瑞希が水鏡の前に立つと、すぐにサナの姿が現れた。

「陛下っ!」

黄龍であるサナには全てがわかっているらしく、軽く頷いた。

『孤島のリオレウス希少種は、本来はそこには生息していないはずのものです。 討伐の許可をします。』

「御意!」

『ご武運を…』

にっこり笑うと、サナの姿は水鏡から消えた。

振り返った瑞希を見た龍王は、娘の変貌に目を見張った。

先ほどまで冥帝の話をしていた時の瑞希は、正直な話、「まだまだだな」と思っていたのだが…

サナと話し終えた瑞希の表情には厳しさが漂っており、一流の剣士としての威厳も備わっていた。

龍王は娘の成長を嬉しく思うと同時に、ふと、淋しさも少し感じた。

「さて… では支度をして出かけるとするか?」

「はい。 って、え!?」

さりげなく龍王の言葉を聞き流しかけていた瑞希は、最後にとんでもない言葉を聞いた気がした。

「で、出かけるって!?」

「うん? そりゃあ、四神の青龍としてのそなたの活躍を間近で見られるまたとない好機ではないか! 当然、我も同行するぞ。」

嬉しそうに、だがきっぱりと断言した龍王に、瑞希は頭を抱え込んだ。

「ち、父上…」

ともすれば脱力して座り込みそうになるおのれを叱咤しながら、瑞希は(父上って、こんなキャラだったか?)と内心首を捻った。



急いで支度を済ませ、龍王と瑞希は孤島の更に最奥にある古塔へと向かった。

崩れ落ちている石段を注意深く登っていく。

やがて、長方形の形をした継ぎの間らしき場所に出た。

背の低い石の壁があり、途中で一ヶ所だけ切れている。

どうやら、そこから下へ降りられるらしかった。

チラッと覗いてはみたが、遥か下まで雲がかかっていて、床らしきものは見えなかった。

「こんなところにリオレウス希少種が?」

「ふむ。 降りてみなければわからぬがな。」

龍王と瑞希はアイテムの確認をして、思い切って切れ目から下へと飛び降りた。



シュタッ!

石の床が広がる広間へ降り立った二人は、用心深くあたりを見渡した。

「「っ…!?」」

二人の正面に、情報通り全身を銀色の鱗で覆われたリオレウス希少種の姿があった。

こちらに背を向け、翼をたたみ悠然と歩いている姿は、どこか威厳さえ感じさせる。

思わず瑞希が見とれていると、ふいにリオレウス希少種がこちらに振り向いた。