青龍が戦々恐々としながら水鏡で実家に連絡をすると…

意外なことに龍王本人が出た。

『おお、瑞希(みずき)。 息災か?』

「は、はい。」

予想外な人物の登場に、青龍は驚いた。

『そなた、一度こちらに戻るそうだな?』

「は、はい…」

次に続くであろう龍王の叱咤が怖くて、青龍は下を向いた。

『陛下のご命令、しかと賜るのだぞ?』

「はい。 って? ご命令?」

『ああ、そういえば、陛下はまだそなたには話しておらぬとおっしゃっていたな。』

「父上?」

『先ほど陛下からお話をいただいた。 来るべき時に備え、そなたをこの龍宮に遣わし、若手育成に当てる、と…』

「っ…!?」

『父も嬉しかったぞ。 そなたが軍の育成を任せていただけるほど、陛下の信頼を得られたことがな。』

そう、サナは青龍が里帰りしにくいことに気付いており、話がしやすいように、先に根回しをしておいてくれたのである。

(陛下… ありがとうございます!)

サナは若いながらも、やはり黄龍となるだけのことはあり、いろいろなことを見通していた。

青龍の里帰りの理由も、「若手育成のため」とし、ある程度の期間、実家にいても怪しまれないように話をしてくれていたのだ。

『四皇や冥帝の話は我も聞いている。 いずれはそやつらと戦う時が来る、とも… その時に、我ら龍王軍の力を貸して欲しい、と陛下はおっしゃってくださった。』

「父上…」

『その為に、今のうちに若手に戦いの基礎を教えておきたい、と陛下は仰せだ。 瑞希、四神の首座たるそなたの立ち回り、しかと見せてもらうぞ!』

愉しげな父の様子に、青龍は頭を抱えたくなった。

気兼ねなく里帰りできるのは嬉しいが、自分より遥かに剣の達人である父と毎日手合わせしなければならないのかと思うと、それはそれで怖いものがある。

が、今は誰が味方で誰が敵なのかを、正確に把握しておかなければならないのだ。

黄龍に忠実な父のことは心配ないとは思うが、だからといって一族全てが忠実とは限らない。

それは、朱雀の実家である鳳凰一族に、嫌というほど見せられた。

朱雀は、どんな思いで自分の父を長の座からおろしたのか…

娘である前に、四神の朱雀としての役目を果たした凰樹(おうじゅ)の心中を思うと、青龍は深い溜め息をついた。