・ポップと呼ばれるナイジェリア産の音楽に浸っていました。
 ガーナやコンゴ、南アのアーティストにも耳を傾ける時間は増えたし、こちらの記事でも絶賛したTRESORのアルバム<MOTION>なんかホントに素晴らしかったのですが、積極的に聴いているのはナイジェリアが中心。
 当ブログはおもに古いロックを扱っているので、どれだけ多くの人の関心を惹くのか心許ないのだけど、とにかく私はナイジャ・ポップが好きです。最初はリズムがニュー・オーリンズのセカンド・ラインっぽいなあと感じていたのが、(関係性はあるとはいえ)今ではそうとも思いません。しつこく繰り返されるこのリズムの跳ねを摂取しないと体がもたないんです。前にも書いたように、こんなことは30年前のグラウンド・ビート以来なんですよ!!
 というわけで、今年も私を楽しませてくれたナイジャ・ポップの中から特に好きなものを曲単位で10選してみます。本当は50曲ほど挙げたいのだけど、とりあえずこの10曲に触れれば今のナイジャ・ポップの魅力は伝わるのではないでしょうか。

Kizz Daniel/ Lie


 まずはこのKizz Danielの今年のシングルを。2014年にデビューしてからアフリカのさまざまな音楽賞を受賞しているシンガー=ソングライターです。
 今年はアルバム<Barnabas>も良い出来で、ポップなメロディーが軽快なシンコペーションに乗った快作でした。Lieには彼のメロディ・メイカーとしての才がわかりやすく曲に結実しています。歌も軽みが心地よい。思わず口ずさみたくなります。


Lojay featuring Sarz/ Monalisa


 Lojayは今年デビューEP<LV N ATTN>で注目された25歳のアーティスト。そのEPではナイジェリアのトップ・スターでプロデューサーのSarzや、国際的に活躍しているWizkidをフィーチャーしています。
 Sarzと共演したMonalisaはアフロ・フュージョンというかハウス的なノリもある濃厚な曲で、じつにバウンシーでキャッチ―。<LV N ATTN>も楽しいEPでした。


Wizkid featuring Tems/ Essence


 Wizkidはインターナショナルな評価を受けるシンガー=ソングライターで、私がナイジェリアのポップに興味を持ったのは彼のアルバム<Sounds From The Other Side>(2017年)がきっかけでした。
 昨年はその名も<Made In Lagos >という傑作アルバムを発表し、今年はそのデラックス・エディションも充実していました。やはり凄い人だと思います。
 Essenceは同郷の女性シンガー、Temsをフィーチャーしたトラックで、Wizkidらしいファンクネスを湛えたスロー曲に仕上がっています。リズム・アレンジの技巧も相変わらず冴えており、Temsのディープな歌が抗しがたい艶を聞かせます。最高!アルバムも良かったなあ。


Adekunle Gold featuring Davido/ High


 Adekunle Goldはハイライフ・ミュージックを基盤とするアーティストですが、徐々に作風をアップデートし、2020年のアルバム<Afro Pop, vol.1>でエレクトロニカや米R&Bの要素を大幅に取り入れて成功を収めました。
 Davidoはナイジェリアのスーパー・スターで、2019年にはロンドンのO2アリーナをソールドアウトさせています。今のアフロビーツを代表する一人だと言えるでしょう。
 その二人がコラボしたHighではEDM的なフックを挿んだイケイケの曲調に、Davidoの愛嬌のある低い声が効果的にフィーチャーされており、スター二人の共演が楽しめます。


Omah Lay/ Understand


 この曲、ナイジェリアでは発表から24時間でApple Musicのチャート1位を獲得したそうです。
 Omah Layが前年に組んでGodlyをヒットさせたプロデューサーのTempoeと再び組んだのがこのUnderstand。恋人との気持ちのすれ違いを、胸騒ぎのようなビートと沈んだトーンのキーボード・リフでシンプルに表したバック・トラックが秀逸です。
 声に哀感の滲むOmah Layのヴォーカルも佳くて、年間を通じて忘れがたい曲となりました。


Tiwa Savage featuring Brandy/ Somebody's Son


 ティワ・サヴェージもナイジェリアを代表する女性シンガーです。昨年のアルバム<Celia>もクォリティが高く充実したアフロビーツでした。
 Somebody's Sonは今年のEP<Water & Garri>に入っている曲で、ここでフィーチャーされているBrandyはあのアメリカのR&BシンガーのBrandy。EPにはほかにNas
やナイジェリアのTay Iwar(彼も優れたシンガー=ソングライター)などがフィーチャーされています。
 フォーキーな味わいの爽やかなメロディーが耳に残る曲です。歌詞は失恋の痛手を女友達に打ち明けている内容のようで、デュエット・パートを聴いているとホッコリと幸せな気分になります。歌の力ですね。


Olamide/ Rock


 これも今年のヘヴィ・ローテーション。ゴキゲンとしか言いようがない曲です。
 6月にリリースされたアルバム<UY Scuti>は全曲がハイ・レベルな傑作ですが、このRockという曲はマリンバを用いてリラックスしたアレンジがスムーズでポップ。うっすらと鳴っているストリングスも小粋です。以前のアルバムにもこの寛いだセンスはずっとあったのだけど、このRockの洒脱さは中毒性が高いです。


Fireboy DML/ Peru


 クリスマスに出たリミックスも良かったのだけど、夏に聴いた元のヴァージョンがインパクトを与えました。
 Fireboy DMLはOlamideの主催するレーベルから2年前にデビューした新人です。このPeruはシンプルでいて強固な作りを持つ曲。タイトルをリピートするコーラス・パートがクセになるフックで、粘着質の声も耳にまとわりつくように残ります。この人は昨年のアルバム<Apollo>も凄まじく良かったので必聴です。 


Yemi Alade/ Ogogoro


 ナイジェリアの誇る、アフロビーツの女王です。昨年<Empress>(女帝)というタイトルのアルバムを発表しました。
 彼女の歌は常に逞しく、そしてしなやかで、癒しと鼓舞を同時にもたらします。今年は<Queendoncom>という7曲入りのEPを発表し、歌とサウンドが分かちがたく結びついた彼女にしか表現できない世界を堪能させてくれました。
 Ogogoroはレゲエを取り込んだグルーヴも秀逸な曲で、とろけそうになりながら自然と力が湧いてきます。ロック・ファンにもぜひ聴いてほしいシンガーです。 


Ayra Starr/ Fashion Killer


 個人的にディス・イヤーズ・ガールはこのAyra Starrでした。こういう若いシンガー=ソングライターかつポップ・スターがいると嬉しくなるし、なんといっても彼女は声がいい。アルバム<19 & Dangerous>を聴きまくったのも、とても19歳とは思えないこの声に惹かれたから。アルバムを彩るナイジャ・ポップの様式も的確に曲を支えています。
 そういえば、Spotifyで「今年あなたがよく聴いたアーティスト」みたいな括りでプレイリストが作られて、ダントツにこの人がトップでした。そのプレイリストにはAyra Starrからのメッセージ動画が付いていました。いや、単にそれだけのハナシでオチはないのですが、便利な時代になったものです。