「あ、姉上っ!?」

「心配するな。 殺しはせん。 少しの間、自室でおとなしくしてもらうだけだ。」

「ほ、本当ですね?」

凰我が確認すると、鳳樹は初めてにっこり笑った。

「このジジィが脱走さえしなければ、な。」

鳳樹は7賢人に向き直り、宣言した。

「ただいまより、私が鳳凰一族の長となる。 すぐに襲名の準備を。」

「かしこまりました。」

「ああ、鳳徳。」

鳳徳、と呼ばれた7賢人の一人が鳳樹に近寄った。

「………。」

「っ…!?」

鳳樹が鳳徳に何かを耳打ちすると、一瞬、目が見開いたが、すぐに頷いた。

「かしこまりました。 滞りなく、準備いたします。」

「頼んだぞ?」

それぞれに指示を出し、鳳樹と凰我は城に戻った。



一刻ほど経った頃、城に滞在している鳳凰一族の全てが、大広間に集められていた。

鳳樹が再生の儀を終え、長の跡を継いだことはすでに一族中に伝えられている。

そして…

壇上に上がった鳳樹は、広間に集まった一族に驚くべき宣言をした。

「皆のもの! よく集まってくれた。 私は先ほど、次代の長を継いだが、皆も知っての通り、私は黄龍陛下の四神、朱雀である。 さすがに鳳凰一族の長と四神、朱雀の兼務は不可能ゆえ、長の地位を我が弟、凰我に譲る!」

「あ、姉上っ!?」

「凰我は私よりも一族のことに詳しいし、何より、私より遥かに長に相応しい。 皆のもの、異論はないな?」

「「「ははっ!」」」

広間にいた一族から、同意の声があがる。

「あ、姉上っ! 私には無理ですっ…!」

凰我が抗議すると、鳳樹は肩をすくめた。

「仕方がない。 私は四神の方が忙しいし、ジジィは頭がおかしいから、これ以上長を任せるワケにはいかない。 頼れるのはお前しかいないんだ。」

「し、しかしっ!?」

なおも抗議しようとする凰我の肩をポンポン、と鳳樹は叩くと、真剣な顔で話し始めた。

「鳳凰一族は、これから変わっていかなきゃいけない。 その為にはお前の力が必要なんだ。」

「私の力が…?」

「そうだ。 安心して一族を任せられるのはお前しかいないんだ。」

「姉上…」

鳳樹の言葉を聞いた凰我は、諦めたように小さく笑った。

「わかりました。 不肖ながらこの凰我、姉上の代わりに長を務めさせていただきます。」

「うむ。 頼んだぞ?」

凰我の言葉を聞いて、鳳樹は晴れやかに笑った。