ここは今なお深く雪が積もるポッケ村…




1年中深い雪に閉ざされている村は、初夏を迎える季節だというのに、気温は0℃にも満たない。


ユナは、そんなポッケ村の専属ハンターである。


実は、村に出入りしている行商ばぁさんに、あるものを入手してくれるように頼んでいた。


それは、雪深いポッケ村には自生していないので、はるか南にあるユクモ村まで行かなければ入手できない。


ユナは、依頼を断られるかもしれないとビクビクしながら話を持っていったのだが、意外にもばぁさんはすんなりと了承してくれた。


実は納入期限も指定したのだが…


どんなツテを持っているのか、ばぁさんはきっちりと期限に間に合うように持ってきてくれた。




そんなユナの家の前に、このあたりでは見たことのない植物が入口の柱にくくりつけられていた。


部屋の中では食堂のテーブルに色とりどりの紙が細長い四角の形にきられ、端には細いヒモが結ばれている。


「んにゃ~! 何を書いたらいいニャ?!」


「ボクはもう、書き終わったニャ…( ´艸`)」


「ご主人さまぁ… オネガイコトってなんニャ?」


たくさんのアイルーたちが、初めて見る植物と色とりどりの紙に驚いていた。


彼らの主人であるユナは、1匹1匹に丁寧に説明してやった。



やがて…



慣れないペンを持って、四苦八苦しながらアイルーたちが書いた短冊を箱に入れると、ユナはその箱を持って玄関に向かった。


外では村人たちが興味津々で見守っていた。


ユナは苦笑しながら、笹の葉の枝先にアイルーたちが書いた短冊を結んでいった。


「ねぇねぇ、それ、なぁに?」


好奇心を抑えきれなくなった娘がユナに声をかける。


ユナは振り向くと、にっこりほほ笑んだ。


「これは東洋の国に昔から伝わる七夕の習慣で… 毎年、7月7日の日に短冊に願い事を書いて笹の葉につるしておくと、願いが叶うという言い伝えがあるんですよ。」


「へぇ~。」


「おや、綺麗じゃの。」


声のした方を振り向くと…


村長とネコートが立っていた。


「七夕に短冊か…  またずいぶんと風流なことを思いついたの。」


ユナは、村長にもにっこりほほ笑んだ。


「うちのコたちがいつも頑張ってくれてるので、何かできないかな、と思いまして…」


「うむ。 いいことじゃ。」


村長は笹の葉に近寄ると、短冊のひとつを覗いた。




『おりょうりがうまくなりますように…』


『はやくごしゅじんさまとくえすとにいけますように…』


『ゴエモンさんがりょうりをおしえてくれますように…』


『ごしゅじんさまがいつもぶじにかえってきますように…』


『いつまでもごしゅじんさまといっしょにいられますように…』




短冊のひとつひとつに目を通した村長の顔がほころんだ。


そこには、アイルーたちのユナへの思いがたくさんあふれていた。


ユナがアイルーたちを大切に思っているように、アイルーたちもまた、ユナのことが大好きなのだ。




(彼らがいてくれる限り、ポッケ村は安泰じゃの…)




強い絆で結ばれているハンターとオトモはとても強い。


お互いを思いやれるユナとアイルーたちがいる限り、ポッケ村に危険は及ばないだろう…


村長とネコートはお互いを見やると、にっこりほほ笑んだ。