秘密は、物流センターにあり。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

秘密は、物流センターにあり。

【アマゾン・ドット・コムの光と影】 

●著者 :横田増生
●出版社:情報センター出版局(2005.04 発行)
●価格 :¥1,680


日頃からアマゾンにお世話になっている
僕にとって、その仕組みがどうなって
いるのか非常に興味があるところだった。
どうして24時間以内に発送できるのか?
なぜ1,500円以上は送料無料にできるのか

著者は元物流業界紙の編集長。
アマゾンの秘密を探るべく、東京近郊にある
物流センターにアルバイトとして潜入。
約半年間勤務し、その実態を赤裸々に
つづったのが、本書である。

アマゾンの心臓部というべき物流センター、
まさに現場の中の現場のルポだけに、
リアリティ抜群で迫力がある。
驚いたのは、IT産業の申し子のようなイメージの
アマゾンを支えているのが、かなり
アナログチックな労働にあるということだ。
1、2階合わせて1万5千平方メートルの広大な
物流センターで働いているのは、
アルバイトが大半の常時約200人。
彼らは時給900円で、約100万点ある本やCD・DVD
などの商品から、目的の物をピッキング
(商品を探して抜き出す作業)していく。
著者は1分に3册の本のピッキングを命じられるが、
はじめての作業は1分1.2册に終わる。
さまざまなハプニングに一喜一憂する著者の
内面描写がおもしろい。
またアルバイト仲間のキャラも多彩で、
ある種の人間ドラマとしても楽しめる。

もうひとつ驚いたのは、アマゾンの
徹底した秘密主義だ。
これだけメジャーな存在になった今でも、
アマゾンはマスコミの取材をほとんど受けず、
売り上げも公表していない。
一説には500億を超えると言われる数字も
推定の域を出ない。
このあたりにもっと深く切り込んでくれていれば、
さらに価値ある内容になった気もするが、
先方のガードの高さに
そうもいかなかったのだろう。
それでもネット書店の現状と未来を占うには
格好の一冊にあることは間違いない。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
著者: 横田 増生
タイトル: アマゾン・ドット・コムの光と影—潜入ルポ