普段使用禁止の神通力の使用許可がおりる…

それは尋常なことではない。

しかも、今回は四神が二人で任務に当たらなければならないのである。

「相当、気を引き締めなきゃならない、ってことだな。」

執務室を出た後、修練場に向かう青龍と朱雀の顔は強張っていた。

「ジンオウガの異常繁殖って、今まで聞いたことないもんね。」

神通力を使う場合も有り得る…

それがどれほど異常事態か理解している青龍と朱雀は、重く口を閉ざしたまま、修練場へ向かった。



それから数日後…


いよいよ、四神の二人が孤島へ出向くことになった。

「玄武と白虎、ユイナと炎華が交代要員としてこちらで待機しますから、危なくなったらすぐに戻ってくださいね?」

転移門の前で、サナが心配そうに告げた。

「それは、できれば神通力は使わない方がいい、ってことですね?」

「はい… ただ、あなたがたの命の方が大事ですから…」

「かしこまりました。 最善を尽くします。」

「お願いします。」

「じゃあ、行ってきま~す。」

転移門近くの水晶に朱雀が触れると、門と二人の体が淡く光った。

「ご武運を!」



光がすうっと消えると、そこは孤島の秘境だった。

「さて… 行くか?」

「だな。 この前のクソジジィとの一件でむしゃくしゃしてるからな。 暴れさせてもらうぞ!」

朱雀の口調を聞いて、青龍はああ、と思った。

(そういえばこいつも、本来はこういう口調だったな…)

思えば、サナやルナが天晶宮に出入りするようになったあたりから、朱雀の口調が変化したのだ。

(陛下やルナを怖がらせない為、か…)

青龍と朱雀は、仙界でも1、2を争う古くから存在する種族の出身である。

それゆえ、二人の口調はよく似ていた。

が、青龍は根が不器用な為、朱雀のように口調を変えることができなかった。

(久しぶりに本来の鳳樹の姿が見られるわけか…)

青龍は、何となく楽しくなっている自分に気がついた。

龍族は元来、好戦的なのだ。

「さて… どうする? 二手に別れるか?」

「いや、それはやめておいた方がいいだろう。」

「そうだな。 では、行くか。」

「おう!」

青龍と朱雀はそれぞれ自分の武器の感触を確かめると、表情を引き締めて崖から飛び降りた。