白虎は、ルナの言葉にハッとした。

「サナは西王母さまたちと孤島をシールドで遮断しなきゃならない。 その間は意識を集中しなきゃいけないから、当然、その間の防御はがら空きになる。」

「ルナちゃん…」

「私には神通力なんてないから、空に浮かんでるサナのそばには行けない。 だから、サナを守れるのは白虎さましかいないんだよ! それ、ちゃんとわかってる?」

「っ…!?」

白虎は、半分泣きそうになりながら自分に食ってかかるルナの言葉に、頭を殴られたような衝撃を受けた。

「誰よりも重大な任務を任されてるんだから、もっと自覚してよねっ!」

それだけ言うと、ルナは執務室を出て行ってしまった。

「ルナちゃん、ごめん…」

そうだ…

黄龍となったサナは別として、ユイナ、炎華、ルナは剣士としては優れているが、自分のように神通力があるわけではない。

ましてや、サナとルナは親友だ。

本当は、ルナが自分でサナを守りたいに違いない。

(ルナちゃん、私、絶対に陛下を守ってみせるからね!)

白虎は両手を固く握りしめた。



ルナが廊下に出てくると、炎華が壁に寄りかかっていた。

ルナを見て、ニヤリとする。

「やるじゃないか。」

「何がですか?」

「白虎さまをその気にさせるなんて、たいしたもんだ。」

「そんなんじゃありませんっ! 私はっ! サナのことを何も考えていない白虎さまに腹が立っただけですっ!」

それだけ言うと、ルナは走って行ってしまった。

「素直じゃないなぁ…」

残された炎華は苦笑する。

「ルナちゃんも立派になりましたね。」

それまで気配を消していたユイナが炎華の隣に来ると、ルナの走って行った方向を見て微笑んだ。

「ああ、そうだね。 そろそろ、修行も卒業かな?」

「そうですね。」

二人は顔を見合わせてクスッと笑った。

が、すぐに真剣な表情になる。

「さて、アタシらも行くか。」

「はい。」

炎華とユイナが転移門へ来ると、すでに玄武が待っていた。

「お待たせして申し訳ありません。」

「いや、妾も今来たところじゃ。」

「では、出発しますか。」

玄武が水晶に触れると三人の体が光り、次の瞬間、その場から消えていた。