シーナの新たな門出。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

シーナの新たな門出。

【新宿熱風どかどか団(本)】 

●著者 :椎名誠
●出版社:新潮文庫(2005.11 発行)
●価格 :¥580


以前はよく読んでいたが、ここのところ
ご無沙汰だった椎名誠、久しぶりに楽しんだ。
本書は、以前から継続的に書き継がれている、
自伝的エッセイの流れをくむもので、
椎名が35才にして流通誌編集長の職を辞し、
フリーとなった時期を中心に書かれている。

脱サラした椎名は、創刊4年目を迎える「本の雑誌」
の編集長と平行し、もの書きとして本格始動する。
数々の体当たりのルポをこなし、
書き下ろしの単行本執筆のために、
あこがれのホテルでのカンヅメを体験し、
また初のサイン会も行う。

特にどうということのない日常でも、
椎名のあの軽妙にして、ユーモアたっぷりの文章で
つづられると、何ともいえない味のある風景に
感じられるのはさすが。
イラストレーターの沢野ひとし、
本の雑誌社社長の目黒考二、
そして弁護士の木村晋介と、
椎名ワールドではおなじみの面々も随時顔を出し、
読み進めるうちに、自分も彼らの隣で、
そのやりとりを聞いてるような、
居心地の良さに浸れるのだ。
今や人気作家にして、元本の雑誌社社員、
群ようこと椎名のやりとりも、なんともおかしい。

ユーモアの間にだたよう、
そこはかとないノスタルジーも、
いいアクセントになっている。
椎名の歩みに、それぞれのこれまでを重ねて
見るのもいいかもしれない。

このシリーズはずっと続けてほしいと思うし、
椎名本人もそのつもりだったようだが、
あとがきを読むと、もう過去の事を書くことに関心が
なくなってしまったとあり、
今のところ続編の予定はないらしい。
うーん、残念。
でも気まぐれな誠っちゃんのこと、
いきなり書き下ろしでドーンと新作登場!
なんてことになるかも、と期待しておこう。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
椎名 誠
新宿熱風どかどか団